第197話 変
「……で、なんで俺と一緒に帰るんだ?」
俺は少し先を行く端井に訊ねる。端井は立ち止まった。
「……お前、なんか少し変じゃないか?」
「へ……変、ですか?」
端井は驚いたように俺の方を見る。どうやら、自覚がなかったらしい。
「……いや、だって……なんか、前野とあまり喋らないようにしてないか?」
「なっ……そ、それは……私なんかが真奈美様と喋るなんて畏れ多いからで……」
「……やっぱり呼び方も変だぞ。お前、さっき前野のこと『前野さん』って呼んでたよな?」
俺がそう言うと端井は困ったように俺から視線をそらす。
「……何か理由があるのか?」
俺がそう言うと、端井は苦々しい顔で俺を見る。
「理由……ハハッ……そうですね。あるといえばありますね」
「……お前が変な態度をとらないといけない理由、まったく思いつかないんだが」
俺がそう言うと端井はなぜかジッと俺を見つめる。まるで俺を責めているかのような。
「やっぱり、私……アナタのこと、嫌いです」
そう言い捨てると端井はそのまま走っていってしまった。
「……なんなんだ。アイツは」
俺が呼び止める間もなく、端井の後ろ姿はどんどん小さくなる。
端井の行動が変な理由……なんで、アイツは俺のことを睨んでいたんだ?
「……あれ? もしかして――」
アイツが変な理由ってのは……俺なのだろうか?
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