第5話 炭鉱
その山の反対側は炭鉱と思える場所であり、そこには老若男女の村浴び都と燃える人たちが苦痛に顔を歪めながら働いていた。美桜たちは草木の影からその姿を見ていると、どうすれば救えるのか考えていた。
「人が強制的に働かされてる! 子供までいる!」
「奥を見てください! あそこに鞭や剣を持っている革の服を着ている男女の二人組がいるわ!」
美桜が炭鉱の奥を指差すと、そこには若い男女の二人組が村人を叩いて罵倒をして働かせていた。
「許せない! 村人を酷使して痛めつけて!」
今にも飛び出しそうな美桜を伊織が抑えると、琴葉が私が先に出ますと言った。
「大丈夫!? 一人じゃ危険じゃない?」
「大丈夫です! 私は魔法が使えますから!」
魔法。伊織は魔法が使えるか分からないので、魔法という言葉を聞いて、俺も使えるようにならないかなと口を尖らせていた。
「俺も魔法が使えたら……」
伊織のその言葉を聞いた美桜は、いずれ使えるようになるわよと言う。
「魔法は使える人と使えない人がいるし、ある意味センスが問われるわ。 一生使えない人は使えないし、ある日突然使える人もいる。 あんたは騎士団に入れたんだから、センスはあるはずよ」
美桜に言われた伊織は、ありがとうと返した。
「そろそろ行きます! 援護をしてくださいよ!」
琴葉が二人に言って、勢いよく飛び出た。二人組の男女は突然出てきた琴葉に驚くも、武器を握る手に力を込めて琴葉に飛び掛かる。
「貴様何者だ! 西欧公国の者か!?」
西欧公国者かと言われた琴葉は違いますとキッパリ言った。すると二人組は誰なんだと再度聞くと、琴葉は流れ者ですと答えた。
「それじゃ分からないぞ!」
「何者なのよ! 邪魔しないで!」
鞭と剣で攻撃をする二人は、琴葉の長剣によって軽々と地に伏せられる。琴葉は長剣の駆使して腹部に剣を叩き込み、武器に武器を絡めて吹き飛ばしていた。
「これで終わりかしら? 村人を解放して!」
「そんな簡単に解放するわけないでしょ! 私たちだって暮らしがあるのよ!」
私たちにだって暮らしがある。その言葉を聞いた琴葉は、野盗などではなく、どこかの集落の人たちなのかと思った。しかし、酷いことをしているのは間違いがないので、琴葉は解放しなさいと再度言った。
「俺たちじゃ倒せないか……仲間を呼んできてくれ!」
男が地面に倒れている女に言うと、勢いよく立ち上がって女が炭鉱の奥に走って行った。
「待ちなさい!」
琴葉が女を追いかけようとすると、炭鉱の奥から多くの人たちが武器を手に持って琴葉を倒そうと出てきた。
「お前が侵入者か! 俺たちの邪魔をしやがって!」
「たかが女一人で何が出来る!」
「殺せ!」
様々な言葉を琴葉に浴びせると、琴葉は問答無用と言い放つ。
「魔炎剣!」
琴葉が力強く叫ぶと、持っている剣に炎が纏わり、横に剣を振ると炎が増援の人たちに向かって伸びていく。
「こいつ魔法を使うぞ! 気をつけろ!」
「魔法だと!? こいつ何者だ!」
琴葉の魔法に驚いているが、それでも怯まずに武器を手にして迫ってきていた。琴葉は長剣で武器を吹き飛ばしたり、左手で腹部を殴って次々に倒していた。
「一人で倒せそうだけど……」
伊織がそう美桜に話しかけた瞬間、炭鉱の奥から一人の女性が出てきた。その女性は薄い茶色がかっている肩を少し超す程度の長さをし、前髪は左目の上から分けていた。身長は琴葉と同じ程度で、布の服を着ている軽装であった。その女性は艶のある肌と切れ長でありながら心を見透かすような目をしており、綺麗な美人であった。
「あんたが仲間を攻撃してる流れ者っていうやつかい?」
「だとしたら? ここで死にな!」
その女性は左手を琴葉の方向に向けると、地面の土が女性の手の前に移動をして矢の形に変化をした。
「鋼矢!」
