第20話 悪魔の腕
飛空挺デッキ上で2人の男がにらみ合う。ドンキホーテとジャンと呼ばれた青年は次の一手を繰り出すべく様子を探っていた。その2人の様子をみて少女は口を開く。
「ここは任せるね、ジャン私はお迎えに行ってくる。」
「あいよ、リーダー。」
そういうとリーダーと呼ばれた少女はデッキの床を水に沈むようにすり抜けていく。
(壁抜けの魔法か?させるか!)
ドンキホーテは一瞬で、空間を転移しリーダーと呼ばれる少女に向かい、素手で捕まえようとする。しかしそうする前にジャンの大鎌がドンキホーテを襲った。
「おわっ!やっぱりお前をやらないとダメってことか!」
「リーダーをいきなりやらせるわけにはいかないんでね。」
すると真上から声が響き渡る。
「ちょっと!!ジャンなにやってんのよ!リーダが怪我したらどうすんのよ!」
忘れていた、龍の背に乗っていたのは3人、もう1人は降りてきていない。
「ヘヘッ、わかってるよ俺はこいつの相手をする!カミル!軍事用の飛空挺を頼む!」
カミルと呼ばれた男は頷くと飛空挺から龍とともに離れ近づきつつあった軍事用の飛空挺の方へと向かった。
(あいつは軍事用飛空挺の足止め要員か。ならば)
ならば今、注意すべきは目の前の男とあの少女だけだ。ドンキホーテは剣を構え、左腕に巻いてある魔法の布を盾に変形させる。
お互いが見つめ合い視線が交わる。そして両者とも目にも留まらぬ速さで激突した。剣と鎌が交じり合い、デッキの上で火花が踊る。両者とも互角だ。
ただ斬撃だけでは埒があかないと、ドンキホーテは剣に力を集中させ振るい三日月上の光線を発射する。ジャンはそれをまともに喰らい吹き飛ばされた。
「やるねアンタ、光線の技まで持ってるのか。ただの魔法剣士かと思ったが、こりゃ質のいい戦士だな。」
ジャンは体を起き上がらせると後ずさり、精神を集中させると鎌に赤黒い光が集まっていく。そしてジャンは思い切り鎌を振りかぶった。鎌は虚空を切るしかし虚空を切った瞬間、赤黒い三日月状の光線が放たれた。
ドンキホーテは光線が放たれるの予見し自らも、光線を放つ、2つの三日月が重なり合い、交じり、大爆発を起こす。煙が巻き上がり視界が塞がれる。その煙の中からジャンが疾風の如く切りかかってくる。ドンキホーテは咄嗟に盾で受け、そのまま蹴りをジャンに食らわせた。しかし蹴りはジャンの胴体には届かず左手で受け止められてしまった。
ドンキホーテは咄嗟に受け止められていない方の足で再びジャンを蹴り上げ、かつ蹴った衝撃を利用し距離とった。
「ヘヘッ、楽しいねお兄さん。」
ジャンは不気味に笑う
「そりゃどうも」
ドンキホーテは不敵に笑った。
「だがこれで終わりだぜ魂の匂いを覚えさせてもらった。」
そういうとジャンの左手は赤い水晶のような、人体の腕の部分のあ骨が無数にまとわりかれる。それは、道具や何かではない純粋にジャンの体から発せられているエネルギーが具現化されたものだとドンキホーテは感じた。
「こっちにきな!」
そうジャンはいうと虚空にまるで見えない布があるかのように左手を伸ばし掴んだ。そしてその布を引っ張るように左手を手繰り寄せる。するとドンキホーテの体はまるで見ない何かに引っ張られるようにジャンの元へと引き寄せられる。
ジャンはドンキホーテに大鎌を振り下ろす。左手のみで。ドンキホーテは盾で防ぐが明らかに今までの一撃とは威力が桁違いだった。防ぐのが精一杯、ドンキホーテはすぐさま空間を転移し距離を取る。
「アビリティ使いか!」
「ご名答。」
「しかも悪魔の腕だな、お前の腕」
「詳しいねお兄さん。相当熟練者っぽいな。ヘヘッ、若いのにすげーな。」
「ハッ、ありがとうよ。」
減らず口を叩きながらドンキホーテは打開策を探していた。
優れた戦士の中には闘気と呼ばれる鍛え抜かれた肉体から発せられるエネルギーを使い戦うものがいる、それは光線になったりはたまた敵の攻撃を防御する防御壁になったりと様々な、用途で使われる。特にさらに闘気の力が強いものはその身に進化ともいうべき変化が起きる。特殊な能力に目覚めるのだ。例えば千里を見渡せる千里眼。全ての音を見逃さない地獄耳など、それら総じてアビリティと呼ばれアビリティ持ちの戦士は特に貴重である。
悪魔の腕もその数あるアビリティの中の1つである。触れた敵の魂を読み取り、掴んで体を引き寄せたり、魂を検知して必中の攻撃を繰り出しとかなり厄介なアビリティの1つだ、しかも左手の筋力が異常に上がるというオマケも付いている。
しかしドンキホーテは引くわけにはいかない一見無敵そうなアビリティでも実際に相対し戦ってみると弱点があることに気づく。
(まず体の引き寄せは動作が必要だ、あの手繰り寄せるような動作が必要だ、相手が迂闊に引き寄せればカウンターをこっちから狙える。)
ドンキホーテが、そう様子を伺っているとジャンは痺れを切らしたのか再び手繰り寄せる動作をする。
ドンキホーテはそれを見逃さず空間を転移した。
完全なる背後ドンキホーテは剣を振るうしかし、剣がジャンの腕に届くことはなかった。ジャンは背後からの攻撃を一見することなく左手の鎌だけで防いでいた。
「魂の匂いはもう覚えたんたんだよ!」
ジャンはそのまま鎌で剣を払いのける。
ドンキホーテは、距離を取らざるを得なかった。
「俺を殺したいなら真っ向勝負するしかないぜ!お兄さん!」
「さて、そいつはどうかな。」
ドンキホーテは指を鳴らす。すると地面から電気が流れジャンを襲った,
「があ!これは!」
ジャンは左手が触れた時点でこちらが勝ったと慢心をしてしまった。その結果あるものが落ちていたことに気づかなかったのだ
「雷の魔法が籠もったルーンの石さ。」
そしてドンキホーテの剣はジャンの左腕を刈り取った。
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