「そこで止まれ」

　足が止まる。

　ふたり。

「なぜ、人のいないところに進む」

「殴らないの？」

「殴る。何をだ？」

「私を」

「殴る理由がない」

「うそ。告発をした」

「されたな」

「うらまないの？」

「うらむ。何をだ？」

「いや、普通の人なら、さかうらみして」

「普通じゃないからな、俺は」

「え」

「普通のふりをしている、普通じゃない人間だ。だから人に言えない仕事もしている」

「もしかして、私が告発したのって」

「省庁依頼の治安業務はこなさないといかんのでな。別に個人的にやってるわけではない。お前もやるか？」

「やる」

「よし。決まりだ」

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