第4話 アーシェスの放送その1
「やあ、こんばんわ!
今日も見に来てくれて本当にありがとう!」
[アー様、こんばんわ!]
[アー様、こんばんわ!]
[アー様、こんばんわ!]
「コメントもありがとう!
出来るだけ拾うからどんどんコメントしてね」
ここはアーシェスのアバターがいるVR空間だ。
従来のような2Dキャラクターをアバターとして
配信するのではなく、
VR空間に直接視聴者が来ることによって
より配信者との距離を近づけようという試みであった。
ちなみに視聴者たちは実態をもたない幽霊のような存在で
目の前には配信者しか映っていない。
仮にここにいる全員を移した場合、
間違いなくアーシェスは見えなくなるだろう。
ちなみに禁止エリアも存在しており、
女性配信者のスカートを覗くという事は出来ない仕様だ。
「いや、今日はほんとにつかれたよ。
もちろん、それ以上に楽しいバトルだったけどね」
[アーシェスまじ強かった]
[闘っているアー様もかっこよかった]
[あのスキルなんなの!?]
今のアーシェスはラフな格好をしている。
アナザースフィアとリンクして使っているアバターのため
ゲーム外でも同じ容姿なのだ。
ちなみに、このアナザースフィアは
キャラクターアバターを自由に作る事が出来るが、
コロシアムでのバトルではリアルスキンで作成したアバターのみとなっている。
それは、限りなく実際の身体に近い状態で
バトルを楽しんでほしいという運営の狙いだ。
そのためほとんどのプレイヤーは顔を隠すことが多い。
アーシェスは仮面をしているが、
素顔は普通に配信では晒している。
さらに前回戦ったリドリーは関しては仮面など一切つけていないため、
美女としての容姿も相まって人気が出ているのだ。
「お、スキルだね。
これは詳しくはあまり話せないけど、
今回新しく使ったスキルは二つ。
【聖なるオーラⅢ】と【ヴァーティカルレイド】だね」
[ⅡがⅢになってて草]
[最後のマジかっこよかった]
[どんな効果のスキルなの?]
「聖なるオーラⅢに関しては効果量は変わってないよ。
以前発売してるⅡと同じく攻撃力、防御力、速度上昇のバフだね。
リキャストタイムも効果量も変更してない。
変更点は気づいてる人もいると思うけど演出が変わったんだ。
以前から状況に応じてエフェクトの見え方を変えたいって思っててね。
その気持ちを汲んでくれた僕の専属の生産職の人が作ってくれたんだ。
名前は禁止されてるけど、改めてお礼を。
ほんとうにありがとう!」
[アー様の笑顔に惚れた]
[アー様の笑顔に濡れた]
[アー様の笑顔に掘れた]
[え?おまえ………]
「おいおい、僕はノーマルだからね!?」
アーシェスはあわてた様子で手を前に振っていた。
「まったく油断も隙もないな。
さて次はもうひとつのほうだね
これは完全にフィニッシュを飾るカッコいいスキルがほしくて
これも相談してたんだ。
以前使っていたスキル【ジャッジメント・レイ】も
もちろんかっこよくて好きなんだけどさ。
やっぱり常に新しい刺激をお届けしたいじゃない?
だから無理を言って作ってもらった。
スキルの効果も結構破格でね。
光属性攻撃なんだけど、僕自身に掛かっているバフの効果量が
乗算で乗るようになっていて使用時の僕の全SPを使うんだ。
だからまともに当たればまず倒せると思う」
[いや、強すぎだろ!?]
[チートじゃね?]
[見た目通りマジつよだね]
「ははは。
でももちろん弱点もあるよ。
まず使用条件だけど戦闘開始5分以降じゃないと使えない。
使用する前にタメがあって、その時攻撃されると解除される。
さらにスキル失敗の時でもSP全損するから、
スキルを失敗したらかなりピンチじゃないかな?
ちなみに1回の戦闘で1回しか使えないうえ、
スキル領域は10使うんだ」
[それはきついなw]
[外したら負けじゃんか]
[てか、よく当てたよな]
[10も使うなんて重すぎ]
[でも演出みたくて当たりに行きそう]
[まぁそれくらいデメリットあって当然なスペックだしな]
「うん、正直今回あたったのは運が良かった。
確かに20しかないスキル領域を半分も使うのは重いよね。
でも決め技としてはかなり盛り上がるでしょ?」
[それは間違いない]
[でも今日のバトルは思ったより短くてちょっと残念かも]
[それはしゃーないでしょ、真剣バトルだしさ]
[確かにもう少し見たかったな]
[もっと色んなスキルもみたかった]
コロシアムのバトルも何でもありではない。
装備はジョブによって制限があるように
スキルも有限なのだ。
スキル領域は20。
弱いスキルなら当然必要領域は少ない。
ちなみに聖なるオーラⅢは容量3だ。
「短かったのは申し訳ないと思ってよ。
本当はあそこで使う予定じゃなかったんだけど、
どう考えてもあそこで使わないと決められないと思ってさ。
初披露だからどうしても決めたかったんだ」
[それもわかるわ]
[次のバトルでも期待しちゃうしな]
[スキル発動後のアー様マジかっこよかった]
「みんなありがとう。
しばらく野良で対戦するから
当たった人はお手柔らかにね。
あと要望が多かった視聴者参加型のイベントも
企画してるから楽しみにしててね!」
[おお!!!]
[ついに実現か!!]
[きたーーー!!]
[よし、トレーニングがんばるわ]
[アー様と闘えるのほんと楽しみ]
[次は負けないわよ]
[え?もしかしてリドリー?]
「うん?あれリドリー??
あ、ほんとだ。
対戦ありがとう。
もしかして敵情視察かな?」
[そうよ、色々聞けたから次は勝てそうねw]
[卑怯すぎてくさ]
[いや、敵の情報調べるのはふつうじゃね?]
[たしかに]
[でもまたバトルみたいかも]
正直言ってしまうと勝ち負けはそこまで
こだわっていないんだよね。
そんなことを言ってしまうと怒られそうだから
言わないけどさ。
「うん、リドリーとのバトルは楽しいからね
またやろう!」
[いいね!両方応援してる]
[確かにこんなにスキルの話してたら勝率下がらない?]
[話してくれるのうれしいけどな]
[ちょっと心配かも]
「もちろん、スキル構成とか装備とか大事な話は
あまり話さないよ。
でも僕の配信を見てくれている多くの人たちに
楽しんでもらいたいんだ。
僕が使うスキルのデメリットを把握してば
次の僕のバトルでみんなハラハラするだろう?
やばい、アーシェス勝てるか!?とか、
そんなスリルをみんなに味わってもらいたい!
そしてそんなバトルで勝利する僕を見てほしい。
そうすればもっと熱くられると思うんだ」
[バトルジャンキーでくさ]
[まぁ、色々分かってた方が応援してて楽しいしな]
[アーシェスのスキル買ってる俺としては参考になるな]
[次ももちろん、応援する!]
[がんばれ!!!!]
「応援ありがとう!!
じゃあ、いい時間になってきたら、
今日頂いたカラーチャットのお礼を言っていくね」
カラーチャット、これは所謂投げ銭というやつだ。
金額に応じて色つきのチャットが流れるため、
カラーチャットと呼ばれている。
「猫じゃじゃまるさん、本当にありがとう!
たるたる美紀さん、本当にありがとう!
………………………………………………」
こうしてチャットの読み上げをして配信は終了した。
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