第7話 休養日の作業
20 休養日の冒険
本日は休養日。
本当は寝て過ごしたいところだ。
だが張り切っている奴らがいる。
他ならぬ俺のパーティの皆さんだ。
「今日は集団戦の練習。とにかく狩りまくるわよ」
まずミリアがこんな感じ。
ちなみにミリアは前回のレベルアップで使える魔法が増えたらしい。
それを試したい&披露したいというのもあるようだ。
「夏に向けての洋服代!」
アンジェがそう言えば、
「昼食の向上!」
ライバーがそう応える。
ちなみにこの学校、昼食だけは無料ではない。
だからだいたいこのパーティの面々は食堂で一番安い
モリさんに至っては昼食は食べない主義だった。
だがミリアに、
「筋力が落ちるしスタミナもなくなるわ。食べないとパーティから外すわよ」
と脅迫され、食べるようにしたそうだ。
そのモリさんも、
「絶好の収入機会だからな。何としてでも稼がないと」
とやる気の模様だ。
俺とミリア以外の装備もすこしはマシになってきた。
モリさんの革鎧はバラしてモリさんにあわせてサイズをなおした。
武器は両手で使う十字槍。
俺が作ったものだがここ数日の改良を経てかなり慣れてきた。
ライバーは鎧はないが革で胸当ては一応作っておいた。
奴は盾もあるしこれでとりあえずは大丈夫だろう。
俺の作った片手剣を豪快に振り回す技よりパワーな剣術で戦う。
アンジェにも魔法杖をとりあえず作って渡しておいた。
これは森で拾ったトネリコの枝を加工したもの。
倒したゴブリンメイジの魔法杖を溶かして魔力導線も仕込んだのでそこそこいい感じの杖になっている。
まだ防御装備はないので後衛専門だがミリアがいれば問題無いだろう。
追加装備は森で拾った素材やゴブリンの装備で使える部分だけを切って貼ってという形で俺が作ったもの。
それでも今の収入で買える格安品よりはましな筈だ。
俺は各属性初級魔法以上の加工が出来る。
つまり魔法の腕だけならそこらの装備店の店員と変わらないかむしろ上。
無論技術的にも経験的にも店員の方が慣れているだろう。
でも装飾的な部分以外の造りはそう大差ないはずだ。
そんな訳で朝食を食べ、昼食のパンを買い、事務室で本日の様子をいつもの事務員に尋ねる。
「ゴブリンか同程度の魔獣がそこそこ出る場所で今お勧めの場所は何処でしょうか」
「そのくらいの難易度なら北門から
「俺が出来る」
「俺も」
モリさんと俺が出来るようだ。
「なら川か何処かで放血させて解体をすれば肉や毛皮もいい値段で買い取る事が出来ます。値段は買い取り相場表を参考にして下さい。ただ程度によって値段は上下するので、肉や毛皮の値段はあくまで参考です」
案内地図や買取相場表はここの学校で作ったもののようだ。
この辺での冒険者活動も教育の一環という事なのだろう。
学校の事務室だけあって親切だ。
「それじゃ今日はカベック平原を目指すわよ」
北門に向けて出発する。
朝食を食べた後に出発したので既に朝一番の駅馬車等は街道を通っている。
俺達と同じような冒険者も遠方組は既にこの道を通っている筈だ。
だからゴブリン等のそこそこ大物はもう街道上には出てこない。
でも気温はまだそれほど高くない。
だからスライム程度の魔物は出てくる。
時間的に単独で出現する事が多い。
つまり訓練用にちょうどいい感じだ。
ライバーが片手剣で突き刺したスライムが崩れる。
「よし、スライムの魔石ゲットだぜ」
「次に出てきたらモリさんの番よ」
「わかった。楽しみだぜ」
「私はまだかな」
「もう少し強い敵まで魔力を温存してもらうわ」
そんな感じで進む。
モリさんとライバーがそれぞれ3匹ずつスライムを倒し、俺とミリア、アンジェが薬草のアステラ草を合計6本見つける。
レベルの高い冒険者は安価な薬草を往々にして無視する。
だから注意していれば採取できる事もあるのだ。
流石に昼過ぎ頃には全部取られているけれども。
森が切れて草原になった。
案内地図によるとここからがカベック平原だ。
更に案内地図にはこんな説明も書かれている。
『元はカベック村といい、広大な農場があった場所である。エデタニアの街が拡大した事により魔物や魔獣の発生が多くなって数十年前に放棄された。永続効果のある雑草・雑木除去魔法が効いている事から豆、芋、麦や野菜等が野生化したものが混生する草原となっている。食用作物が生えている事から魔物や魔獣が多い』
確かに食べられる植物が生えているのなら魔物等にとってもいい場所だろう。
なお入っているのは俺達だけではないようだ。
草原になってすぐの左側
走査魔法を最大限に使うと
魔獣の気配も小さいのからそこそこクラスまで豊富だ。
「これならかなり捕れるわね。期待していいと思うわよ」
ミリアも魔獣の気配を感じているようだ。
「それでどういう作戦で行くんだ」
「今度は前衛後衛とわけるわ。前衛が右からモリさん、ハンス、ライバー。後衛が私とアンジェ。前衛は基本的にハンスの指示で動いて。後衛は主に横方向と後ろ、あと苦戦しそうな敵の援護を中心とするから。
あと右側は冒険者がすぐ先にいるから左側に入るわよ。ここからどう歩くかはハンスに任せるわ」
「わかったぞ」
「了解だ」
「ああ」
「わかりました」
前後という形で道から外れ、左側の草原へ。
歩きながら注意をしておこう。
「豆と芋の蔓が乾いたものが地面を這っていて足を取られやすい。ゆっくり意識して足を持ち上げて歩くぞ」
返事を確認して、そして俺も意識してゆっくり歩く。
これ、確かに普通に歩いたら足を取られるな。
しかもこのせいでなかなか進みにくい。
だから先行したパーティは反対側へ行ったのだろう。
向こうは麦中心で歩きやすそうだから。
しかしこっちの方がいい面も間違いなくあるのだ。
それは音。
乾いた蔓がそこそこ這っているせいで人以外が歩いても音で気づきやすい。
魔法で走査できない者にとってこれは貴重だ。
「止まれ。ライバー、右斜め方向から小さいのが来ているぞ。音でわかるか」
「……わかった」
「なら任せた」
ライバーが構える。
なおライバーが受けそこなった場合、怪我させないよう魔獣を吹き飛ばす為、無詠唱で風魔法をためておく。
ライバーは盾と剣で構えている。
カサカサ音は徐々に近づいて……。
フオッ! ズバッ!
ライバーが剣を振り下ろす。
何かに当たった音がした。
茶色い枕くらいの物体が足下に転がる。
「見事よ」
「牙ネズミだな。でもこんな大きいのははじめてだ」
モリさんは知っているようだ。
「多分ここは餌が豊富にあるんでしょ。ハンス、自在袋に仕舞っておいて。あとで水がある場所を探してまとめて解体するから」
「わかった」
自在袋があるとこういう時に便利だ。
獲物が痛むとか考えなくて済む。
「牙ネズミは討伐報奨金と買取あわせて
「幸先いいよな」
「まだまだよ。せっかく朝から入ったんだから稼ぐだけ稼がなきゃ!」
皆さん調子がいい。
そしてやはりここの平原、獲物が多い。
もう次が近づいてきている。
基本的に魔獣は人を感じると逃げずに襲ってくる。
この習性はこういった狩りの際は大変便利だ。
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