~動物霊~終

佐藤さんが布団の隙間すきまからのぞき見て


影の多さに気づき声を上げてしまった…




「きゃあ~!」



叫び声におどろいた影達がいっせいに


佐藤さんを襲ってきた!



ヤバい!



占竜は隠形印おんぎょういん解除かいじょ


除霊じょれいの為、戦闘態勢せんとうたいせい


とろうとするが間に合わない!


「くっ…」



その時、佐藤さんのベッドの側にいたれいうなり吠えた!



「ウウウウウゥ~


ウウォン!」



影はひる後退あとずさりをはじめた…



おびえ引いていく影達に


ベッドのそばにいる靈が影たちに滲みよって行く…



ベッドの側にいた靈の凄まじい靈氣れいきに影たちはチリジリに逃げだした…



「しめたっ」


占竜はベッドの側にいるれいの正体がわかり


佐藤さんは任せたと話かけると影を追いかけて外にでた!



あせらせやがってぇ…


逃がすものか…



占竜は呪文を唱えながら影達をつけて行く…



影はある場所にくると、スゥ~と消えた…



「ここだな…」



占竜は数ある石碑せきひの中で


影の消えた石碑の前に立つと悲しい表情で見つめていた…



そこには…




動物実験どうぶつじっけんにより…


人間に無残むざんにも殺された実験動物達の


慰霊碑いれいひが建っていた…



「この慰霊碑には犬が供養されているのか…」



慰霊碑の周りを見渡すと二本の木がそびえたち


枝が折れて鳥居とりいのような形になっていた…



佐藤さんの部屋に向かう為の道しるべのように…



靈道れいどうが佐藤さんの部屋にむかって開いていたのか…」



占竜は鳥居みたいになっている折れた木の枝を取り払い


秘文ひもんを唱え靈道を閉じた…




「犬の慰霊碑と佐藤さんの部屋がつながってしまっていたんだな…」




ふたたび犬の慰霊碑の前に立つ占竜の心に


犬たちの苦痛と悲鳴ひめいしみみ込んできた…



「この慰霊碑の数々…


苦痛にのたうちまわる動物達を封印ふういんする為に作ったのか?



苦しんで死んだ動物達に感謝もせず…



欲にまみれた人間が、会社の印象が悪くならないようにと


体裁ていさいの為だけに作り上げられただけの物じゃないか…」




占竜は動物達の無念を思い、ほほらす…




「すまない…


人の為…


命をささくしてくれたのにな・・・



すべての人が無情むじょうで欲にまみれているわけじゃないんだ…


アナタ達のお陰で病に打ち勝ち…


涙を流し喜んでいる人は沢山いる…



その方達はアナタ達の命をした功績こうせきに気づかずに


薬を作った人間…


それを使用し病を治した医者に高額な費用を払い感謝している・・・



アナタ達に…



アナタ達に…



一番感謝しないといけないのになぁ・・・




すまない…



俺だけでは到底納得とうていなっとくできるハズがないのはわかっているが…


少しでもアナタ達の苦しみがいやされるように・・・」



占竜は慰霊碑の前で印を組むと静かに真言しんごんを唱え始めた・・・



「動物達を守護し畜生ちくしょうの苦しみをいやす菩薩よ・・・



何卒なにとぞあわれなる動物達を救いたまえ…


オン・アミリト・ドハンバ・ウン・ハッタ・ソワカ・・・」



犬の慰霊碑、他の慰霊碑からもほたるのような光があふれ天へとのぼっていく・・・






「また来るから…」




そう言うと占竜は慰霊碑に頭を下げ


佐藤さんの自宅にゆっくりと歩いてむかった・・・




~あとがき~


んっ?


読者からの声がこえてくる。


何故、犬の慰霊碑なのに男の子や女の子


老人の霊がでたんだってこと?



多分犬達はこう言いたかったのだろうね…


僕たち犬は人に忠誠ちゅうせいちかう弱い生き物なんだ…


こんなにも人間のことが好きなのに何故なぜイジメルの?


苦しいよ…


痛いよ…


怖いよ…


弱い僕らをイジメないでって…


人間の世界では弱い子供や老人に化けてうったえていたんだよ…



ん?


まだ質問かい?


佐藤さんのベッドの横に何がいたのかって?



それは…



言わなくてもわかるでしょ♪


犬は人間の最高で最強のパートナー!


忠犬ちゅうけんと呼ばれ


何世代にもわたり人間と共に暮らしてきた…




人間はね…


簡単に人を裏切るが


犬は死んでもご主人を守るものなんだよ…


佐藤さんは今でも竜の首輪を大事にしています…


あの日以来パッタリと霊が見えることはなくなったそうです。

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