第250話 彼女の選択
「……帰ります」
そう言ったのは、端井だった。
俺は何も言うことができずに端井の方を見る。
端井は何か言いたそうな顔だったが……何も言わずにそのまま教室を出ていってしまった。
「愛留ちゃんの選択は、それでいいの?」
次の前野がそう言う。前野の表情は……とても悲しそうだった。
その顔も今まで見たことのないくらいに悲しそうな顔で……さすがの俺も心配になってしまった。
「それでいいって……どういう意味?」
横山はニヤニヤ笑ったままで前野に聞き返す。前野は悲しそうなままで、黙って横山の事を見ていた。
「……そう。わかった。そういうことなら……もう聞かない」
「あー、後さ。愛留ちゃんって呼ぶのやめてくれないかな? ウチら、そこまで仲良くないでしょ?」
横山は何のことはないという顔でそう言うが、前野は心底衝撃を受けた表情だった。
「……うん。ごめん」
「別に謝らなくていいって~。絶交するとか、そういうことじゃないんだから~。ね、前野さん」
前野は今一度横山の事を見たが……そのまま何も言わずに俯いてしまった。
「……ごめん。後田君、私も……帰るね」
「……ちょっと……待て、前野――」
俺がそう言おうとした矢先にいきなり俺は肩を掴まれる。
「ヘタレく~ん、まさか、ウチを置いて帰ろうとしているわけじゃないよね~?」
俺は振り返る。横山が邪悪な笑みを浮かべて俺のことを見ていた。
……いや、たしかにここで前野を追いかけるよりもやることがある。
「……横山。これは……一体どういうつもりなんだ?」
それは横山の真意を確かめることであった。
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