第20話

「これで最後ね。」

パンとステーキを人数分用意し終えて後はウィスター君と一斉に運んでしまうだけ、さっさと終わらせてしまいましょう。

「じゃ、僕先に持っていってますね。」

給仕もだいぶ慣れいっぺんに持てるお皿も大分増えたようだが、少し離れた個室、しかも最大10人分を運ぶには台車が欲しいわね。

今度作ってもらいにいくとしましょう。

「ええ、私もスグに行くわね。ロンくん!手が空いてたらこっち運ぶの手伝ってもらえるかしら。」

食堂の方は一段落し、みんなお酒を飲みながらツマミを食べているので少しの間なら手伝ってもらっても平気そうなのでロンくんにも声をかけると、すぐに手伝ってくれたわ。


「以上でお食事は全てになります。後は食後にお茶と甘味をご用意させて頂いておりますのでお手数ですがお食事がお済みになりましたら食堂までお声かけください。」

「ユーコ、貴女の料理はどれも最高ですね。このステーキも美味しそうだし、甘味も楽しみだ。」

満面の笑みのジョバンニ様は元がイケメンなのでキラキラオーラが見えるような気がしてしまうわね。

「お口にあったようでよかったです。それとこの後に甘いものをご用意しましたが、甘いものが苦手な方はいらっしゃいましたらフルーツを用意致しますがご希望はございますか?」

男性は甘いものが苦手って昔は日本でも言われていて人前でなかなか食べれなかったという人も居たけれども今ではコンビニなどで簡単に手に入るし、そんな男の人は減ってきていたけれども、この世界はどうなのかしら?と思いつつ苦手な人は男女問わず居ると思うのでカットフルーツも一応用意して置いたので多分大丈夫だと思うのだけれども。


「なんと!甘いものとは楽しみだ。私はそれでお願いをする。他のものはフルーツの方がいい者はいるか?」

「私は普段甘いものは手を出しませんがユーコ殿の作ったものならば食べてみたいです。」

予約をしに来た時にいた護衛の人?がそう言うと皆是非食べてみたいと言ってくれたわ。

「それでは皆様にご用意致します。引き続きお料理をお楽しみください。」

私が対応している間にウィスター君がパンを配り終えたのでそうそうに部屋から退出し最後の準備に取り掛かる。


木苺のジャムのミルクレープにミルクバターを添えてミントに似たハーブを添えてカットフルーツをお皿に散りばめて盛り付けていきハーブティーも同時に用意をする。

「うわぁ、さすがユーコさんオシャレです!」

「見た目も美味しそうですよね!食べるのが勿体ないくらいに。」

横で見ているロンくんとウィスター君が目をキラキラさせて見ている。

「ふふ、ありがとう。多めに作ったから後でお夕食を食べたら2人とも食べていいわよ。」

きっとアンナさんたちもあとで匂いを嗅ぎつけてやってきそうだわとか作りながら思っちゃったのよね…案の定味見しに来て食後にリクエストされている。

まぁアイテムボックスに入れておけば腐る心配が無いのは本当に便利で後は時間調節機能に加えて温度調節もお願いすれば冷蔵庫要らずだったわなんてだいぶ機能を使いこなせるようになってきたかしら。


「なんと!食べるのがもったいないような可愛らしい食べ物だ。」

ミルクレープをみたジョバンニ様はとっても楽しそうな顔をしてくれ食事も満足だったと言って貰えたので良かったわ。

「ユーコの料理はどれも素晴らしい!我が家に連れて帰って専属になってもらいたいものだな。」

この話は実は最近よくある事なのだけれども弟子?も出来てしまったし咲百合の子育てをするのにこの宿屋はとても居心地が良いので他に行くつもりは今のところまったくないのよね。

「ふふ、申し訳ございませんが私は今の環境が気に入っていますので是非またお食事にいらしてください。」

中には強引な話をしてくる方も居るけれどもそういう時は領主様から預かった弟子が独立してからまたお返事させて下さいと言うと大概は何とかなるのでつい領主様の名前を勝手にお借りしてしまっているがこの間その事を謝ったらそれくらいならいくらでも大丈夫と言っていただいたので有難く名前をお借りしている。

「そうか、それは残念だが気が変わった時は私の元で料理をすることも候補に入れてくれるかな?」

ジョバンニ様は無理強いもワガママもおっしゃらないのでとても素敵なお客様ね。

「わかりました。いつになるかは分かりませんがその時が来ましたらジョバンニ様の所で働くことも考えてみますね。」

それにしてもこの方はただのキラキラオーラ全開のイケメンでは無さそうなのだけれども、詮索してもいい事ないので気にしないことにしましょう。

「期待しているよ。」

きっと私が結婚していなくて旦那に騙される前で咲百合も居なかったらこんなイケメンにコロッとなって二つ返事でついて行ってしまったかもしれないわね。

なんて馬鹿みたいなことを考えてはダメね、咲百合は私の唯一の宝物なのはまちがいないのだから。



その後彼らを見送り、片付けをロン君とウィスター君に任せ自室に戻り寝ている咲百合の顔を眺めてから日課となっているお祈りなどを済ませいつもより早めにベットに潜り込んでちょっと馬鹿な事を考えてしまったことを忘れようとしたのだけれどもジョバンニ様の顔が浮かんできてしばらく悶々としてしまいなかなか寝れなかったのだった。

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