第10話 エンザリア出現からの4日間で生じた被害は
・・10・・
孝弘達四人が中心となってエンザリアの対処を行い乗り切った三月一七日。しかしエンザリアの出現は翌一八日も続いた。
この日出現したエンザリアの数は七人。前々日に前日とエンザリアの速やかな排除には高位能力者か、さもなければ本来一個人には過剰火力もいいところである自走砲や戦車砲の集中砲火でないと厳しいと判断した日本軍は第一○一魔法旅団戦闘団や砲兵隊にエンザリア出現時の優先対処を指示。特にA+ランクからSランクの能力者(旅団戦闘団指揮官の璃佳を除く)は自分達が抜けると戦線に致命的な穴が開きかねない場合を除いてエンザリアの優先対処とした。もちろん出現した人数に応じての戦力配分となるが、エンザリアへの決定的な対処法が無い今は強力な敵には強力な高位能力者をぶつける他無かったのである。
三月一九日になっても先の方針は適用された。この日出現したエンザリアは一二人。それも分散して四ヶ所の出現だった。これには日本軍も対応に苦慮した。各所でCTと神聖帝国軍の攻勢が一時的とはいえ強まったからである。
それでも比較的短時間にエンザリアの対処が済んだのは孝弘達を始めとする一○一の部隊が高速機動展開が可能な部隊だったからである。
だが、このやり方にも問題が出始めていたし孝弘達が対処にあたっても損害が積み重なりつつあった。
まず一つ目の問題がエンザリアによる攻撃だけに絞った場合の物的損害と人的損害である。
エンザリアが初出現した一六日から一九日までの四日間で生じた両被害は以下のようになる。
【物的損害】
◾︎戦車:一○両喪失
◾︎機動戦闘車:七両喪失
◾︎自走砲:三両喪失
◾︎装甲車両:八両喪失
【人的損害】
◾︎戦死:三八○名
◾︎戦傷:七七五名
※戦線復帰可能者含む
ここで注目すべきは戦車・機動戦闘車・自走砲の喪失数である。僅か四日間で、それもエンザリアだけに絞ってこれだけの被害を強いられたのは日本軍にとって手痛かった。高速機動で正確無比な一二○ミリ砲を放ち、堅固な装甲で歩兵を守る盾にもなる戦車や機動戦闘車を約二○両失ったからだ。
人的被害も馬鹿にならない。エンザリア計三二人は全てを撃破したが、それと引き換えに陸・海兵隊基準で二個大隊以上の将兵が戦死傷となった。特に戦死約四○○名の数字は衝撃的で、キルレートにすると約一二対一。エンザリア一人を倒すのに一二人の将兵が死んでいるのだ。いかに精強と呼ばれ今も侵略者への反攻作戦を続ける程度には軍の能力を維持している日本軍といえど、動揺は広がっていたのである。
二つ目の問題は対処法によって生じたものだった。簡潔に述べるのならば、第一○一魔法旅団戦闘団や魔法軍の高位能力者への負担が増大し、無視出来ないレベルにまで疲弊が出つつある点である。
名取・仙台方面への奪還作戦が始まったのは一五日であり一九日現在で五日経過しているが、この期間第一○一魔法旅団戦闘団は出ずっぱりの状態であり、魔法軍にしてもかなり厳しい運用を強いられていた。
予備兵力と前線兵力の入れ替えを行うことで一○一以外の魔法軍高位能力者の入れ替えはギリギリ成せているといえるが、一○一はその部隊性質上あちこちに出張っているか前線の下支え、もしくは突破の矛そのものとして使われていたから入れ替えにも限界があった。
その結果、特に一○一では所属将兵のに疲労度蓄積と魔力消費量が他の魔法軍に比べ突出して高くなり、一旦部隊のかなりを休息させないと疲労度及び平均魔力残像量が要注意ラインに入りかねない状態になっており、既に計数十名の戦死と百数十名の戦傷者を生じさせていた。
このように、エンザリアによって日本軍仙台奪還作戦軍は思わぬ苦戦を強いられていた。
そのような中で、一九日の夜に孝弘は璃佳に呼び出され彼は最前線を離れ一○一の司令部に向かっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます