050 超純愛物語
…――今日は古き良き友との同窓会。
云十年前に同じ学び舎を卒業したクラスメートと久しぶりに会う。
もちろん初恋の彼女も出席している。
そして、
近くのそこの席に可愛く座っている。
相変わらず愛らしい。
学生時代、彼女を想い続けた。好きでたまらなかった。しかし当時の僕は純情すぎて、結局、想いを告げる事なく卒業してしまった。卒業式のあの日、自分の想いを噛み締め、告げられなかった事を悔やんだ。こっそりと一人で涙をこぼした。
だからこそ、だ……。
だからこそ、今この場で初恋の彼女に想いを告げる。
そう心に決めて、決死の思いで、この会場へと足を運んだわけだ。
もちろん僕らは大人になり、歳をとり、大切なパートナーと人生を共に歩いている。無論、彼女とて例外ではあるまい。しかしだ。しかし僕は独り身。彼女を想い続けた、ずっとずっと。だから、彼女が独身であるならば想いを遂げたいと思う。
いや、独身であろうとなかろうと告白だけはしたい。
あの涙をこぼした日を取り戻したい。
自分の不甲斐なさを払拭したいのだ。
……さあ、行くぞッ!
「マコちゃん、愛してる。今でもずっと。もし良かったら僕と付き合って欲しい!」
と言ったつもりであったが……、現実はこうなった。
「マコしゃん、フガガフーガのフーガ」
気張りすぎて、入れ歯が外れて落ちてしまったのだ。
せっかくの場面でな。
「ああ。シンジしゃん、ひしゃしぶりだのう。というか、なんか言ったかいのう?」
一方、愛しの彼女は耳が遠くなってしまったようだ。
僕らは白寿。つまり、100歳、100歳なわけだ。
どうやら、互いに恋愛をするには歳をとりすぎてしまったようだ。
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