第41話 説教
「あのね、シャイニ。女の子が恋に憧れたりそういうのは仕方ないと思ってるし、帝国は一夫多妻だから問題ないけれど……学生の身でいきなり、よ、よん……4ぴー発言は感心しないわ」
「シャイニちゃんがエッチに興味津々なのは分かりますが~、まだ早いと思いますよ~、めっ」
校外学習出発前の二人に見つかって、事情を説明し、そして呆れたように頭を抱えるラヴリィちゃんとブレスツお姉ちゃん。
私たちを心の底から心配しているからこそ言ってくる……ってのは、分かってるんだけどね。
「それに、アネスト! ディー! あ、あなたたちまで……その、セカイくんに……せがむのはどうかと……」
「うぅ、ご心配おかけして……ですが、私たちには切実で……セカイが他の女の子に手を出しながらも、私たちには……だから……」
「ディーちゃんもそうなのは驚きです~。ディーちゃんはパパさん以外の男の子には~と思ってましたから」
「そ、そうなのよ。でもね、本気なの。それに、パパもママもダーリンのこと気に入ってるし……ママは早くおばあちゃんになりたいかもとか言ってるし、パパもセカイの素質や将来性を知って、何よりも私の気持ちを分かってくれてるから……」
モジモジしながらも自分の気持ちを伝えるアネストちゃんとディーちゃん。
二人のこんな姿をラヴリィちゃんもブレスツお姉ちゃんも初めて見るだろうから、驚いて言葉を失っている。
「あ、あなたは、どうなの? その、セカイくん……ふ、二人は、ううん、どさくさにシャイニもこう言っているけど……というより、ひ、ひどいこと聞くけど、あなた……この娘たちに何か変なこと……変な魔法とかそういうの使ってるわけじゃないのよね?」
あっ、流石に出会って数日で三人がセカイくんとエッチしたくなる現状にラヴリィちゃんも疑惑を抱いてるみたい。
たしかにそうだよね。
ただ、それを根底から否定しちゃう問題は……
「いや、だから俺は……アネストとディーが俺をってのを知り、俺は受け入れられねえから抱かないっていう話なんだ……」
そう、セカイくんはアネストちゃんとディーちゃんとのエッチを拒否してる。
それが、何よりも何もしてない証拠なんだよね。
だけど、ラヴリィちゃんは……
「そ、それも何かの手段かもしれないでしょ? その……あえて手を出さないことで相手に意識させるとか……ほ、放置プレイとか、そういうの……捕虜となって毎日凌辱されていた女騎士が、ふと数日間だけ男に手を出されない期間があって、その間に女騎士は悶々として、歯噛みして……ついには自分から性奴隷になることを懇願して、あまつさえ自分を犯した男を『御主人様』なんて呼んで、プライド崩壊した女騎士がブヒブヒって豚の鳴き声を語尾に着けて陥落するっていう物語だって……」
「「「「………はい?」」」」
いや、ラヴリィちゃん……な、なに? 何の話?
「あの……それって……」
「ッ!?」
あっ、でもアネストちゃんは何かに気づいたようで……
「それって、『月刊肉便器』に連載されていた『雌豚姫騎士のブヒブヒ調教日誌♡』という小説では……」
「ッ!? ちが、私そんなの、よ、読んでないもの! 男子から没収してたまたま目に入っただけで、ぜ、全然違うわよ!?」
「ま、まさか……」
「と、とにかく、誇り高き聖勇者、魔法騎士を目指す私たちが、あまりその……ゆるゆるしすぎるのはよくないってだけで……」
おぉっと……これは意外な展開。
顔を真っ赤に慌てて否定するラヴリィちゃん。その仕草は肯定になっちゃうんだよ?
まぁ、ムッツリなアネストちゃんがそういうの読んでるのは分か……え? 月刊肉便器? 何その月刊誌!? 逆に興味アルヨ!?
