~動物霊~

占竜はお客様を出迎える為に店の掃除をしていた…


「今日も一日頑張りましょう~♪」


呑気に自作の鼻歌を歌っていた。


「はいはい、今でますよ~」


店内に電話が鳴り響いている…



プルルルル…



プルルルル…



ガチャ!



「はい、占竜せんりゅうです♪」



「もしもし、占術師せんじゅつしさんですよね?

 

○○さんから、お祓いもすると聞いて電話したのですが…」



「はい、時と場合によりますが、おはらいもしますよ」



「ご相談にのってもらいたいので、15日に予約とれますか?」



「はい、大丈夫ですよ。

 

15日は午後2時から空いていますが、いかがいたしましょうか?」



「では、15日の午後2時から予約いれてください」



「わかりました。

 

予約をいれておきますね。

 

お名前をお願いします」



佐藤和美さとうかずみです

 

よろしくお願いします」



「佐藤和美さんですね。


では、予約をいれておきますので


よろしくお願いします」



「ありがとうございます。

 

よろしくお願いします」



「失礼します」


ガチャ



疲れているような暗い声だったなぁ…


かれてなきゃいいけど…



占いは女性からの依頼で恋愛占術れんあいせんじゅつ


おもだが、時たまこういう依頼がくる。



運勢うんせいを良くする為には、


邪魔をするやからをなんとかしないと道は開きづらい…



さて、鬼がでるかじゃがでるかは、15日までのお楽しみってことだな…






さて、そろそろ約束の時間だな…



「こんにちは、予約していた佐藤ですが…」



「はじめまして、占竜せんりゅうです

 

さあ、どうぞこちらへ」



佐藤さんは、まわりを見渡しながら、占竜の後へとついていった…



「では、こちらでお話をおうかがいします

 

どうぞお掛けになってください」



小さい個室へと案内された佐藤さんは、椅子に座ると、


心配そうにキョロキョロしている…



目の前には水晶玉やカード、様々な道具がおかれ、


いかにも占いするのだろうなって雰囲気をかもしだしている…



「では、お話をお聞きしましょうか?」



「はい、実は自宅に男の子がでるんです」



「男の子?でるってことは


幽霊みたいな感じってことですか?」



「はい、夜中の2時頃になると男の子が…」



そこまで話すと佐藤さん思い出したかのように


ふるえだし青ざめている…



そんな佐藤さんの様子を見た占竜はジッと佐藤さんの目を見る…



「この部屋はしき者が入れないように


結界けっかいを張っています…


心配せずに話してくださいね…


どんな状況でも改善かいぜんの道は必ずあります…


とりあえず、ゆっくり深呼吸しんこきゅうしてください…」



それを聞いて佐藤さんは


ゆっくりと深呼吸を始めた…



落ち着きを取り戻したのを確認した占竜はゆっくりと話しだした…



「まだ、その男の子の霊が


悪影響あくえいきょうをあたえているかはわかりません…


ただ怖いってだけで拒絶してはダメですよ…


何かを伝えたいだけかもしれません…」



「はい…」



「では、男の子の霊が現れはじめた頃のお話を


できるだけ詳しく教えてください…」



佐藤さんはうつむき加減でポツリ、ポツリと話し始めた…



「最初は夜中に子供が歩く足音が聞こえたんです…


ペタペタと…


気のせいだろうと思っていたのですが毎晩聞こえて…


そのうち、男の子がすすり泣く声が聞こえてきはじめたんです…


怖くなって布団に潜って震えていました…」



占竜は佐藤さんの話に耳をかたむけながら


水晶をジッとのぞきこんでいる…



「最近では部屋に入ってくるんです…



閉めたはずのドアが少し開いていて


その隙間すきまから私が寝ているベッドをジィ~と見ているんです…


黒い影のような男の子なんですが


目だけが赤くて血の涙を流しているかのように…」



佐藤さんは思い出したくないことを


一生懸命思い出して話してくれているのだろう…


カタカタと震えながら…


どこを見ているかわからないうつろな表情で話しをしている…



精神的にまずいなと感じた占竜は話を中断させる為に


席を立ちお茶を差し出した…



「話はだいたいわかりました。


まあ、お茶でも飲んでゆっくりしていてください。


少し占ってみますので…」



そう言うと、占竜は不思議な棒を取り出し


水晶玉に向かって何かを書いている…



「私…


何かかれていますか?


