第25話 幕間1
いつからだっただろうか。
純粋にバトルが楽しめなくなったのは。
漆黒のフルプレートアーマーを纏い、同じく黒いツーハンドソードを握り、たくさんのプレイヤーと戦い勝利出来た。
自分なりにただ勝利するという事だけを考えてスキルを作り、装備を作ってくれるプレイヤーを探し、ギルドを作り、少数だが仲間を集めすべてが揃ったころには自分は無敗の存在になっていた。
最初はよかった。
多くのプレイヤーが自分に挑んできた。
それでも少なくない勝利を積み重ねるたびに、
観客は盛り上がらなくなり、掲示板からも相手にされなくなり自分から勝負を申し込んでも断られるようになった。
ランダムマッチで戦っても自分だとわかるとリタイアするプレイヤーも多くなりそうなってくるとなんのために自分はゲームをしているのかわからなくなった。
ただ勝つことが楽しかった。スキルを自分なりに構築し、相手に勝利する事が本当に楽しかったのにいつのまにかバトルがただの作業になっていたのかもしれない。
だからあの時、ギルドを解散し、自分もゲームを止めようかと思った。
そんな時だった。
あの人に出会ったのは。
当時初めて戦った時は自分の圧勝で終わった。
だが、めげずに何度も挑んできた。
それがとても嬉しく、何度もバトルを重ねた。
バトルに挑む時、セットしているスキルがどんどん変わり、
戦うにつれ、この対戦相手は戦い方にこだわりがあるのが理解できた。
自分はただ勝つために戦っていたが、こいつは魅せるために戦っている。
それが本当に面白く、自分がいかにつまらない戦いだったのかがよく分かった。
それからだ。
自分がこれからどうしたいのかなんとなく決まったような気がした。
アーシェスとトリエスティのバトルを多くのプレイヤーが観客席から見ている。
皆が先ほどのバトルに対し色々な考察をしていたり、
先ほどのバトルに触発されさっそく自分が戦いに向かったりなど様々な反応がされていた。
「やっぱりこうやって多くのプレイヤーと一緒に観戦するのは楽しいわね」
「そうだな、前回は予定があって見れなかったがやっぱり生で見れると楽しいよ」
多くのプレイヤーが退場していくなか、
観客席にまだ座っている二人のプレイヤーがいる。
「どう? 久しぶりにあなたもやりたくなったんじゃないの?」
「馬鹿言うなよ。ボコボコにされちまうって。よし、んじゃー帰るか!」
「そうね。私も楽しいバトルだったからちょっと体が疼いちゃったわ」
「気持ち悪い事を言うなよ」
そう言って、その二人組談笑しながらコロシアムを後にした。
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