第174話 呆れ
「……進展?」
思わず俺は今一度聞き返してしまった。端井は不機嫌そうな表情で俺のことを見る。
「無人島に何のために行ったんですか?」
「……何のためって……誘われたから行ったんだが?」
端井は今一度大きくため息をつく。どうやら、端井の望む回答を俺はできていないようである。
「あのですねぇ……私はてっきり、無人島から帰ってきたら、真奈美様とアナタがそういう関係になっていると思っていたんですよ?」
「……そういう関係って、どういう関係?」
「恋人関係に決まっているでしょ!」
またしても立ち上がって怒る端井。周囲の客が怪訝そうな顔で端井を見ている。
そして、先程と同じように、申し訳無さそうに端井は座り直した。
「……お前、なんか変だぞ?」
「変なのはアナタです……真奈美様もなんでこんな人のこと……」
「……なんか言ったか?」
「……言ってませんよ。アナタは……真奈美様のこと、好きじゃないんですか?」
そう言われて俺は答えに詰まる。端井になんでこんなことを聞かれなければいけないのかとは思うが……確かに俺は俺自身の気持ちがよくわからなかった。
「……わからない」
俺は正直にそう言った。端井はがっかりしたように肩を落とす。
「……そうですか。わかりました。まぁ、わかるまでどれくらい時間がかかるかわかりませんけど……とにかく、まだ何の進展もないってことですね」
そう言うと、端井は立ち上がり、去っていこうとする。
「……おい。まだ何も注文してないぞ」
「もういいです。何も進展させようとしないアナタに、興味はありませんし」
そのまま端井は俺に背を向けて去っていこうとする。
「……今度、一緒に夏祭りに行くと思うけど」
俺がボソリとつぶやくと、端井は急いで、席に戻ってきた。
「……どうして、早くそのことを言わないんですか……!」
そう言って、端井は今一度座り直した。
「……帰るんじゃないのか?」
「気が変わりました。アナタには……真奈美様との仲を無理矢理にでも進展させていただきます!」
なぜか憮然とした態度で、端井はそう言ったのであった。
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