アナザースフィア ~スキルを生産!? これが最新ゲームの生産だ~
カール
第1話 対戦型VRゲーム
『さぁ!!!本日のメインイベント!!
アーシェス選手対リドリー選手の対戦だぁ!!!』
草原フィールドより二人のプレイヤーが転送された。
片方は肩まで延びた金髪を靡かせた騎士のプレイヤーアーシェス。
金髪の髪から覗くその顔には銀色の仮面が装着されている。
青と銀色がメインカラーであり、両手に持つ大剣には細やかな装飾が施されている。
「「きゃぁーー!!! アーシェス様!!!」」
黄色い声援に答えるように左腕を上げた。
そしてもう一人。
こちらはアーシェスに対し対照であった。
漆黒をイメージした鎧に赤い血のような装飾がされた暗黒騎士だ。
こちらは鎧と同じ黒い髪を腰まで伸ばした女性であり、
右手に同じ漆黒をイメージした片手剣が握られている。
「うおおお!!! リドリー様ぁぁぁ!!!!」
アーシェスと対極に少し野太い声援が送られているが、
リドリーはそれを無視するようにただ目の前の男、アーシェスを見ていた。
「随分久しぶりね。私との対戦をずっと避けていると思っていたの。
まずはその仮面を剥いでご自慢の顔を苦痛で歪ませてあげるわ」
リドリーは少しずつアーシェスと距離を縮めながら、油断はせずに歩いている。
「前回の君との対戦は引き分けだったと記憶しているのだけどね。
まぁ、この対戦後に同じ口が出来るか今から楽しみだよ」
アーシェスとリドリーは共にこのVRゲーム【アナザースフィア】での人気配信者である。それぞれのチャンネルでも既に生放送が開始して早々に視聴者数は1万を軽く超えていた。
この草原フィールドを大きく囲うようにまるでコロシアムのように観客席があり、それぞれ観客のプレイヤーはそこから観戦をしており、
頭上には対戦するプレイヤーをそれぞれの寄りの映像が表示されている。
そして、この会場にも入れないプレイヤーは生放送を観戦していた。
丸い天球形のオブジェクトがカウントを始める。
『さぁ!盛り上がって参りました!!
いよいよ、対戦です!!!!』
10から始まったカウントはもうじぎ0になる。
カウントが消え、オブジェクトは上昇し弾けた。
先に動いたのはリドリーだ。
ほんの瞬きの速度で先ほどまでいた場所から移動している。
あとに残されたのは舞い上がる土煙と踏み抜いた土の一部が舞っていた。
アーシェスの左側に回りこみ漆黒の片手剣が正確にその首を断とうとしていた。
それを焦った様子もなく上体を沈める事によって回避したアーシェスは返すように大剣を振り上げた。
アーシェスの大剣を受け止めるリドリーには少し苦悶の表情でそれを受ける。
激しい火花が舞い、その衝撃波によって二人の間の空間が弾けた。
「ホーリーランス!!!」
アーシェスの攻撃スキル。
SPを消費し、目の前の空間より光が収束する。
螺旋を描くように収束する光は目の前の敵に向かって放たれた。
「アースシールド!」
吹き飛ばされているリドリーが着地と同時に地面に手を置きスキルを発動した。
地面に添えた手から黒い光が地を這い地面より厚い壁が出現する。
「聖なるオーラⅢ」
アーシェスに光りの炎が纏われた。
攻撃力と防御力が一時的に跳ね上がるアーシェスのスキルだ。
先ほど放った光の槍が土の壁を打ち抜き、その衝撃により土煙が舞う。
その煙より、動く影をアーシェスは見逃さない。
煙を押しのけその場から脱出しようとするリドリーを先ほどのバフによって強化された体はまさに光りのような速さで近づきその影を切り裂いた。
「む?」
土煙に隠されていたリドリーはまさしく影であった。
「シャドウアバターか!」
「その通り、貰ったわ!」
いつのまにか背後にリドリーがアーシェスの首に向かって刃を突き出そうとしていた。
「―――くっ、舐めるなぁぁあ!!」
纏っていた光りの炎はさらに大きくなり大剣で切ったときの反動をそのまま利用しアーシェスは体を捻り目の前に迫る凶刃を左手ではじいた。
「な、何よそれ!?」
目の前の男のスキルを見てリドリーは驚愕した。
(聖なるオーラの炎が大きくなった?そんなエフェクトあったかしら?)
