第56話 冗長
「……はぁ」
思わず窓を眺めながら俺はため息を付いてしまう。
横目でちらりと前野の髪の毛を見てしまう。前野はまるで石像のようにピクリとも動かない。
……そりゃあ、あっちから話しかけてくることはないだろうな。かといって、俺の方からも話しかけられるかと聞かれれば……難しい。
それから、今度は横山の方を見る。横山に関しては……学校に来てなかった。
まぁ……アイツギャルっぽいし、ズル休みすることもあるだろう。きっと、昨日のこととは関係ない……俺はそう思って考えないようにすることにした。
それから……その日一日は異様に長いように感じた。そもそも、前野や横山と話す時間なんて一日に数分だというのに……それが無いだけでこんなに冗長に思えるのは不思議だった。
そして、放課後になった。前野は……何も言わずに帰っていった。一瞬チラリと俺のことを見たような気がしたが……気のせいだろう。
俺も……帰ろう。そう思って席を立ち上がった時だった。
「おい」
いきなり声をかけられた。俺は声のした方を見る。知らないヤツだ……いや、顔だけは見たことがある。
横山と同じグループにいる男子だった。いつもグループの中心で横山に話している。
「ちょっと来てくれない?」
俺に声をかけてきた男子の後方ではニヤニヤとしながら同じく陽キャグループがニヤニヤとしながら俺の方を見ている。
……あぁ。これは不味い。鈍感な俺でも明確に理解できたのであった。
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