離れていても力になれるって、案外本当。――7
クレイド先輩に続き、わたしもゲオルギウスに指示する。
「フォトンレイだ、ゲオルギウス!」
(コクリ)
「ティアはイヴェンジェルです!」
『ラー……!』
ゲオルギウスが左の手のひらをスリーアイズフォックスに向け、ティアが祈るように指を組んだ。
ゲオルギウスの手のひらに光が集束し、ティアが静かにまぶたを伏せる。
光属性魔法攻撃『フォトンレイ』と、INT・MNDを強化する魔法スキル『イヴェンジェル』の準備。
スリーアイズフォックスに対する一手目は終わった。続いては、ボルトバーサーカーに対する手だ。
「ファブニル、『ウェポンエンチャント』だ!」
『GOOOOHH……!』
ファブニルが四肢をたわめ、力を溜める。
『自身のSTR・VITを30%上昇させる』魔法スキル『ウェポンエンチャント』。
「ティターンは『ジェットパンチ』で参りましょう!」
『OOOOOOOOOOHHHH!!』
クレイド先輩は、いきなり先制攻撃を選んだ。
ティターンの巨大な拳が豪速で放たれ、ボルトバーサーカーを殴りつける。
『WOOOOHH!』
だが、ボルトバーサーカーのHPはそれほど減っていない。
ジェットパンチの威力は低いが、ティターンのSTRはトップクラス。セントリア最強だ。
その攻撃がここまで効かないとは……24のレベル差はやはり大きいな。
「次は『アイスシェル』です!」
『OOOOOOHH……!』
与えたダメージの低さに眉をひそめつつも、クレイド先輩は攻撃を続ける。
ティターンが大口を開け、そこに小さな雪玉が生まれた。氷属性魔法攻撃『アイスシェル』の準備だ。
「なるほど。きみたちの実力はおおよそ測れた」
わたしたちが一通り指示を出したところで、それまで
「私の相手ではない」
「『キュア』だ、スリーアイズフォックス」
『キュオ!』
スリーアイズフォックスが一鳴きする。キラキラした光の粒子が発生し、スリーアイズフォックスの周りを取り囲んだ。
直後、ふらふらと揺れていたスリーアイズフォックスの頭がピタリと止まる。『目眩』が解けたのだ。
「
「スリーアイズフォックスは修得するスキルの範囲が広い。
キュアは『状態異常から回復する』効果を持つ、チャージタイム0秒の魔法スキル。『麻痺』・『怒り』状態でも使用できるため、状態異常に陥った際は非常に
チェシャのヴァーティゴで優位に立ったつもりだったが、キュアで回復されたことで、結果的に一手無駄にしたことになる。
歯噛みするわたしたちに対し、表情ひとつ変えず、ゲルド・アヴェンディがボルトバーサーカーに指示した。
「ボルトバーサーカーは『エレクトリックオーバーフロー』だ」
『WWWW……!』
ボルトバーサーカーが上体をやや倒し、両肘を曲げ、筋肉を盛り上げる。その体を電流が伝いだした。
ゲルド・アヴェンディが選んだスキルを見て、わたしたちは訝しむ。
「どうして、わざわざ隙を作るような真似を?」
「わたくしたち相手では、問題ないと思われているのでしょうか?」
エレクトリックオーバーフローには、ひどいデメリットがあるからだ。
エレクトリックオーバーフローは、ボルトバーサーカー固有の、チャージタイム3秒、クールタイム1分の魔法スキル。
その効果は『全ステータスが40%上昇する』という、バランスブレイカーレベルに強力なものだ。
ただし、メリットを台無しにするほどのデメリットがある。エレクトリックオーバーフローを用いると、確定で『麻痺』状態になるのだ。
『麻痺』は、『10秒間、あらゆる行動がとれなくなる状態異常』。つまり、エレクトリックオーバーフローを行使する場合、チャージタイム3秒+『麻痺』状態10秒=13秒の、大きすぎる隙ができる。
13秒も時間が奪われるくらいなら、ほかの自己強化スキルで、上げたいステータスだけ上げればいい。わざわざエレクトリックオーバーフローにこだわる必要はない。
なのに、なぜゲルド・アヴェンディは、エレクトリックオーバーフローを用いた?
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