第24話
今日は頼んでいたテンサイが大量に届く日。
タスマニアさんに話したらそんな大量に宿届くと目立つので代わりに用意して持ってきてくれるという話になったのでお言葉に甘えておまかせする事にしている。
今日の仕込みは早々に済ませておりロン君もウィスター君もやる気満々で準備をしている。
そんな時だったわ。
「ユーコさんは居るかな?」
食堂から厨房に顔を出したのはなんとジョバンニ様だった。
「えっ?ジョバンニ様!?」
ココ最近ジョバンニ様が来る時は事前に予約が入りお席の確保が万全な状態なのに次回は確か10日程先だったハズでは?と戸惑っているとその後ろから領主のマイク様が顔を出している。
「やぁ、ユーコさん突然済まないね。タスマニアはまだ来ていないのかい?」
マイク様にはタスマニアさんから今日砂糖を大量に作ると言う話は伝えてもらっているので分かるのだけれども何故ジョバンニ様もご一緒なのかしら?
確かにジョバンニ様はお貴族様でしかも結構高位のではないかとロン君とウィスター君とは話をしていたのだけれどもコレはどういうことなのかしら…
「タスマニアさんはまだいらしてません、宜しければ個室へご案内しますわ。ロン君お茶とアレをお出ししてくれるかしら?」
今日砂糖を大量に作ると言うことである物も前もって作っていたのよね。
どうしても煮詰める時に甘い香りが漂うのでカモフラージュ?のために作った物をお茶請けに用意するように頼んで彼らを個室に案内する。
「ユーコさん、これは?」
目の前に置かれた淡い黄色のつるんとしたものに焦げ茶のドロっとしたシロップがかかっているもの。
そうプリンを作ったのよね。
結構砂糖を使うのでちょっと手を出していなかったのだけれども自前で用意できるようになったのでチャレンジしてみたのよね。
火加減とかにちょっと苦戦して最初は素が入ったり柔らかすぎたり硬すぎたりとしてしまったけれどもなんとか人に出せるくらいには上手く作れるようになったので今回小百合以外の人にも作れるようになったって訳なの。
「プリンというお菓子です。」
「うむ、なんとも言えないのどごしだ!それにとても上品な甘さで素晴らしい。」
初めて見るプリンをまじまじと見ているマイク様とは違いジョバンニ様は既に召し上がっている。
「なんと、コレは素晴らしい。」
マイク様もお口にあったようで良かったわ。
「相変わらずユーコさんの作るものはどれも美味しい。」
気づけばジョバンニ様のお皿はスッカリ綺麗になってしまって残っているシロップをスプーンですくって舐めているのが普通ならお行儀悪いという所だけれども何故かそう見えないのはこの人がイケメン過ぎるからなのかしら?
「それでユーコさん、ジョバンニ様の事は知っていらっしゃるという事だが、改めてご紹介させていただきますね。隣のジョバンニ公爵家のご次男で現在王位継承権2位のルッカ・ドン・ジョバンニ様です。」
はい?
確かにお貴族様とは思っていたけれども、王族に近い存在しかも王位継承権2位とかほぼ王族みたいなものでは!?と思ってしまうのは仕方がないと思うの。
そんな人に料理を食べさせていたなんて…
しかし、私のこんな料理で満足されるほどこの世界の料理の水準は本当に低いのね。
「まぁ確かに私は公爵家産まれだし、継承権も持っているが、今もコレからもにはしがない文官なのだから今までのようにユーコさんの料理を楽しみにしているよ。」
うぅ、ジョバンニ様のキラキラオーラは健在だわ。それに身分をひけらかさないその姿勢も素敵だわ。
「ユーコさんは砂糖を作れるようなったという事でジョバンニ様にご尽力頂くことになったので今回砂糖作りを見学させてもらえれば思って急遽顔を出させてもらったのだが大丈夫だったかな?」
マイク様やジョバンニ様が居ても別に私は問題なのだけれどもきっとロン君達は緊張してしまうのではと少し気になったのだけれども今後のトラブル回避の為にお力を借りるのだし断る理由も無いわ。
「構いませんよ、でも大して面白くもないですよ?」
今回は時間の都合上私のアイテムボックスで時間経過させたりもするのでその事を知らないお2人に先に説明するべきかもしれないけれどもどうしようかしら。
この能力は他では見ない凄いものらしいので(神様特別製ですし)あまり人に言わない方が良いとロン君達に注意されたので知っているのはあの二人だけなのよね。
あぁでも他の作業をしているうちに時間が経っているから今日は使わないで作ることにしましょう。
今後の工場での生産のイメージに繋がるでしょう。
そうこうしていると、タスマニアさんがやってきたので厨房に移動して砂糖作りを開始する。
小百合も最近ではお手伝いが出来るようになりピーラーで皮剥きは出来るようになったのでみんなでせっせと皮剥きをしてサイコロ状に切っていく。
「ちょっ!ユーコさんなんですかコレは!!!」
ピーラーを見てタスマニアさんが興奮しているわ。
「野菜の皮むき器です。コレならこの子でもお手伝いできますから。」
最近ではロン君もウィスター君も愛用しているのよね。
壊れた時の事も考えて10個ほどまとめて作ってあるし、1つタスマニアさんにプレゼントしましょうか。
「良かったら試されます?」
アイテムボックスから出す訳には行かないので厨房にしまっておいた予備を出して渡すと、ロン君に教わりながらテンサイの皮剥きにチャレンジしている。
「な、なんと!料理が苦手な私でもこんな簡単に…」
行商人時代は野営の時に簡単な料理?すら出来なくて硬いパンと干し肉で生活していたみたい。
「ほぅ、ユーコさん私にもやらせてくれるかな?」
興味津々なジョバンニ様まで試してみたいと仰られていますが、お貴族様にそんな事させられません。
「ユーコさん気にせず試させて上げてください。そして私もやってみたいです。」
なんとマイク様まで。
「ロン君、ウィスター君おふたりに貸して差しあげてくれるかしら。」
後はアイテムボックスから出さないと予備が無いので2人に頼んでピーラーを渡してもらう。
「おお!コレは簡単だし楽しいな!」
「スルッと皮が剥けるとはなんとも便利な道具です。」
「コレは売れますよ!」
3人ともそれぞれに興奮しているわ。
「あ、あの、そろそろ作業に戻りますので皮むき器をお返し頂けますか?」
そろそろサイコロ状にしながら半分は皮剥きをして分担して行かないといつまでも終わらないわね。
「ユーコさん!私もこのまま手伝うさ。」
「良いですね、それなら私も手伝いますよ。」
「そうですね、コレなら我々でもお手伝い出来ます。」
「そういう訳には行きません。」
ロン君もウィスター君もはらはらしながら見てるし、試してみたい位なら良いけれどもお手伝いなんてさせられないわ。
「ユーコさん、気にせずどんどん作業を進めてください。」
「ユーコさんここは私たちに任せてくれ。」
この場で1番身分の高い?マイク様とジョバンニ様に言われてはこれ以上はお断りできず、
「わかりました、ロン君、ウィスター君皮をむいたモノをこうやって切っていくのを手伝って。」
大人が色々と話している間も小百合ほ黙々と皮剥きをしているのが唯一の私の心の癒しになっていたが、早くしないと時間が無くなるので作業に集中することにしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます