第54話 懐かしの教会
◎本日の成果◎
討伐黒霊
口裂け狼×5体(嗅覚LV1、瞬発LV1、咆哮LV1)
亡国の白骨兵士×9体(剣術LV1、耐性・死LV1)
亡国の屍兵士×6体(感染LV1、剣術LV1)
失楽の屍教団員×3体(感染LV1、魔法・炎弾LV1)
保護青霊
少女の青霊|(イレーネ)⇒『懐かしの教会』が具現化
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魔剣ダリウス
耐久値:38/38(+1)
威力 :28(+1)
頑強 :35(+3)[+14]
魔力 :13(+5)
魔防 :15(+3)
速度 :29(+2)[+3]
幸運 :19(+1)
霊刻印
◇剣術LV2
◇感染LV3
◇統率・屍LV2
◇格納・屍LV3
探索者装備
体 :紺青の皮鎧
足 :紺青の洋袴
靴 :紺青の履物
装飾 :
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道すがら多くの黒霊を倒したのもあって、今回の探索での成長は著しい。今まで殆ど伸びしろがなかった魔力や魔防が急上昇したのは、やはり魔法を扱う聖ゾンを倒したからだろうか? 今後お世話になる可能性大なステータスなだけあって、この成長っぷりは大変に嬉しいものとなった。
逆に少し残念だった点を挙げるとすれば、それは討伐黒霊の一覧に紫シーツのお化けらしき名前がない事だろう。本来、魔法で倒した黒霊は魔具で倒した事にカウントされるらしいのだが、今回の討伐方法は魔法だったが、それはあくまでも命令した聖ゾンの魔法だ。俺の放った魔法ではない。よって、討伐黒霊にカウントはされなかったという訳だ。残念。
気を取り直して、会得した霊刻印についても考察しよう。今回の新顔となるのは、骸骨が持っていた『耐性・死』と、聖ゾンの『魔法・炎弾』だ。
ゼラの解説曰く、耐性・死は即死級のダメージを一度だけ緩和し、耐久値を1残す力があるとの事。どんなに大ダメージを与えても、あの骸骨が必ず一度生き残った理由は、まあこれだろうな。強力かつ確実にリスクを回避できる霊刻印だけど、枠を一つ取ってまで刻むかと言われると、正直悩ましいところだ。使いどころはありそうだけど、現状況だと耐性・感染の方を優先すると思う。
魔法・炎弾については、探索で見た通りのものだ。拳大の炎の弾を放出し、接触と同時に爆発を引き起こす。紫シーツのような霊体系の黒霊対策に必須となる霊刻印だろう。が、今回の探索で格納内に聖ゾンを三体入手する事ができたし、俺自身が刻み直す必要はなさそうだ。という訳で、霊刻印の構成は現状維持で。
「お兄ちゃんお兄ちゃん、大変! 教会、教会ができたよ! あと、綺麗なお姉さんも居たの!」
そして、ここからが真の本題。興奮気味にアリーシャが教えてくれた教会とは、今回の探索でイレーネを救出した事により、白の空間に具現化した新たな設備の事である。アリーシャの花畑に寄り添うようにして、小さな教会がそこに建っていた。石造りでどこか古めかしく、若干寂れているような印象を受ける。
「へえ、あの大聖堂じゃなくて教会ができたのか。ちょっと予想外」
「あの娘っ子の心象風景をより強く映し出したのが、この教会だったのじゃろうて」
「うおっ!? ダ、ダリウス、生き返ったのか!?」
「勝手の殺さんでくれる?」
いやあ、だってあんな見事に玉砕してたし。とまあ、そんな漫才をしているうちに、アリーシャに片手を握られる。
「サンドラお姉ちゃんも
「ああ、そうしようか。ゼラも一緒に挨拶に行かないか?」
「
「そ、それは正直期待できないと思うけど……」
「えー」
「えーじゃなくて」
俺は何とかゼラを説得して、一緒に教会へと向かった。
「あら、ベクトさん。ようこそいらっしゃいました」
「や、イレーネ」
教会に入ると、眩しい笑顔を浮かべるイレーネが俺達に気が付いてくれた。どうやら教会の礼拝堂をサンドラと掃除していたらしく、二人とも掃除用具を手に持っている。
「えっと、掃除中?」
「はい、具現化されたこの教会、長らく手入れがされていない状態のようでしたので」
「それでお掃除のプロであるサンドラお姉さんが、イレーネを手伝ってあげる事にしたのさ。ほらほら、ベクトもアリーシャとゼラも」
「お、おう」
「はーい」
「……え? 私もですか?」
「当然!」
ポイポイポイッと、器用に俺達三人に道具を渡し始めるサンドラ。あの二日酔い姿が嘘のように、今の彼女はきびきびと動いていた。掃除のプロってのも、あながち嘘ではないらしい。
「ふう、ふう……」
そんなサンドラとは対称的に、ゼラの雑巾がけ作業スピードは緩慢なものだった。明らかに不慣れな様子で、もう疲れてしまったのか呼吸も荒い。だ、大丈夫だろうか? パピィ、ちょっと心配。
「ゼ、ゼラ、ひと仕事した後の一杯は美味いぞ。だから、もう少し頑張れ」
「ふう、ふう、ふう……! ベ、ベクト、これでここに、ふう……! 例の
「期間が現実的で逆に怖いんですけど!?」
とまあ、約一名が非常に苦戦を強いられていたものの、教会は小さな礼拝堂に懺悔室、そして生活スペースとして活用していたであろう一室しかなかったので、掃除はそこまで長時間には及ばなかった。しかし何と言うか、広大で豪華絢爛な装飾が至るところに施されていた大聖堂とは、ある意味真逆な印象だな、ここは。
「これでひと段落、と。皆、お疲れ~。今日の飯はおかわり自由で良いよ! このサンドラが許す!」
「わ~い♪」
「ハハッ、アリーシャは無邪気だな。おかわり自由はいつもの事じゃないか」
「ハッ!? そ、そうだった……!」
「いやいや、食材は無制限でも調理する手間はちゃんとあるんだからね? その感謝はちゃんとするよーに!」
「できれば、二日酔いした時の感謝も忘れないでほしいんけど」
「お、お酒…… お酒のおかわりは、自由ですか……?」
「「………」」
礼拝堂の長椅子にて力尽きたゼラが、最後の力を振り絞ってそんな事を言っていた。俺達は何とも言えない表情を返すのみである。
「クスクス。皆さん、とっても仲良しなんですね。私、何だか安心しました。お掃除も手伝って頂いちゃいましたし」
「なに、このくらいの事はお互い様だ。この教会、イレーネにとって大切な場所なんだろ?」
「はい、ここは孤児だった私が育った場所なんです。決して裕福ではありませんでしたが、神父様はとてもお優しい方でしたし、私に生きる道筋を示してくださいました。今の私があるのは、神父様とこの教会の存在があったからこそなんです」
「へえ、立派な人だったんだな。でも、それなら納得だ」
「はい」
教会について語るイレーネの表情は、子供時代を思い起こしているのか、ノスタルジックに浸っているようだった。ただ一つ気になるのは…… なぜイレーネはこの教会ではなく、あの大聖堂で働いていたんだろうか? 情に厚そうな彼女であれば、その神父と共に頑張りたいと思う筈だが…… まあ、そこまで根掘り葉掘り聞く必要もないか。教会だって宗教の母体があるんだろうし、そっち関係で異動がった、もしくは何らかの不幸があったのかもしれないし。
「ところでイレーネ、とっても聞き辛くはあるんだけどさ……」
「如何されましたか?」
「えっと、この教会って…… お酒とか、ある?」
「……ぎ、儀礼用の葡萄酒なら、少量は」
背後から突き刺さる案内人の視線が、少しばかり弱まった気がした。
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