そう叫ぶと、土が変化をした矢が琴葉に向けて勢いよく発射された。琴葉は紙一重でその矢を避けると、強いと呟く。琴葉の危機だと感じた美桜は、短剣を手にして勢いよく飛び出す。そして、飛び出した勢いのまま、右手を前に向けて氷矢と叫ぶ。
「琴葉から離れなさい!」
そう叫んで氷矢を女性に向けて放った。女性は土の盾を自身の前に出現させて美桜の攻撃を防いだ。女性は美桜の方を向くと、仲間がいたのねと言った。
「あなたたちを倒して村人を解放するのよ! 早く解放しなさい!」
美桜は女性を指差して言うと、その言葉を聞いた女性は使える人を連れてきただけよと笑っていた。
「なんでそんなことを! この人たちは普通に暮らしてただけでしょ!」
美桜がそう言うと、女性は大笑いをし始めた。
「お前らは知らないのか!? この国が村々を壊して貴族の別邸を建てていたことを! そのせいで村に住んでいた人々は行く当てがなくて死んでいたんだぞ!」
「だとしても他の村の人を奴隷のように扱っていいとはならないわ!」
「綺麗ごとを! やらなきゃ死ぬのならこっちが支配者になるしかないだろう!」
そう女性が叫ぶと、宙に無数の土矢を形成して美桜と琴葉に向けて発射した。美桜と琴葉は氷と炎の盾を形成してその攻撃を防ぐも、降り注ぐ土矢に押されてしまう。鋼矢と土矢。二つの魔法を交互に放たれて美桜と琴葉が押されてしまう。しかし美桜は諦めておらず、氷の魔法で地面を凍らせた。
「地面を凍らせてどうするつもり? それじゃ勝てないよ!」
女性が美桜に言うと、美桜はそれはどうかしらと微笑した。
「氷の上に足を乗せているわね? それが命取り!」
「な、なにこれ!?」
女性が焦っている理由は、美桜が地面を凍らせた魔法で女性の両足を凍らせたからである。女性は迫ってくる美桜の短剣を防ごうとするも、足が動かないので態勢を整えられない。
「仕方ない! 土柱!」
女性が土柱と叫ぶと、女性の足元の地面が盛り上がって数十メートル空に向けて上がっていく。それを見た美桜と琴葉は、嘘でしょうと叫ぶ。女性は土柱の上から鋼矢を連続して発射した。
「くっ! どうしたら勝てるの!?」
「絶対に当たらないで!」
美桜と琴葉が長剣と短剣で防いでいく。その様子を見ていた伊織は、どうしたらいいんだと考えていた。
「魔法が使えない俺に何が出来るんだ……そうか……これを使えば!」
伊織は持っている長剣を見つめると、戦場に飛び出た。
「俺を忘れるなよ!」
伊織は姿を現すと、勢いよく駆け出した。女性はまだ一人いたのかと溜息をつくと、伊織に向けて鋼矢と放つと、伊織は前転をしてギリギリ避けることが出来た。伊織は身体を起こすと、持っている剣を女性に向けて投げた。
「小賢しい真似を! そんな攻撃など効かないわ!」
そう女性は伊織の武器を弾くと、伊織に向けて再度鋼矢を放つ。伊織はやめてと言って逃げ回っていると、この瞬間だと叫んだ。伊織のその叫びを聞いた女性は、しまったと言い美桜たちの方向を向いた。するとそこに美桜の姿はなく、琴葉の姿もなかった。
「どこだ! どこにいるの!?」
女性が周囲を見渡すも姿が見えないことに苛立っていた。
「どこよ! どこにいるの!」
「ここよ!」
女性は声がした方向を向くと、そこには土柱に張り付いて上ってきていた美桜の姿であった。
「そんなところを上ってきて!」
「仲間との連携の勝利よ!」
美桜はそう叫びながら、土柱を上り切って女性の腹部を殴った。そして続けて氷魔法を発動させた。
「氷牢!」
美桜がそう魔法を叫ぶと、女性の胸まで氷で覆われてしまった。
「この魔法はそう簡単に破れないでしょ! どうよ!」
美桜が女性を氷で覆っていると、周囲にいる部下と思われる男女数十名がお頭と叫んでいた。
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