第3話 ツンデレVSヤンデレ

「先輩ーー!あなたの瑠美が会いに来ましたよー!」


なんて悪いタイミングに来るんだ、あいつは。

まるで今日の朝みたいじゃないか。

デジャブ。


後輩なんていう肉食動物が現れるともちろん彼女が反応する。


「は?あんた誰よ?てかなんで政宗にこんな馴れ馴れしいわけ?」

「あなたこそ誰ですか?まさか先輩にちょっかいかけたりしてるんですか?してませんよね?」


ほーら、もう。

絶対こうなるから嫌だったんだ。

こうなるのが嫌でこの2人をどれだけ会わせないように頑張ってきたか。

時間をずらし、最大限の注意まで払っていたのに全てが水の泡になってしまった・・・。

はぁ・・・。


「私は政宗のお・さ・な・な・じ・みの桜島 鏡華。で?あんたは?」

「私は先輩のこ・う・は・いの斉藤 瑠美ですが何か問題ありますか?」


バチバチバチッ


睨み合う2人の目線に火花がちったように見えた。

そして互いの額に青筋が寄った直後、

言い争いを始める。


「大体なんであんたみたいな年下が───」

「年増はどっか行ってくださいよ───」


2人で教室内なんてお構い無しにギャーギャー騒ぎ始める。

そんな喧騒を横目に俺は黙々と弁当を減らしていく。


(ちょっと茹ですぎちゃったかな?)


こういううるさい時、例えば両親のケンカや、大きな声を出すマナーを守らない客がいる時などは基本鼓膜をシャットアウトし、視界については周りのことを目の中に入れないようにしている。


俺はよくクールだとか大人っぽいとか言われるが実はただただ面倒くさがりなだけだ。

面倒事には基本、介入なんて一切しないし、委員会なんて言語道断。美化委員とかにしかならない。ひどい時はしゃべるのがめんどくさいと感じる時すらある。

そういう時は大体、読書をすることにしている。

読書はいい。

現実から無条件に逃げられるからだ。

人間時には逃げることだって必要なのだ。


「あんたね!後輩だからって───」

「あなたこそ、幼馴染だからって───」

「おい、2人とも。いい加減にしろ。うるさい。騒ぎたいなら教室の外でやれ。みんな困ってる」


俺の鼓膜のシャットアウトフィルターを突き破られたのでさすがにここら辺で止めておく。

ケンカをすることは悪いことではないと思うが、時と場所を考えてもらわないと困る。

ちなみにみんな困ってるは建前だ。

でも、実際困ってるっぽいから結果オーライとしよう。


「「は、はい。ごめんなさい・・・」」

「分かったならいいんだ。早くご飯食べよう?昼休み終わるぞ?」

「「う、うん」」


その後、2人は静かーに、でもものすごいスピードで弁当の中身を空にしていく。

まるで餌を口の中に詰め込むハムスターみたいだ。

少し可愛いと思ってしまったことは内緒だ。


弁当を完食した瑠美はいそいそと自分の教室に戻っていった。


鏡華は授業になっても少し元気がないと言うか、しょぼんってしてる。

少し言いすぎたかな?

俺は黒板に文字を書いている先生の目を盗み、鏡華に小声で話しかける。


「鏡華、そのすまん。少し言いすぎた」

「ううん。私が悪かったから謝らないで」

「そ、そうか。元気だせよ」

「うん。大丈夫」


その会話のあとは徐々に鏡華は元気を取り戻していったように見える。


帰りのホームルームが終わり、俺は生徒会室に向かうことにした。俺は1年生の頃から生徒会に入っている。

俺が生徒会に勧誘されたことを知ると鏡華は『入るつもりはない』と言っていたテニス部に入ることにした。

気づけば県の上位選手だ。

全国大会にだって出たことがあるまさに猛者だ。


「鏡華部活頑張れよ」

「あんたに言われなくても頑張ってるわよ。あんたも生徒会頑張りなさいよ」


そう言って走り去っていく鏡華の頬は少し赤かった。






──────釜谷 拓斗かまたに たくとside──────


くっそ今日も昼ごはん断られた。

もぉ。何回目なんだか・・・。

俺はサッカー部の部室に行く間に考える。


少しだけでもいいから話をしてみたいんだけどなあいつと


────井原 政宗と


あいつは自分のことを低く見すぎている節がある。

だからか知らないが自分はモテなくても当然の様な顔をしている。

だけど、現実は違う。


黒くサラサラとした髪。

ニキビなどが1つもないツヤのある肌。

紅く、色っぽい唇。

そして右目の目元にある涙ボクロ。



こんな最強なパーツを持っていてモテないはずがない。

さらには口数は少ないがその容姿、全てを達観しているかのような雰囲気で「クール」「大人っぽい」

と言われ、頭も学年トップレベルだ。モテないはずがない。

実際学園で三本指に入るレベルでモテている。

俺なんかよりずっと女子の気をひいている。


女子は口々に彼のことをこう呼ぶ。


『頭脳派ミステリアス系イケメン』

と。


俺もそう思う。

俺のいるクラスのグループでも政宗に好意を抱いている友達がいる。

でも、その女子から聞いた話だと政宗は高校に入って1回も告白されたことがないらしい。


『え?なんで?』

『だって鏡華ちゃんがいるもん・・・』


そうなのだ。いっつも政宗の近くにいて、かつ巨大な存在感を放つ女子。


桜島 鏡華の存在だ。

鏡華がいるため政宗にアプローチができないとの事。

確かに桜島さんも学年でトップレベルの容姿に、抜群のスタイルを持ち合わせてるため、その他の女子が近づけないらしい。

きっと桜島さんも政宗のことが好きなのだろう。


でも、俺は自分の友達の恋を応援したい。

自分の身近な人に幸せになってもらいたい。


だから、少しでも桜島さんの警戒を削げればと思ったんだが・・・。


「そううまくいかないなぁ」


どうしたものか。

桜島さんは思ってた以上に鉄壁の防御だった。

合計で7回近く誘っているんだが、ことごとく打ち砕かれる。


それに今日はさらに危うい存在が飛び出てきた。


それは政宗の後輩といった黒髪ショートカットの女子だ。

名前は覚えていないが彼女もかなり可愛かった。

これではいつ政宗が陥落するか分からない。


それだけじゃない。

政宗は自分がモテていないと思っているせいか無自覚に女子が惚れるような行動をよくとってしまう。

まさにモテるの権化と言っても過言ではない。

もしかしたら他にも政宗に好意を抱いてる女子がいるかもしれない。

そうなるとモタモタもしていられない。

どうしかして、政宗にあいつを近づけさせてやらないと!!


「はぁ。まずは早く政宗と友達にならないとなぁ」


俺の部室へ向かう足は少し重たかった。






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読んでくれてありがとうございました!

テスト勉強のため投稿遅れていくと思いますが御容赦ください!m(_ _)m

【幼馴染は「好き」って言いたい】

という作品も連載しているのでよければ是非!



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