第44話  トーナメント2戦目

 今日も大輔の出番は第一試合だ。 

 前日と同じようにケイトに送り出される。大輔は不思議に感じていた。体は子供だが、やる事や仕草が子供のそれではなく、妙に大人びている。配慮も子供のやる事ではなかった。誰に教わったのかな?と不思議に感じていたのだが、突っ込んで聞いたりはしない大輔である。


 今日の闘技場は2分割という。


 今日の対戦相手は165cm位の普通の背格好な冒険者風で、武器はショートソードの二刀流だ。座にはいないタイプで戦い方が分からないが、体格から敏捷力のある奴だと予測していた。多分開始の合図と共に突っ込んでくるかと予測してみた。中々雰囲気のある奴で場慣れしている感じだ。


 しかもこちらを警戒し値踏みしているが、首を傾げて不思議がっていた。


 多分大輔からは強者の雰囲気が出ていないから戸惑っているのだろうと大輔は感じていた。戦歴から強い筈だが、強さを感じないのだから強いやつ程戸惑うのだ。


 強さを感じないのは当たり前である。大輔は偶々相手が自爆して死んでその者の能力を修正して得ているからで、訓練で得た力ではないのだ。

 脚の動かし方とか訓練を積んだ者がする動きが無く、素人の動きだから困惑したのだ。


 相手は油断を誘っていると警戒している。大輔は相手を油断させるのに失禁したように見せる為、衆人監視の元でも小便をわざと漏らしさえするような強い精神と手段を選ばない者だと。


 普通は恥ずかしくて出来る事ではない。それをする恐ろしい奴だと。そんな風に聞いているからだ。


 なので必要以上に警戒をしていた。司会の開始の合図が合ったが、何か仕掛けてくるかもと突っ込んでいけなかった。なので睨めっこになっていた。


 先に痺れを切らしたのは大輔だ。既にダイスは振られていて72を出していた。なので負ける気はしない。


 大輔は突っ込みジャンプするつもりだった。相手はそれを予測していた。飛んできたら避けて脚を斬りつけるつもりで身構えたのだ。

 そして大輔がジャンプをしようとしたら対戦相手の視界から消えた。そらきたと上を見るもいない。


 それどころか脚に衝撃が走り吹き飛ばされたのだ。


 大輔は、ジャンプする為に地面を蹴り出した瞬間に滑ったのだ。前日の試合で折れた剣の刃先を踏んで、ダリルのように後ろ向きに倒れ、そのままスライディングで相手の脚を蹴り出した感じだ。見事に相手を吹き飛ばした。相手は背中を強打したようで、ぐわっと唸っていた。


 いち早く大輔が立ち上がり、相手の胸を左足で踏みながら首筋に剣をピタリと当て


「悪いな。降参してくれ」


 ひと言で終わった。相手があっさり降参したのだ。身動きが取れないから選択肢がなかった。


 司会から大輔の勝利宣言が出た。大輔はトーナメント戦でまだ剣を振っていない。今回も偶然の産物だった。ただ、大輔がアクシデントで滑ったのではなく、狙ってやったと観客は判断していて会場は騒然としていた。思い切った行動だからだ。


 大輔はお尻を汚しただけで、またもやダメージは無かったのである。


 大輔はダイスの力が怖いと思っている。どう見ても今が奴隷だという超アンラッキーな事を差し引いてもダイスによるラッキー具合が有り得ない感じだった。多分今ここにダイスを捨てても明日の試合時に拾うんだろうなと思いつつ、ダイスを拾わずに引き上げるのであった。因みに目は64だった。


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