第18話 帝国民との遭遇

 俺達は大きな交差点に差し掛かった。


「右にオーガの群れがいるよ、6体だ!」

「左の道にもいる、8体だ!」


 左右のオーガ達が俺達の声に反応して、こちらをギロリと睨んだ。



「挟まれちゃったわ!」


「まだ距離が有るから慌てないで! ユウトとカトウさんは右のオーガに、リンちゃんとカミムラさんは俺と一緒に左のオーガに、トリプルアイスジャベリンで魔法攻撃をしよう!」


「「「「はぁあい」」」」



 オーガ達は俺達が子供に見える為だろうか、舐め切っている。


「グへへへへ」

「グエッ、グエッ、グエッ」


 と、涎を垂らしながら、ゆっくりと間を詰めてくる。



「よし行くよ、せ~の」


「「「【トリプルアイスジャベリン】!」」」

「ましまし!」

「ダクダク!」


 パリパリッ、ピッキィインッ! 

 ズガガガガガガァアアアアアンッ!



 太い氷の槍が、余すことなく全てのオーガ達の腹に突き刺さる。


 ドタドタドタッ! バタバタバタッ!


 と、声をあげる間も無く倒れてしまった。




「……!」


 次の瞬間、ソウタは歩いて来た道の方向に不意に気配を感じて、その者に一瞬で間を詰めて両手剣を振りかざしたが、切り裂くギリギリで剣を止めた。



「ふぅぅ……お兄ちゃん達は強いね。よかったら倒したオーガを1頭貰えないかな?」


 中肉中背で耳が少し尖ってる男がそこに立っていた。



「オーガを?」


「あぁ、腹が減ってるんだ。これ1頭で結構な量の食事ができるんだぜ」



「おじさん、オーガを食べるの?」

 と、クミが聞く。


「はははは、オーガをそのまま食べるのは流石さすがにキツイな。リコンストラクターで廃棄処理してから、フードディスペンサーで食べたい料理にするんだよ」



「うへぇ、原料を想像したくないね。でも、どうぞ持っていって下さい、1頭と言わずに何頭でもどうぞ!」


「おぉ、気前いいね。でもオーガを複数持って行くのは重くて大変だから、今は1頭でいいかな。……オイ出て来て大丈夫だ、オーガをくれるってよ」


 建物の陰から、更に隠れていた2人の男が現われた。

 男達は警戒しながらも簡単に会釈をすると、3人で1頭のオーガを引っ張っていこうとする。


 ズズッ、ズズッ、ズズッ……、


 重そうにオーガ1頭を引き摺りだした。



「えっとぅ、おじさん達は収納の魔道具とか魔法を持ってないのですか?」


「有るけど、毎日リコンストラクターに魔力を注いでて、マナがカスカスなんだよ。生きてく為に魔力を使い切っちまってるんだ。それでも腹がくんで、命がけでオーガを1頭仕留める為に出てきたのさ。今日はあんた達に会えたから良かったよ」



「近くまで運びましょうか? そちらの都合が良ければですけど……」


 3人の男は目を合わせて頷き合った。


「じゃあ、頼むよ。あそこのビルの中に地下シェルターへの隠し扉があるんだ」



 俺達は12頭のオーガをリコンストラクターで廃棄処理して、残った2頭をユウトと2人で運んであげる。


 ヒョイと、オーガを片手で担いだ。近そうなので収納しなくてもいいかなと思ったから。


「ヒュ~ゥ、200キロ近くあるんだぜ。バフが掛かってるのか? 魔力に余裕が有るって事は、お兄ちゃん達は他の惑星から来たんだな?」


「ひょっとして、反帝国同盟軍なのか? エリューズで何をしてるんだ?」


「いいえ、同盟軍とは違いますが。他の惑星からは来ました」



「……帝国はもう終わりさ。軍も警察も機能してないんだ。わずかに生き残った帝国民が地下シェルターで暮らしているんだが、魔力でリコンストラクターをやっと動かす事しか出来ないのさ……」


「住民は何人ぐらい居るのですか?」


「ここは20人ぐらいだが、他は分からない。あちこちに沢山地下シェルターが有るからな」


「そうですか……」



 地下シェルターの入り口迄行って、オーガを下した。

 誘われたが中に入る事はお断りする。


「俺達はダンジョン核を破壊しに行きますので、これで失礼いたします。お元気で……」


「何だって! ダンジョン核はルドルフタワーにあると言われてるんだ。あそこは魔物の巣窟に成ってるんだぞ!」


「そうだそうだ、命が幾つあっても足りないぞ。しかも上位種のオーガロードが数体いて、オーガハイロードがそれらの上に君臨していると言う噂なんだ!」


「はい……貴重な情報をありがとうございます。俺達はダンジョン核を破壊する事を目的にしていますので参考に成りました。これから壊しに行ってきます」



「自殺行為だ、人族が武力や魔力で勝てる相手じゃない。科学技術による強力な武器が必要なんだ!」


「御忠告ありがとうございます。お元気で」



「危険だと思ったら戻って来るんだぞ。ここに入れてやるからな」


「ありがとうございます」


「「「行ってきま~す」」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る