2人目 トキトウ・ウメモト Ⅰ
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2人目の異世界転生
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『梅本時任』は突然死した。
死因は心筋梗塞。日常生活の不摂生が祟ったのだ。
彼の人生は悪くないものだった。
高校生になるまでゲームにはまり、学校の成績は赤点ばかり。高校進学と同時に親から家を追い出された。高校生で一人暮らしを始め、バイトをしながらゲーム三昧で高校の成績は最下位で卒業した。
それから大学に進学する事はなく、バイトで稼いだお金は全てゲーム関連につぎ込んだ。
そんな生活で金銭問題は解決できないのは目に見えている。問題に直面した時任は動画サイトでゲーム実況動画を投稿し、見事収益を得る事に成功した。瞬く間に動画サイトで有名人となり、ゲームイベントやゲーム開発にまで呼ばれるようになった。
彼が小金持ちになった頃、父親が病気になった。追い出した相手なんて気にする事は無いのだが、育ててくれたりゲームを買ってくれたりした恩はあるので手術費入院費諸々全額出した。
それがネットニュースになり、いらない良い人のレッテルを張られた。
おかげで仕事が毎日の様に舞い込み、日中は仕事、夜はゲームに実況と忙しい毎日を送っていた。
結果、実況中に心筋梗塞を起こし、そのまま死亡した。
住所はバレると変な奴が来ると知っていたため、非公開にしていたせいで救急車が間に合わなかったのだ。
葬儀には多くの人が参列し、彼の最後を見送った。
・・・・・
「まあ不幸ではなかったんじゃない?」
スラーパァは目の前にいる時任に感想を言った。
時任の魂は死んだ後、スラーパァの元へやってきていたのだ。
「そんな君がまた新しい人生を送れる権利を得たんだ。まさに幸運だよ君は」
「それはいいけどよ、その異世界転生? の説明も受けてどんな能力が欲しいって聞かれてもピンとこないんだわ」
時任は頭を掻きながら困っていた。
来る日も来る日もゲームに明け暮れていたのでそれ以外の知識がまるで無い。異世界転生の知識なんて皆無だ。
魔法やスキルもゲームのシステムの様に当てはめるが、それでもイメージが湧かない。
「説明書読むよりもぶっつけ本番タイプだったしなあ……、使ってみないと分かんねえや」
「そこまで面倒を見るつもりはないよ。やりたい事を言ってくれればそれに即した能力を上げる」
時任は再び頭を抱える。
「(やりたい事、やりたい事……)」
しばらく考え込んで、ピン、と閃いた。
「それなら『チーター』かな。ゲームじゃ絶対しなかったけど、別世界でできるならそれがいい」
「チーター……。了解了解、承諾したよ。他にも色々サービス付けておくね」
スラーパァの指先から細かい光の粒子が漂い、時任を纏った。
「それじゃあ早速転生行ってみようか」
「おう! 頼むぜ!」
時任の身体が光りに包まれ、そのまま飲まれていった。
梅本時任は異世界へ転生した。
・・・・・
魔王城 謁見の間
「……それで、何が不満なのだ?」
魔王は椅子に頬杖を付きながら転生者トキトウを見ていた。
「いや、俺も言葉足らずだったのは認めますよ。でももうちょっと疑問に感じて聞いて欲しかったなって」
「お前の世界ではそれが一般的なのだろう? 責める言われはなかろう」
「だからって……!」
「だからって動物のチーターにすることはないでしょうがあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
トキトウは見事、哺乳綱食肉目ネコ科チーター属に分類される食肉類、『チーター』へ転生したのだった。
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お読みいただきありがとうございました。
次回は『2人目 トキトウ・ウメモト Ⅱ』
お楽しみに。
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