第7話
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
1-6.大東帝国の思惑(4)
「俺がやり過ぎた?」
「私の大好きなメグル君は、運動以外は何でも出来る超天才で、偉い学者をとんちで凹ませる痛快な奴なんだけど」
「まあそうだな」
「そこは謙遜しとけ。そういう秀逸(チート)なとこがだんだん大東の宮廷にバレてる」
「だから早くチョッキンしろと?」
「いや大東の奴らは知ってる。去勢で決して剛毅な魂を失わない宦官がいる事を」
確かに俺の学んだ大東史にも、稀に宦官出身で大軍を率い蛮族を撃ち破った大将軍や、未知の大海に乗り出して地の果ての国まで遠征した宦官提督が居た。俺が最高の知識と術を使って大東を脅かす大王になる事に、去勢は余り関係ない。
加えて大東は異民族を恐れている。三百年前、ジョウザよりさらに北方の騎馬民族のアンゴルモア大王が、瞬く間に大東を含むこのレムリア大陸の殆どを征服してしまった事を、大東人は忘れていない。
「なんかヨウコがこんなに歴史に詳しいとは思わなかったぞ。ちょっと見直した」
「まあこの辺はおばあさまの受け売りだけどね」
へえヨウコにそんな博識なお祖母様が…。休暇で妖狐の里に戻った時に聞いたのかな?
「だから大東からすれば、チョッキンは意味ないと」
「いやチョッキンはする」
「するのか」
「首をね」
なるほど。俺が皇帝でもそれが安全だと思うわな。
ただ75代続いたボンの中で、表向き暗殺された者はいない。
「毒で病死に見せかける。或いは事故。」
「ボンの自殺は不自然だからどちらかよね(ボンは不殺の戒に縛られるので、自分を殺せない)。ただこれにはギンランが難色を示している」
「奴は大東人だろ?」
「あいつはクソ真面目な教条主義者だから、不殺の戒には逆らえない。しかも大東では醍醐教徒は差別を受ける事が多いらしいわ」
「ずぶずぶの帝国側と言う訳でも無いのか…。そしてタンジンは俺に死んで欲しくない」
普段滅茶苦茶に仲が悪い2人が手を組んだのはそこか。
「そうね。タンジンはあなたが死ぬくらいなら逃げて欲しいと思うでしょうね」
「うーん。どうしたら…」
「メグル程の天才にいい案はないの?」
「そんな、座禅組んで木魚が鳴ってチーンみたいには出てこないよ」
「そんな事ないわ。メグルには出来る事がある。まず味方を信頼させるには自分を全て晒け出さなきゃ」
「味方?」
「今の所メグルの味方は私だけ。なのに」
「なのに?」
「あなた、私にも黙ってる事、あるでしょ?」
「な、 何を…」
「あんた、本当は前世があるわよね?」
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