第229話 勇者との邂逅
「ヒャハハハハ! オラ! どうしたジジイ! 随分と顔色が悪いぜぇ?」
その日、カズキ達が本日5つ目のダンジョンを攻略して帰ってくると、ギルドの方が騒がしかった。
「クッ! まさかここまでレベルを上げているとは!」
冒険者同士の、偶にある揉め事かと思っていたカズキ達は、最近よく聞くようになった声がそう叫んでいるのを聞いて、顔を見合わせる。
「・・・・・・ガストンさんの声ですよね?」
「ああ。何かトラブルがあったみたいだな」
「あの御仁が切羽詰まった声を上げているのか。余程の事があると見える」
気になった3人は、状況を確認しようとギルドへと駆け出す。やがて見えてきたのは、5人の冒険者と、それと対峙するガストンとハルステン。それに加えて、ギルド本部に所属する冒険者たちという構図だった。
「・・・・・・タゴサクっぽいのが五人。成程、勇者か」
5人の冒険者の素性を、カズキ達は一瞬で看破した。と言うのも、五人共が皆、魔剣を使用した当初のタゴサクの様に、スーパーサ○ヤ人っぽくなっていたからだ。
「雷を纏った剣・・・・・・。ヒヒイロカネが、タゴサクさんの魔剣のような役目を果たしているって事ですよね?」
「自分に足りないものを埋めるのがヒヒイロカネだからな。・・・・・・それにしても、勇者は力を持つと例外なく増長するな。そういう種族なのか?」
「別に勇者だけに限った話ではない。急に身の丈に合わない力を得れば、誰がそうなってもおかしくはないさ」
珍しく真面な事を言ったセバスチャンが、そう言いいながら無造作に足を踏み出す。そしてそのままガストンの元へと到達すると、その場でクルリと振り向いた。
「モンスターとは戦ったが、対人はまだ試していないのでな。悪いが、お前たち勇者で試させてもらう」
突然現れ、堂々とした足取りで自分達の間を平然と歩いていたのでスルーしてしまった勇者たちは、自分達を勇者と知っても尚、しゃあしゃあと宣う初老の男の言葉に激発した。
「あ˝!?」
「んだとジジイ!」
「つか、誰だよてめえ!」
「いきなり出てきて、ちょーしこいてんじゃねえぞ、ゴラァ!」
「ガストンの前に殺されてえのか!?」
「い、いかん。すぐに下がるんじゃ! そして、カズキ殿に応援を!」
この暴挙に驚いたのは、庇われる形になったガストンである。
それもその筈。セバスチャンのレベルは520なのに対し、勇者たちのレベルはガストン(レベル1399)の【
「これは異なことを。カズキならばそこにいるではないか」
「なにっ!」
その言葉に、ガストンはセバスチャンの示す方へと視線を向ける。すると、セバスチャンの言う通り、確かにカズキはそこにいた。そして、いつもの如くナンシーと戯れている。
隣にはフローネもいて、クレアと仲良く何かを分け合っていた。細長い、紙のような物の中に、何かが入っているようだった。
その緊張感のない様子に、ガストンの体から力が抜ける。
「おっと」
そのままへたり込みそうになったガストンを、セバスチャンが支える。見れば、激しく消耗している様だった。
「大分魔力が減っているようだな。ならばこれを食べると良い」
そう言ってセバスチャンが差し出したのは、フローネとクレアがしゃぶっている、『カズピュ~レ・ファイアドラゴンの尻尾と後ろ脚ミックス』と同じ物だった。
「・・・・・・これは?」
「魔力が回復する・・・かもしれない物だ」
反射的に受け取ったガストンに、セバスチャンは曖昧な説明をする。
カズキが捕獲したファイアドラゴンは、生肉を食べると即座に魔力が全快するという特性があるのだが、まだこの世界の人間に試した事はない為だ。
「・・・・・・マジックポーションのような物かの? どれ」
フローネが食べている事から危険はないと判断したガストンは、興味が出て来た事と、手持ちのマジックポーションが尽きている事もあり、悠然と封を切って、躊躇いなく口にした。そして――。
「・・・・・・っ!」
余りの美味さ故か、放心してしまった。
「ふむ。この世界の人間には刺激が強すぎたか」
その様子を見て、やれやれと肩を竦めたセバスチャンは、ガストンを放置して改めて勇者たちに向き直る。律儀に二人の会話を聞いていた勇者の一人が、痺れを切らして襲い掛かってきたからだ。
「おっと」
「い、いかん! 避けるんじゃ!」
飛び掛かってくる勇者に対し、剣を構えて待ち構えるセバスチャン。それを見た勇者がニヤリと笑みを浮かべるのと、放心から戻ったガストンが警告を発するのはほぼ同時だった。
「死ねや! 【ペタスラッシュ】!」」
勇者の言葉と同時に、天から
「何だと!」
その光景に驚きながらも、逆手に握った剣を振り降ろす勇者。対するセバスチャンも、いつの間にか逆手に握った剣で勇者を迎撃する。
その姿は何故か、スーパーサ○ヤ人ブルーに酷似していた。
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