公園
「ママ、パパ……」
楽しく三人であそんで、ごはんを食べていたはずなのに、目をあけたらほこりだらけのいつものおへや。
ママもパパもいなくなっちゃった。
「ずっと、ゆめ見てたいな。ゆめなら、ママもパパもわたしを見てくれるのに……」
リビングのカレンダーに書いてあったな。今日はみかちゃんと三人で水族館に行くみたい。
そこに、わたしの名前はなかったな。あるはずも、ないんだけどね。
どこかに遊びに行こうかな。そうだ、公園に行こう。
「げんかんから出なきゃダメだって、ママがよくみかちゃんに言ってたな」
げんかんでおくつをはくんだよね? でも、わたしに足はないからな……。
それに、小さいおくつはみかちゃんのもの。わたしのなんて、そもそもないもの。
だから、せめてげんかんから行こう。ドアノブはさわれないのだけど、わたしのからだは自由がきくから大丈夫。
ふふ、公園ってだれもいないとしずかなんだね。あのおへやといっしょだ。
「これが、みかちゃんが言ってたブランコかな?」
ずっとずっと思ってたの。あのおへやからここをながめてね。
ブランコに乗ってパパにおしてもらっている子がいつもいたの。
「いいな……」
パパがわきの下に手を入れて高い高いしていたの。
「いいな……」
すべり台の下でママがまっているの。
「いいな……」
あそびに来たほかの子と、おにごっこをしていたの。
「いいな……」
耳をすませると聞こえてくるの。ママとパパが大きな声で自分の子供をさがすの。
「いいな……。いいな、いいな!」
夏になると、みんな水あそびをしていたの。
「これなら、一人でもできるかな?」
大きな川が公園の近くにあるんだって。前にみかちゃんとパパが話していたの。
ほら、あった。川の向こうに行ってみたいな。
「あれ、つめたくないな……」
それに、かんたんに川の向こうについちゃった。
あれ、おかしいな。向こうがわにママとパパがいる。みかちゃんも、いるみたい。
ずっと、見てくれなかったのに、わたしを見ているの?
でもね、もうもどれないの。なぜか、川がいやがるから……。
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