第15話Part.4~君はただ者とは思えない~

「シェーベリーには学校に通う為に行くの?」

「は、はい。で、でもどうして。」

「たくさんの荷物持ってるし俺と同い年くらいだし。」

「えっ。」

「もしかして同い年に見えてないかな?」


 俺はエレナに学園都市シェーベリーの学校に通う為に道を進んでいたのかと尋ねた。彼女は驚いた様子で何故分かったのかというような表情を見せている。まあ学園都市だけあってシェーベリーに行く者は大体が学生というのもあるし、年齢層も同じくらいに見える。その為そう思ったのだと言ってみたが、今度は俺の見た目が12歳に見えなかったらしい。


 顔立ち自体はそんなに老けてはいないと思いたいが、何と言ってもこの時既に身長が180センメラー弱あった。もう俺が東亜として生きていた時よりも大きい。そう見えないのも当然かもしれない。それを声に出して言うと失礼に当たると思ったのか、エレナは何も言わなかったが。


「一応12歳だよ。来年度からシェーベリー戦闘大学校に通うんだ。」

「わ、私もです。」

「えっ!?」


 今度は俺の方が驚いてしまった。小柄で控えめな感じの彼女がシェーベリー戦闘大学校に通うとは思っていなかった。学術学校辺りかと考えていたのだが、まさかの答えに驚かされた。


「そ、そうなの?ちなみにどのコースに進む予定なの?」

「せ、戦士です……。」

「えっ!?」


 またしても彼女の返答に驚く。魔術師に特化したコースに進むのかと思っていたが戦士らしい。だがシェーベリー戦闘大学校に受かったということはそれだけの実力を持っていることは間違いない。しかしそうは言われてもそう見えない。何かこちらが驚かされてばかりだ。


「そ、そうなのか。俺は士官コースに進む予定だよ。」

「そ、そうなんですね。」

「とは言ってもコース分けは2年からだから、1年はみんなごちゃまぜみたいだけどね。」

「は、初めて知りました。」

「うん。士官コース、参謀コース、戦士コース、魔術師コースってあるけど、1年の成績によって選べるコースに差ができるみたいだよ。」


 俺はシェーベリー戦闘大学校OBである父に学校のシステムを多少聞いていた。まずは1年間は皆同じ学科を受けた上で学科・実技等の成績を加味した上で2年からコース分けがなされるようだ。


「戦士なら武術の成績と魔術も多少重要になってくるみたいだね。」

「そ、そうなんですか。」

「1年の末辺りで生徒ごとに希望を聞くみたいなんだ。定員があるから成績順、あとはそれぞれのコースの基準の成績があって、それを満たしているコースから選ぶみたいだ。」


 俺は父から聞いたコース選択システムを思い出しながらエレナに説明していく。俺の志望している士官コースは戦術の成績が特に重要で後は戦略。武術と魔術も多少重要になるらしい。俺もどちらかと言えば勉強より身体を動かしている方が性に合っていると思うが、こればっかりはお家の事情もあるので仕方がない。


「しかし戦士かぁ……。一度手合わせしてみたいねぇ……。」

「わ、私なんてぜ、全然ですよ……。」

「シェーベリー戦闘大学校に受かってるんだから全然ということは無いと思うけど。」

「そ、そんな。う、受かったのもたまたまだと思いますし……。」


 うつむき加減でモジモジとしながら話すエレナ。本当に彼女はシェーベリー戦闘大学校に受かったのかと疑いたくなるぐらいに自信なさげだ。全く自信が無いのかただいきなり知らない貴族を名乗る人間の馬車に乗せられて緊張か困惑をしているのかは分からないが。

 しかしそれはそれで興味がある。彼女の戦いぶりや何を得物に使うのか。まぐれで全くダメな者が受かれるほど甘い学校ではないのは俺もよく分かっている。


「やっぱり今度手合わせしてみよう!エレナさんの武術に興味があるんだ。」

「えっ?で、でも……。」

「俺、向こうじゃ友人とあまり手合わせしたことがなくてね。せっかく戦士志望のエレナさんと知り合えたし、ダメかな?」

「だ、ダメじゃないです……けど本当にわ、私なんか全然ダメで。そ、それでもいいですか?」

「よし!決まり!楽しみにしてるね。」


 完全にゴリ押しだったがエレナと手合わせすることになった。リール・ア・リーフでは家中の騎士たちや友人とちょっと遊んだ程度、試験で一応アイツと闘いはしたが、しっかりと同年代位の人と手合わせするのは初めてだ。

 おそらくエレナは平民階級の出。シェーベリー戦闘大学校ではそこまで出身階級による差はつけないようにされているようだが、それでもやはり貴族階級の者を優先して通そうとする者も居るらしい。そして平民自体がシェーベリーを受験するのも難しい。

 それでもエレナはこうやってシェーベリー戦闘大学校に通える。それだけでも並ではないはず。どれほど彼女は強いのか、俺は楽しみに思いながら馬車に揺られ続けた。

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