じゃなくて、な、なんでラヴリィちゃんが……そんな本を……
「そうですね~。ラヴリィちゃんがアネストちゃんと同じようにコッソリとそういう本を読んでいるのは別として~」
「ちょ、ブレスツ!? わ、私は読んでないと……」
「私たちはまだ学生ですよ~。不用意にエッチなんかして~、もし赤ちゃんが出来たりしたら責任取れますか~? 学生の内から赤ちゃんを授か……ママに……マーマに……ぽ♡」
と、ここで暴露なのか助け船なのかは別にしてブレスツお姉ちゃんが割って入る……けど……
「うふふふふ~……マーマですか~♡」
おっと、別の展開に入っちゃったよ。
どうやら「赤ちゃん」にハッとしたようだね。
「おい、これはどういう……」
「あははは、驚きだよね、セカイくん。まぁ~、あれだよ。ブレスツお姉ちゃんも私とディーちゃんと同じで帝国兵やら魔法騎士やらになるのは後ろ向きで、むしろ……たまにお手伝いに行ってる孤児院で色々となりたいものができちゃったみたいで……」
昔っから世話焼きなブレスツお姉ちゃん。
将来はステキなママになりそうで、将来お嫁さんになりたいアネストちゃんと実は同じだったりする。
ちょっと違うのは、アネストちゃんは旦那さんとラブラブして子供の教育はしっかりしたい派。一方でブレスツお姉ちゃんはとにかく子供を猫かわいがりしたい派かな?
「い、いずれにせよ、この話はもっとちゃんとというか……とにかく安易に不純異性交遊はやめなさい! セカイくんも、ちょっと私たちが今度帰ってきたときに色々と話を聞かせて欲しいの。だから、せめてそれまでは……この子たちは私取って大事な幼馴染であり、妹のような存在で……だから……」
「あ、ああ。それは問題ないというか……ってか、それならシャイニに言ってくれ。こいつ、俺の弱点を利用しようとしてきやがるとんでもない奴だからな」
「そ、それもそうね。分かった? シャイニ」
「えぇ~~~!?」
ううむ……せっかくナイスアディアだと思ったのに、ここでラヴリィちゃんたちに遭遇しちゃうとはなぁ……
「あ、え~っと、そうそう、ラヴリィちゃんたちは校外実習ってどこに行くの~? 私たちも来年には行くから気になるなぁ~」
「まったく誤魔化して……校外実習は毎年2泊3日で『ヲークレイブの森』になってるでしょ?」
「あ、あははは、そうだった~。って、もうそうやって誤魔化して……とにかく帰ったらお話よ?」
「はいは~い、いってらっしゃーい!」
何とか誤魔化して、ここで鬼の居ぬ間にロストヴァージンなんてしちゃったらどうなるか……でも、チャンスは今!
廊下を駆けていくラヴリィちゃんとブレスツお姉ちゃんが見えなくなるのを確認して……
「さぁ、セカイくん! 早速どこに行こうか!?」
「シャイニ、あ、あなたは……い、いえ、セカイがそれでその気になるのなら……」
「初めては一対一がいいけど……でも、ダーリンがシテくれるなら……まぁ、一緒にするのがシャイニとアネストなら私は別に……」
「おいおい、お前ら、ちょ、今の話を聞いてたか!? だから俺はお前らは抱か――――――」
と、その時だった。
鬼の居ぬ間に私たちが迫ろうとしたときだった。
「ん? ……マスター?」
「へ?」
「セカイ?」
「ダーリン?」
セカイくんが何かを感じ取ったようで、頭に手を当てて……あれ? ちょくちょくセカイくんが念話で話しているマスターさん?
どうしたんだろ?
「……なに? 魔王軍の一個隊が……ふんふん……次代の戦力を削ぐために強襲? ……ヲークレイブ?」
ただ、その話は私たちの運命を……ラヴリィちゃんとブレスツお姉ちゃんの運命をも大きく変える出来事になる話だった。
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