第10話『強敵との戦い 後編』

フリードは魔物に何度も接近し攻撃を仕掛けるが、フリードの持つショートソードと魔物の持つ武器では、魔物のものの方がリーチが長くなかなか攻撃が決まらない。


フリードが斬撃を放とうとするも魔物の横薙ぎの攻撃に阻まれる。


(あの鉈が邪魔で攻撃を仕掛けられない、いなそうとしても熱によってこっちの武器が駄目になる、まずはあの鉈をどうにかしないと…)


だが、魔物はフリードに考える時間を与えない直ぐに鉈を振り回しながら近付いてくる。


「くっ…」


(どうすればいい?…)


魔物の攻撃を避け、時には弾きながら《思考加速》《高速演算》を使った頭で思考し続ける。


(これならいけるか?…いくぞっ)


一度、魔物から距離をとり、直ぐ様近付き魔物の懐に潜り込もうとする。


(よし、やっぱりそう来たか)


魔物はフリードの予想通り、懐に潜り込もうとするフリードに向けて横薙ぎの攻撃を放ってきた。


次の瞬間、空中にとび一瞬だけ魔物の武器の上に乗る、靴が焼け焦げる嫌な音を無視してそこから一回転し、その勢いのまま魔物の手を切り裂く。


切り裂かれた痛みにより、武器を握る力が弱まる。フリードはその隙を逃さず、≪戦士≫の《強力》をかけて強化した足で回転の勢いをそのままに魔物の武器を蹴り飛ばした。


魔物の手を離れた武器は弾かれるようにして、少し離れた地面に突き刺さった。


―――――――――――


フリードの身のこなしは戦っている内に研ぎ澄まされ鋭くそして滑らかになっていく。それに加えて魔物が武器を失ったことにより対処が楽になったのもあり、どうにか魔物に対抗出来ていた。


しかし魔物はフリードよりも数段強く、しかも魔物が纏う炎によりフリードは魔物に深い傷を与えられないでいた。

その上、魔物に近付くだけで少しずつフリードの体は火傷していく。


フリードは刹那の瞬間に、魔物の攻撃を見切り避ける。力強く踏込み一瞬の内に懐に潜り込み鋭い斬撃を放とうと試みるが寸でのところで飛び退く。


「くっそッ…」


魔物は切られそうになったその瞬間、体に纏う炎の熱量を上げフリードの攻撃を防いだのだ。


実のところフリードの体力は切れかかっていたこれまでの戦闘による疲労、スキルの多重使用による疲労、それに加えて今までの魔物との攻防でフリードの体はすでに至るところが火傷していてフリードの動きは目に見えて鈍くなっている。



フリードと魔物が一進一退の攻防を見せていたその時、魔物が動きを止め、息を吸い込む動きを見せた。


これはチャンスだと、フリードは全力を放とうと大きく剣を振りかぶる。


「はぁぁぁォォァォォ」


剣が当たる直前、魔物が膨大な熱量をもつ炎の息を放った、フリードはそれを真正面から喰らったことにより体を焼かれながら吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。



フリードは意識朦朧とする中、煙の中から炎を吹き出しながら迫る魔物の姿を見た。


「う、うぅ…」


(こんな攻撃があるなんて…息を吐き出した瞬間に瞬時に後ろにとんだお陰でまだ生きているがこのままじゃ殺される、殺られる前に殺らないと…でも、今の俺じゃアイツに勝てない…)


(諦めるな、やっと冒険者になったんだ俺は負ける訳にはいかない、、でもどうやったら…)


―――――その時フリードの頭に1つの考えが生まれた。


(いや、でもそんなことが出来るのか?ううん出来る出来ないの話じゃない、これが上手くいかなかったら俺は死ぬ、一か八かやってみるしかない)


「いくぞッ、うをぉぉぉぉぉッッ!!」


―――――ブモォォォォオオオオオオ――――


フリードはボロボロの体に鞭打って魔物に肉被する。


凄まじい攻防の後、先程と同じように魔物は息を吸い込んだ。


「きた、ここだッ!!」


フリードはその瞬間を心待にしていた。そして、残る力全てを込めてあるスキルを発動させた。


そのスキルとは…《疾風突き》


―――――――――――

フリードは《疾風突き》を覚えたときのことを思い出していた。


それはヴィントに≪槍使い≫の稽古をつけてもらったときのことである。


「そういえば、ヴィントさんの《魔槍士》ってどんな職業なんですか?」


「あぁ《魔槍士》はな槍に属性を付与することができるんだ、俺ので言うと、俺は槍に風属性を与えて戦ってるんだ。」


「へぇーそんなことが出来るんですか、風属性を与えると具体的にどうなるんですか?」


「風属性は主に攻撃速度が上がる、槍は元々攻撃が早いからそれに加えて風属性を付与すると相手に攻撃の隙を与えず攻撃し続けることができるんだ」


「すごい…」


「あははっだろ?」


「はい!!」


そしてその後の特訓の末、≪槍使い≫のスキル《疾風突き》を覚えたのである。


―――――――――――

フリードは職業のスキルを、その職業の適正でない武器に使うことに成功したのである。


今回のでいうと、槍のスキルを剣に使ったのだ。


そもそも職業が全てとされるこの世界では職業が決まったらそれを極める為、このようなことをする者はいなかったのである。


しかし、フリードの≪自由人≫は自分で職業を選べるだからこそ、槍のスキルを剣に使うなどと言う前代未聞のことが起こったのである。


――――フリードは賭けに勝った。


次の瞬間フリードのもつ剣が風を纏う、魔物や周りの炎を巻き込みながら風が強さを増していく。


「はあぁぁぁぁぁぁ!!」


風を纏った剣でフリードは高速の突きを放つ、それに対し魔物は炎の息を放つ、決まったのはフリードは《疾風突き》だ。


《疾風突き》とは槍に風を纏わせて高威力、高速の突きを放つ技である。ちなみに属性付与とは別物である。


これをフリードは剣に使った、風を纏った突きは魔物の首に突き刺さる。渾身の一撃を放ったにも関わらず首を貫通することはなかった。


だがしかし、首に剣が突き刺さったことにより吐き出そうとしていた膨大な熱が行き場をなくして爆発した。


フリードは吹き飛ばされ、近くの木に激突して止まった。


薄れ行く意識の中でフリードが見たのは、爆発で更地となった森の一部とその中央で立ち尽くす首から上が吹き飛びボロボロになった魔物の姿だった…



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