第91話 お揃いのお土産

時間はギリギリであったが、観覧車から降りて俺たちはお土産を見ていた。そこまで品数は多くないが、それでも思い出くらいは形に残したいしね。


「あっくんあっくん!キャンディーちゃんがいっぱいだよ!」


嬉しそうにはしゃぐ琥珀。先程のバブみが嘘のように可愛いのだが、こうして琥珀は定期的に俺を心から惚れさせるので魅力的なのだ。


お土産屋さんには、この遊園地のマスコットキャラクターのオスのカワウソのベッキーくんとメスのカワウソのキャンディーちゃんのグッズがいっぱいあった。


……というか、ベッキーくんを見てると背筋がゾクッとなるのは何でだろ?尻を軽く撫でられたからきっと変な誤解が生じてるのだろう。誤解だと思わないと精神が持ちそうにないのでそうしておく。


「どれにしようか」

「うーん……あ、これ可愛い!」


琥珀が手に取ったのは、キャンディーちゃんのぬいぐるみだった。


「じゃあ、それにしようか」

「いいの?」

「勿論だよ」


丁度、俺も候補を見つけたので密かにそれとキャンディーちゃんのぬいぐるみを持ってレジに向かう。琥珀は俺がお金を出すのを申し訳なさそうに見ていたが……この程度は大した出費ではないので気にせず微笑んでおく。


袋を別にして貰ってかや、琥珀は嬉しそうにキャンディーちゃんのぬいぐるみの入った袋を抱きしめていた。


「ありがとう、あっくん」


本当にお礼を言いたいのは俺の方だが、きっとそれだと向こうも同じことを言うだろう。だから、俺は早速買ったものの片割れを琥珀に渡していた。


「琥珀、これあげる」

「え……わぁ!可愛いキーホルダー」

「俺のと対になってるんだ」


琥珀にあげたのはキャンディーちゃんのキーホルダー。俺は少しむず痒いけどベッキーくんのキーホルダー。この2つはセットになっており、くっ付けることが出来るのだ。


「でも、いいの?」

「いいんだよ。今日の記念にお揃いのものを持ちたくてさ」

「お揃い……うん!ありがとう、あっくん」


嬉しそうに微笑む琥珀。あぁ……もう、なんか琥珀にならいくら貢いでもいい気がしてくる。まあ、それをやると琥珀は物凄く恐縮して遠慮するだろうから、そこがまた可愛んだけどさ。


こうして慎ましい琥珀だからこそ、どんなプレゼントでも喜んでくれるので本当に嬉しいものだ。その優しさに何度も救われてるので、俺だって少しは琥珀のためになることをしたい。エゴかもしれないけど、琥珀のために出来ることはなんでもしたいのだ。


そんな感じで初めての遊園地デート(親同伴)は楽しく終わるのだった。今度は2人きりで来たいものだ。


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