以前にはなかったありえない現象を見て、隙が出来てしまった。
「考え事なんていけないね。でもこれで終わりだ。
――――セット」
大きく距離を取りスキル発動する。
アーシェスの周囲に光りの粒子が立ち上がった。
それはまるで幻想的な光景だ。
手に持った大剣は蒼い光を眩く放ち巨大な光りの剣にも見える。
「ヴァーティカルレイドッ!!」
その光りの剣を振り下ろす。
先ほど舞い上がっていた光りはさらに剣に収束し、振り下ろされた剣となってリドリーを襲った。
「くっ! アースシールド!」
先ほどと同じ土の壁が二人の間に出現した。
「だめ、これじゃ足りない…! ダークネスマテリアル!!」
さらに追加された防御スキルにより紫のオーラを纏った黒い光りが壁となりリドリーを守護した。
視界を防御スキルで遮っていても感じられてしまう熱量に圧倒される。
自身で作った防御をやばり目の前から迫る光の奔流に飲まれ、リドリーのHPは全損した。
『決まったー!!!
アーシェス選手の新スキルでしょうか!?
それによりリドリー選手の敗北が決まりました!!!
さっそく勝利者インタビューと行きましょう!』
アーシェスにすべてのカメラが集中する。
「まずはリドリー。対戦ありがとう。
今回は本当に危なかったが何とか勝ちを拾えたようだ」
少し肩で息をしているが、息を整えているアーシェスが答える。
『アーシェス選手は一見ほとんどダメージがなく
圧勝のようでしたが、今回の戦いは如何でしたか?』
「ああ、リドリーの速度についていくのは本当に大変だ。
今回は僕に偶々勝利の女神が微笑んだだけさ」
「「キャー!!アーシェス様ぁぁあ!!」
『そしてみなさんお待ちかね!
新しいスキルのお披露目でしたね。
これはどういったスキルなのでしょうか!?』
「さすがに詳細はまだ説明できないよ。もしかしたら来シーズンに発売するかもだから楽しみにしててくれ!」
『ぜひ!楽しみにしております!
それでは、今回の対戦模様はいつも通りアーカイブに残りますので今回お見逃した方はぜひ其方から確認して下さい! さて、最後に何かコメントをお願いします』
「ああ、改めて応援してくれた皆には感謝を。皆の声援や応援がいつも僕に力をくれるよ!
あ、まだチャンネル登録してない人がいたらぜひこの機会にお願いします。
それでは、また会いましょう!」
そうしてアーシェスはコロシアムから姿を消した。
しばらく拍手と声援がアーシェス退場後も止まらなかった。
このコロシアムでのPvPはアナザースフィアの売りだ。
それは何故かというとこのコロシアム以外で戦闘行為が出来ない、つまり対戦型VRゲームである。
普通の対戦型VRゲームと違うのは、戦闘職と生産職があるという事だろう。
対戦型のゲームなのに生産とは何かというと、
コロシアムで使用する武器や防具、装飾などをプレイヤーが作る事が出来る。
そしてその自由度が非常に高い。
自分で武器の形をデザイン出来る事はもちろん、オリジナルの独創的な武器も作る事が可能であり、そして、オリジナルのスキルや魔法を作る事も可能なのだ。
この物語はそんなスキル作成に魅了され、せっかくランクを上げていた戦闘職を止めて生産プレイヤーへ転向した男、柊大吾という大学生のお話である。
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