第17話


「ナッちゃん、どうした?」

 考え込む僕を見てツトムが言った。

 慌てて僕は言った。

「いや、何でもないんだ」

「そうか」

「あ、だけどさ。あとで二人っきりになったらちょっと渡したいものがあるから、いいかな?」

 僕はズボンのポケットに手を伸ばして言った。 

「うん、いいよ。でも何だい?ナッちゃん?」

「まぁ、それはあとでってことで」

 そう言って、自転車を強く漕ぎ出した時、先頭を行く勝幸の頭に何かが当たって割れた音がした。

 それで二人の自転車が止まった。急いで僕とツトムは二人の側まで行った。

 勝幸が頭に当たったものを手に取って、僕に見せた。

「これは・・」

 僕はそれを手に取った。

 それは屋台とかでよく見る金魚すくいの透明な袋だった。地面を見ると大きな水が散らばっているのが見えた。

 僕達が立ち止まった場所は通学路の坂の所だった。

 ばーん!!

 激しい音がして僕達の側で何かが地面に落ちて破裂した。

「うわぁ!」

 勝彦が叫ぶ。

 僕は地面に落ちて破裂したものを見た。それは先程勝幸の頭にぶつかったものと同じ物だった。

「水の入った袋じゃないか。誰だ?こんなことする奴は!」

 僕はそう言ってはっとした。

 皆も僕がはっとした意味が分かったようだった。この山川でこんないたずらをする奴は奴らしかいない。

 僕達四人は顔を見合わせていると、上の方で笑う声がした。僕達は懸命に声の聞こえる場所を探そうとしていると、木造の二階建てのベランダのある家からその声が聞こえるのがわかった。

「あれじゃ!!」

 勝幸が指を指した。

 僕達は四人が一斉にそちらを見た。すると、そこに二人の男の兄弟の姿が見えた。

 それはゲン太兄弟の姿だった。

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