第49話 索敵

 さて、ネコさんにいろいろ検討してもらっている間、俺が惰眠を貪って何もしない訳にはいかないだろう。例えば、乱高下した相場の回復(まだまだ、稼がせてもらわなければならないから市場の警戒感をできるだけ早く解消する必要があるな。)を図る方策の立案、実行とか。

 推進装置の改良版についてある程度設計を進めておく必要もある。それと他にも確認することもあるしな。


「アンドロマリウスよ、出て来い!」


 俺の左腕に装着した腕輪に付属する真鍮の壺型のアクセサリーからピンクと白の二色の煙が湧きだすと人の形に変え、白い服を着て右手に蛇を巻き付けた綺麗な女性が立っていた。


「ご主人様、お呼びにより参りました」

「おう、アンドロマリウス。傷の方はどうだ、元気そうには見えるが?」

「くっ、あの闘いの折には騙されて心に深い傷を負いました。ご主人様には責任を取っていただかねばなりませぬ」

「ふーん、却下だ。そんなことより、お前の能力について試させてもらうぞ」

「試闘とはいえ、更にいえばだまし討ちに合ったとしても負けは負け。敗者は勝者に従うのみ、夜伽の相手とて立派に勤めあげてこそあの方の、下僕一号様の使い魔というもの。まあ、時間はたっぷりとありましょうほどにお好きになさってください」


 アンドロマリウスは若干頬を引き攣らせ、いらだった表情で俺を睨みつけて来る。

 な、なんなんだ主人がそうなら下僕も怒りんぼか?人の話くらい聞けよなあ。


「ふん、抱いて欲しいのなら抱いてやらぬでもないが。俺は今、力を見せろと言ったのだ。早とちりもいい加減にして欲しいものだな」

「うっ。・・・・・・」


「セーレ、プレートは指定の場所に置いてきたのだろうな?」

「はい、魔人使いの荒いお方。おう、ご指示通りに致しましたぞ。魔人をも使い潰すお方」


 美麗な双子の成年、いや双子の魔人が真鍮の壺から上半身だけのぞかせて命令の完遂を報告する。


「ご苦労。アンドロマリウス、お前の力を見せて貰うぞ。見ろ、ここにある金貨をある場所に隠した。その場所がわかるか?」

「ふん、そんなことですかご主人様?他愛の無い、しばしお待ちを」


「ふむ、なるほど。見つけました、北の方角、アイドコ大陸の北限の山頂に一つ。南東の方角、カオス大陸の巨大な湖の底に一つ。南西の方角、ユスキュー大陸の遺跡の中に一つ。南の方角、ナッキオ群島の南端の島に一つ。

 いえ、これは動いています。この遅い動きは多分船ですね、南端の島からさらに南にゆっくりと動いている船に一つ。全部で四枚ですね、ご主人様」

「ほう、見事だアンドロマリウス。これならば、宇宙船の索敵は任せられるな。ご苦労だった、休んでおれ」

「はい、いつでもお呼びくだされば参上致します。ご主人様」


 アンドロマリウスは、一礼すると煙と化して左腕の真鍮の壺に収まった。

 あとは、懸案事項だな。あの女に連絡だ。


「ハイ、竜。ええ、順調ね。ビーストコイン(BST)も暴落前にほぼピークで売り抜けているし。ええ、手はず通りイーチャリアム(ECH)の買い集めもやってるわ。

 え?ヨーロッパの小国に融資するの?でも、あそこは経済破綻寸前よ。ああ、ダミー会社を使って、火種にするのね。もともと、火の無い所に煙は立たないし。マッチポンプね、あなた相当恨まれることになるわよ?」

「ふっ、何を今さら。俺は既にこっちの人間だからな、魂も銭の女神に売約済みだよ」

「そうね、じゃあ。私が買い戻すのはどう?」

「なら、とびっきり高く買ってくれよ。俺は兆利人だからさ」

「そうね。そうするわ、きっと。じゃあ、また」


 うっ、うう。

 スカーレットは、スマートフォンをソファーに叩きつけた。

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