第42話  鬼のスケジュール

 大輔は今朝もケイトのキスで目覚める。但し挨拶のフレンチキスだ。ケイトは毎朝のキスを受け入れられて幸せだったが、大輔は単なる朝の風習として何も感じていない。

 ケイトのいた国では朝の挨拶は軽くキスをするのだと思い込んでいて、確認もしていなかった。


 ある意味可愛そうなケイトであるが、彼女は彼女で信じて貰えないから言っていない秘密がある。本来の姿であれば振り向かせる自信が有ったのだ。それ故ケイトは悔しかった。でも、今のこの姿でも優しくしてくれる大輔の存在は大きく、いずれ驚かす日を待っていた。また、治療出来ると自信満々に言っていた事に縋ってもいた。前提条件としては傷がなくなる事なのだ。


 ただ、今は大輔がベストを尽くせるようにしている。


 大輔が夜寝てからブーツの手入れや武器の手入れまでしていた。大輔は剣を使った事が無いというので一度座長に頼んで武器や防具の手入れについて教えて貰っていた。座長も大輔には期待をしていて、3日程女を抱くのを止め、それで空いた時間で教えていた。座長は目の前の醜女にここまでさせる大輔がうらやましくさえ思う。命令されたのではなく、自主的にだったからだ。


 大輔の服は血糊が少ないのだが、それは丁寧にケイトが洗い落としたからだ。

 鎧も返り血や自らの血で血塗られていたのを丁寧に洗ってくれていた。


 ケイトの手は荒れていた。不審に思った大輔は、昨夜ケイトが部屋を出てからそっと後をつけて何をしているか見ていた。そしてケイトが襲われないように警戒して見守っていた。


 血で汚れた鎧の清掃が終わる気配がするので慌てて部屋に戻り布団に入る。まさか夜中に寝る暇を惜しんでそんな事までしていた事に驚き、ただただ感謝をする。


 今朝もしっかり食べ装備を整える。大輔の試合は第一試合な為早くに闘技場に向かう。


「行ってくるよ。寝不足は成長に良くないから、昼寝が出来るなら昼寝しておくと良いよ。武器や防具の手入れ有り難うな」


 ケイトは大輔が気が付いているとは全く思っていなかったので唖然としていたが、いってらっしゃいと元気に送り出す。


 今日からのスケジュールはかなり辛い。毎日の対戦で予選を含め計7日間休みなしなのだ。

 毎年見る側も辛いらしいが、伝統的な行事なのだ。


 そして闘技場は今日は4分割されて同時に4試合が開催される。


 試合時間は1試合に付き20分位と見られている。20分経過するとお互いを長さ2mの鎖で繋ぎ、勝負を早める。


 試合は各ブロックで行われ、大輔は順調に行けば準決勝でトーマスと当たるが、組み合わせは主催社が決める。


 基本は同じ座の者をバラけさせる。そして大輔は最初の試合で各ブロックは8試合だ。

 午前4試合、午後4試合になる。


 大輔は第一試合の為競技場に入り、対戦相手と向かい合っている。


 相手は170cm位でこの世界では比較的大きい。

 体格はがっしりしていて、トーマスと同じでモーニングスターを持ち、裸に胸当てと金的のガードで筋肉隆々を自慢していて息巻いていた


「いいねえ!死神とやれるのか。お前を倒して名を上げてやる」


 大輔はため息をつく。

 三下のお決まりの文句だからだ。

 雰囲気からトーマスには遥かに及ばないと値踏みする。


 この一週間で闘技者の実力が何となく分かるようになってきた。


 新人戦の場合得物を問わない。

 一般戦で人気なのは剣と剣だ。中には盾禁止とかもある。武器指定の大会もあると言う。


 司会が決勝トーナメントの開会宣言を行い、始めの掛け声が掛けられるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る