お祓いしてもらえますか?」



目を細め、水晶玉を見つめていた占竜は静かに話しだした…



「佐藤さんには直接憑いてはいませんね…


男の子の足音が聞こえ始めたのはいつぐらいですか?」



「2ヶ月前からです…


私に憑いてないなら


なんで男の子はでてくるの?


幻覚げんかくを見ているのですか?」



「幻覚ではないと思います…


確かに何かは見ていると思います…


佐藤さんに憑いてない以上…


原因は他にあります…


自宅に住んでどれくらいたちます?」



「五年くらいだと思います…


でも、最初は何も異変はありませんでした…


男の子が出だしたのは最近なんです…」



おかしいな…


占術では自宅に問題ありだとでているが…


もう少し突っ込んで聞いてみるか…



「五年ですか…


自宅はアパートですか?


2ヶ月~3ヶ月前に


自宅で変わったことしませんでしたか?」



「自宅はアパートです…


特に変わったことはしていないのですが…」



話を聞く限り怪しいとこはないのだが…


仕方ない…


自宅を直に見てみるしかないか…



「う~ん…


私が占うと自宅に問題ありとでるんです。


アパートなら他の住人が


男の子について話しているのは聞いたことなどないですか?」



「他の住人の方にも聞いたりしてみたのですが


特に何もないよ、と言われました…」



「よろしければ


自宅を見せてもらえませんか?


自宅まで行けば原因をつかめると思うのですが…」



「是非お願いします…」



「ふ~む…


では、いつにしましょうか」



佐藤さんは早くなんとかしてほしいらしく


今すぐにでもと頼んできた。



「今日になりますと申し訳ないのですが


他のお客様から占術予約をいただいておりまして


自宅にお伺いするのは夜になると思いますがいいですか?」



「夜中になろうがかまいませんので


よろしくお願いします」



「では、住所と電話番号を教えてください


占術が終わり次第ご連絡差し上げますので…」



「はい」



佐藤さんは占竜からメモ帳を受け取ると


住所と電話番号を書き不安そうな表情で


頭を下げ帰って行った…



占竜は佐藤さんが帰ると次のお客様の準備にとりかかる。







さて、今日の占術は終わったな…



最後のお客様を見送ると


占竜は壁にかけられている時計を見る…



「23時か…」



予定していた時間よりかなり遅くなってしまった…


占竜は頭をポリポリとかきながら愚痴ぐちをこぼす…



「遅くなってしまったなぁ…


とりあえず佐藤さんに連絡をとるか…」




プルルルル…



プルルルル…



プルル…


ガチャ



「はい


佐藤…す」



「夜分すいません…


占竜ですが今仕事が終わったんです…


かなり遅くなってしまいました…


今からおうかがいしても大丈夫でしょうか?」



「あっ、占竜…ん


電話待っ…いました…


お疲…と…思いますがよろ…くお願いします」



「では、今から準備してお伺いしますね」



「はい、…待ち…てます


失…しま…」



ガチャ…


「…………」



「雑音が酷いなぁ…


間違いなく何かいるなぁ…


仕事が忙しく疲労困憊ひろうこんぱいで今すぐにでも寝たいとこだが仕方ないかぁ…


佐藤さん精神的にヤバかったからなぁ…


普通なら違う日にずらしてもらうが…


気合いを入れて行くかな…」



ブチブチと愚痴を言いながら


占竜は準備をして佐藤さんの自宅に向かった…


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