第22話 叫び
「魔女アレンね?」
黒髪の少女はそういってアレン先生に微笑みかける。
「よく知っておるな。わしのファンか?」
「猫の姿の魔法使いでそれも凄腕なのなんて、数えるくらいしかいないもの。お会いできて光栄だね。でも用があるのはそこの陰にいる女の子だけ。悪いけどどいてくれないかな?」
「断る。」
アレン先生は食い気味に答えた。
「そう…じゃあエイダちゃんはどうかな?私達とこない?あなたがくれば私達は引くよ。ここにいるみんな助かる事になる。」
「私が…行けば…?」
エイダは揺らぐこの状況は確かに自分のせいで起こっている。最初は安全だからとこの飛空挺の旅を選んだが敵の方が一枚上手だった。まさか危険に晒される事になるとは誰もが思っても見なかったろう。
「エイダ耳を貸すな!わしとドンキホーテの責任じゃこれは!」
アレン先生は氷の魔法を詠唱し始める。すると宙に浮いた氷柱が無数に現れ、先端を黒髪の少女へと向けた。
「ダメかー交渉決裂って感じかな?」
「当たり前じゃ!ボケ!アホ!」
「ふふ、そんなこと言うんだ。」
笑顔を崩さないまま、少女は兵士を差し向ける。生気のない顔した兵士たちがアレン先生を囲み襲おうとするが、その手はアレン先生に到達する前に氷柱に貫かれ氷と化した。
「フンその程度の死霊術ではわしを倒すことなどできんぞ。」
「そう……ならしょうがないね。カミルどうやらダメみたい。あれをやってくれる?」
空の中を軍事用飛空挺の砲撃を龍とともにかいくぐりながらカミルは返事をする。
「了解よ!リーダー!」
そう言うとカミルは何かの詠唱を始める。恐ろしく、禍々しい音がカミルの口から漏れる。カミルは詠唱が終わると最後にこう言った。
「邪神降誕」
龍の背が何かに食いちぎられる、不可視の何かに。龍は苦しみ悶えつつも不可視の何かに捕まれ動くことが出来ずそのまま食われ続けた。軍事用飛空挺の乗組員たちは、その異常な事態に思わず砲撃を止めてしまった。龍は血飛沫をあげながら不可視の何かに食われていく。龍が食われていくと同時に不可視の何かは徐々に可視化されていく。それはクラゲの様な下半身持つ龍と同じ様な大きさの巨大な女の姿をしていた。顔は歯茎がむき出しになっており、肌は下半身のクラゲと同じく紫色に染まっていた。その巨大なクラゲの女が龍の喉笛に噛み付くと龍は絶命し光の粒子となって消え去ってしまった。いつのまにかその巨大な女の肩にカミルは乗り囁く。
「歌いなさい、ルジェルーノ。」
邪神ルジェルーノは叫ぶ、まるで痛みを訴えるかの様に叫ぶ。その叫びは軍事用飛空挺と観光用飛空挺を丸々包み込んだ。
飛空挺内、アレン先生はいち早く異常に気がつく
「エイダ!」
とっさにアレン先生は全てを遮断する結界を張りエイダと自身を包み込みルジェルーノの叫びを防いだ。
しかし防げたのはアレン先生とエイダだけ。他の乗客たちはもろに叫びを聞いてしまった。
すると叫びを聞いた乗客たちは途端に金切り声をあげる。人間が発する中で1番醜悪な音の金切り声を。
息を荒くした乗客たちは互いに傷つけあい、罵倒をし始める。その暴力の矛先はエイダたちにも向かう。大量の乗客が、エイダ達襲いかかった。アレン先生は魔法で撃退しようとも思ったが相手は一般人死んでしまうかもしらない、と言う思いから対応が一瞬遅れてしまう。そのせいで、エイダとともに人の波に飲まれてしまった。黒髪の少女はその隙を待っていた。
その、一瞬の隙を突き黒髪の少女はエイダを奪う。
「しまったエイダ!」
「アレン先生!」
エイダは死人に抱えられ、最初に爆撃され今は魔法の障壁によって外と中を遮断されているフロアに来た。
なぜか軍事用飛空挺が外で待っている。軍事用飛空挺は砲撃で魔法の障壁を割る。黒髪の少女は死人とエイダを連れ軍事用飛空挺のデッキに飛び乗った。
(なぜ軍事用飛空挺が敵の為に?!)
エイダは乗り込んだあとすぐに気がついた。エイダを中に入れさせようと飛空挺内から軍人が出てくる。
(この人たち全員…)
死んでいた。
この観光用飛空挺を守る飛行艇のうち一隻はこのネクロマンサーたちによって完全に支配されていたのだ。
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