第71話 心配
「ね、ねぇ……後田君」
昼休み、横山が俺に話しかけてきた。
「……なんだ?」
「えっと……前野さんのこと、聞いてたよね?」
そう言われて俺は思わず黙ってしまった。横山が不安そうに俺のことを見る。
「……あぁ。聞いてたよ」
「えっと……前野さんに……お見舞いに行かない?」
横山が言ってきたのは意外な発言だった。俺は思わず前野を見てしまう。
「……見舞い?」
「うん……行かない?」
そう言われて俺が思ったのは……行って良いのだろうかという気持ちだった。俺と前野は結局、険悪なままだ。その上で前野は入院してしまった。
でも、前野はなんで入院したのだろう? 同時に俺はとても心配になってきた。
「……行って良いのかな?」
俺は思わずそう言ってしまった。横山は目を丸くして俺のことを見る。
「行っていい……と思うけど?」
「……そうか。そうだよな」
「うん。というか、前野さんも待っていると思うけど……」
前野が待っている? 俺のことを?
「……そうかな?」
「うん! きっと待っているって!」
俺はなぜか変に納得してしまった。そして、俺自身の中で行かなければいけないという気持ちが強くなってきたのであった。
「じゃあ、先生に入院先聞いてくるね!」
横山は元気にそう言って教室を出ていった。俺としても、なんとなく安心できたのであった。
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