大事な大会には、最高の状態で挑むべき。――9

『GLLLL……!』


 続いて、ライオンヘッドプリーストが杖を高く掲げた。


 杖から放たれる光が、ヴェールのようなまくを成す。『ハイヒール』の準備態勢だ。


 ハイヒールの発動を許せば、ライオンヘッドプリーストのHPは2本と1/4になり、決着が遠のく。


 しかし俺は焦らなかった。


 レイシーのサポートがあるからだ。


『リィ!』


 6秒のチャージタイムを終え、指を組んでいたリーリーが両手を掲げる。


 賛美歌さんびかのような音色が流れ、ユーの体をきらめきが包んだ。


 魔法スキル『ミスティックエール』の発動。その効果は、『味方モンスター1体を対象とし、スキルひとつのクールタイムをリセットする』だ。


 要するに、


「ユー、もう一発リバーサルストライクだ!」


 本来、5分待たないと再使用できないリバーサルストライクを、すぐに放てるようになるってことだ。


 ユーが『防御態勢』を解除し、ロングソードを引き絞る。


『ムゥ――――ッ!!』


 そして放たれるリバーサルストライク。


 キュドォオオオオオオンンンンッ!!


『GLOOOOOOOOOOHHHH!!』


 理不尽とも言えるバーサクリバストの連発を食らい、ライオンヘッドプリーストがのけ反る。


 断末魔の咆哮を上げ、ライオンヘッドプリーストは、光の粒子となって消えていった。


 ライオンヘッドプリーストとの戦闘を終えたレイシーは、脱力するように息を吐く。


 よほど緊張していたのだろう。レイシーの額には汗が浮かんでいた。


 そんなレイシーに、俺は快活かいかつな笑顔を向ける。


「バッチリだったぞ、レイシー!」

「お役に立てたでしょうか?」

「ああ! ミスティックエールとリバーサルストライクの相性に気付いたことはもちろんだが、戦闘開始せんとうかいし直後に使う判断もよかった」

「ロッドくんはきっと、最初にユーさんのバーサクリバストを用いると思ったのです」

「よくわかったな、そのとおりだよ」


 俺が目を丸くすると、レイシーは頬を桜色にしてはにかんだ。


「わかります。わたしは、一番そばでロッドくんを見てきましたから」

「お、おお、そうか」


 レイシーのセリフに、ドキリと心臓が跳ねた。


 嬉しいこと言ってくれるなあ。こんな甘酸っぱいセリフ、前世の俺だったら絶対に言ってもらえなかったぞ。


「と、とにかく、本当に見事だった。レイシーがついて来てくれて助かったよ」

「えへへへへ……そう言っていただけたら、わたしも嬉しいです」


 ポンポンと頭を撫でると、レイシーはフニャリと頬をゆるめる。


 ブンブンと千切れんばかりに振られる尻尾が見えるような、心を許しきった笑顔だった。


 参ったなあ、照れ隠しのつもりで頭を撫でたのに、これじゃあ、ますます顔が熱くなっちまうよ。





 ライオンヘッドプリーストから得た経験値で、クロは84レベル、ユーは80レベル、リーリーは46レベルに上がった。


 その後、俺とレイシーは最奥の部屋にたどり着き、クロ用の装備品を手に入れ、ホクホク顔でジェア神殿をあとにしたのだった。

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