閑話『飛べない小鳥』
今日も少女は1人孤独に本を読む。
透き通る氷のような白い髪に、深い海を彷彿とさせる蒼い瞳をもつ少女。その容姿はとても整っていて見る人を惚けさせる美しさを持っていた。
だが、どこかその姿は曇って見える。
少女はとある貴族の娘として産まれた、それに加えて少女には特別な才能があった……固有スキルを持っていたのだ
――――そのスキルとは…
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《精霊の寵愛》
その者は精霊に愛されている。
このスキルが宿りし者に精霊は微笑みその力を貸し与えるだろう。
真に精霊と心を通じ会わせ行使するのは真なる精霊の力の鱗片。
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『精霊の寵愛』を宿していると知ったとたん両親は少女に溺愛しだした。
この世界で精霊とは信仰の対象となるほど神聖で特別な存在とされている。その精霊から寵愛を受けているのだ、それはもう神童だなんだと少女はもてはやされた。
そして、少女が15歳になって職業を授かった。
運命の導きか少女の職業は≪精霊使い≫という精霊に関する職業だった。
そして…
――――転機は訪れる
屋敷に何者かが侵入したという知らせを受けた少女は使用人と共に部屋で待機していた。
「ねぇ、大丈夫なのかな」
「大丈夫ですよ、直ぐに族は捕まります」
そう話していたその時、使用人がいきなり倒れた。
「ど、どうしたのッ?大丈夫?」
そう近付こうとしたとき、それは現れた。
黒いローブを纏った何者かの姿が扉の側にはあった。
「だ、誰?」
その者は何も言わない、ただその手を少女に向けてボソッとなにかを呟いた。
―――職業を授かったその日の夜、少女は声を失った。
少女には《声封じの呪い》がかかっていたのだ、その効果はいたって単純その者の声を封じるただそれだけ。たったそれだけが少女には大問題だった、それは
《精霊使い》は精霊と契約してその力を貸してもらい行使することが出来る職業だ。
問題なのは、精霊と契約するのには声が必要だということ……具体的には精霊を呼び出し契約するのに詠唱が必要なのである。
そうして、少女は全てを失った。今まで優しかった親や他の人達は手のひらを返したように冷たくなり少女への関心を失った。
勿論、両親は初めは呪いを解く方法を探していた。協会の使者に解呪を依頼したり特別な薬を使ったり、だが何をしても《声封じの呪い》が消えることはなかった。
今現在、こうして少女が生かされ不自由なく暮らせているのは、両親が少女の美しい容姿を勿体無く思い何かに使えるのではと考えているから、ただそれだけである。
―――――――――
「お嬢様今日もまたその本を読んでいるのですか?」
「……」
少女は頷く。そして手元にある本に目を向ける。
その本は英雄の話、とある少女が1人の少年に助けられる物語。
今日も少女はこの本を読む。いつか自分にもこの本に出てくるような英雄が助けに来てくれることを願いながら。
――今日も少女は1人孤独に本を読む。たった1人の英雄を待ちながら……
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