第297話 ずっと、見ていた
自分でも本当にそれが正しい選択なのか、かなり悩んだが……俺はその場で待つことにした。
外川のやつは……一体何を考えているのだろう? なんでわざわざ俺一人でここに待つ必要がある?
意味がわからなかったが……かといって、無視するわけにはいかなかった。
俺はすでに端井と前野を宿に帰してしまっている。一人で帰るわけにもいかない。
仕方なく俺は待っていた。
「だ~れだ?」
と、いきなり、俺の目が何かに塞がれる。俺はいきなりのことに意味がわからず、その瞬間は混乱してしまったが……落ち着いてみると呆れてしまう。
「……外川。お前、何やっている?」
「え~? 何その呼び方~? 前野さんは下の名前で呼ぶのに、僕のことは名字で呼ぶの~?」
……なんでか知らないが、なぜそのことを知っているのか。俺はそう言いたかったが、落ち着きを維持しようとする。
「……お前、一体何をしたいんだ?」
「何って……湊君と二人でお話したかっただけだよ?」
「……馴れ馴れしく呼ぶな」
クスクスと笑う外川。相変わらず視界が塞がれているので外川がどんな表情をしているのかはわからないが……。
「そんな~、照れなくていいじゃ~ん。僕と君の仲なんだしさ~」
「……お前とは、この修学旅行で初めて知り合ったようなものだろ」
「違う」
と、即座に視界が開かれた。そして、背後に人の気配を感じる。俺は振り返る。
「……それは違うよ。湊君」
そこには、いつものようなヘラヘラした表情でなく、真剣な表情の外川が立っていた。
「……何が、どう違うんだ?」
俺がそう言うと外川は、先程まで前野が座っていたベンチに座る。すでに夕日が少し沈みかかっている。
「……おい。そろそろ宿に戻らないと――」
「言ったよね? 僕は、ずっと君を見ていたって」
俺が先を続けようとしても、外川はそれを遮ってそう言った。そして、隣に座れと目で合図してくる。
……なぜか、反対できない威圧感があった。俺は少し迷ったが……仕方なく、外川の隣に腰掛けることにしたのだった。
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