第4話 初商い
俺は、森から抜けてとりあえずここの住人に逢うため道なりに歩いていた。
腹が空いたので、木になっている小ぶりなリンゴみたいな物をもいで食べたら酷く酸っぱかった。
「しかし、一人だと退屈だな。こんな時はネコでも
がさっ、黒い物が目の前に落ちてきた。猫みたいだな。うん?まさか、ネコなのか?
「にやー、呼んだかにゃ?ご主人」
「わっ!お前、ネコか?なんで、しゃべっているんだ?」
「ご主人が呼んだから来たにゃ。言葉がどうとかは知らないにゃ」
うーん、そう言えば言葉の壁を外すとか言ってたなぁ、エンドロ何某が?
「まあ、いいか。じゃあ、ネコ。こっちの世界でもまたよろしくな」
「まあ、しょうがないなあ。気が向いたら付き合ってやるにゃ」
なんだかなあ、ファーストコンタクトがネコじゃあ締まらないな。
そうこうしていると、大きな洋館が見えてきた。よし、あそこに行けばこの世界のことが何かわかるぞ。
俺は大きな門を潜り、ドアノッカーを叩いた。ゴン、ゴン、夕闇が迫るなかやけに大きな音がした。
「あのー、誰かいませんか?」
「ふむ、銀色の服とはこちらの世界には珍しい。どなたかな?」
しばらくするとドアが開き、黒衣の男が現れた。
「初めまして、乱導 竜と申します。道に迷ってしまいまして、ここは何という場所ですか?」
「客人が来られるとは、珍しい。
「あ、ありがとうございます。こいつは、ネコと言います」
「ほう、よく見るとシャム猫か、ほとんど黒猫だが、面白い」
「生憎、下僕どもは皆出払っていてな。ネコ、客人を客間に案内せい」
「にゃー、マスタは猫遣いが荒い。初めましてネコです。って、驚かないんですね?猫がしゃべっているのに。ふーむ、このお方は ・・・・・・ こちらの方は何か特別ですねマスタ?」
「ネコ!余計な詮索はせんでよい。それよりも、早く案内せい!」
「わかりましたよ、マスタ。では、こちらへ」
「あ、ありがとう。俺は、猫の言葉が判るから別に驚かないんだが、君は人語を話せるのか?」
「ええ、私はホームコンピュータの端末、人工知能ですから。ネコと申します。本当はちゃんとした名前がありますが、マスタが呼んでくれません」
なぜか、この館のシャム猫が少し悲しそうにしていた。
「あ、俺は、乱導 竜。こいつも、ネコと言うんだ。君と一緒だね」
「ネコです、よろしくにゃ」
「はい、私もネコです。よろしく」
「では、この部屋をご自由にお使いください。食事の用意が出来ましたらお呼びしますので」
「ありがとう、ネコさん」
俺は、館の主、少女?の三人で夕食の席に着いていた。
「そうか、なかなか興味深い。もっと君の世界のことを教えてくれないかね、竜君」
「そうですね、では取引しませんか?」
「ふふ、本当に面白い子だね。だいたい、わかったがどういう取引だい?」
「俺は、この世界で大儲けできる方法を教える。代わりにあなたの錬金術の力を借りたい。悪い話では無いと思うが、どうですか?」
漆黒のマントを着た男は、笑った。
「は、はは。なるほど、大金の代わりに君の星に帰るための乗り物を作れと言うんだね。本当に面白い、お前はどう思う、この話を」
「マスターが、これほど愉快そうにしているのを初めて見ました。それはもう、お客様に嫉妬するぐらい!」
何故か、流れる水流のような水色のドレスを着た少女は、グニャグニャなフォークとナイフを握りしめて答えた。
「では、竜君、取引成立だ。契約書はいるかね?」
「いや、あなたは例え口約束でも、真の契約ができる方だ。この杯で乾杯しましょう、この世界での俺の初
「「「乾杯」」」
ここに、俺の兆利人としての最初の戦場が置かれることとなった。
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