クレアトゥール

【クレアトゥール:創造主を意味する言葉。創造主、または創造神。創造主とは、その名のとおり、宇宙や生物を明白な意思を持って創造した神。あるいは創造という言葉・行為そのものがを神格化した概念。】


あれから一ヶ月が経過した。相変わらず雨は止まず、作物の成長も芳しくない状態が続いている。


《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性(レベル1)』を獲得しました。》

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒耐性(レベル1)』が『毒耐性(レベル2)』に上昇しました。》

《熟練度が一定に達しました。スキル『塩基耐性(レベル1)』を獲得しました。》


雨の成分がどんどん有害になってきているようだ。既に塔周囲の植物は確実に枯れ始めているし、一部の魔物にも影響が出始めていた。ハウンドが白目を向いて枯れた声で鳴く様になったり、本来毒持つ植物型の魔物ですら毒性を失っている。

大陸の自然環境が確実に壊れてきている。そんな事態に対して、大抵の人々は異常な程落ち着いていた。


「この大陸が終わってもよぉ……別に全ての人族が淘汰される訳じゃねぇんだろぉ?」

「生き残れるならそれに越したことはねぇがなぁ!!ガハハハハハ!!」


これを文化の違いだとか、異世界だからという言葉で片付けてしまうのは簡単だが、俺はどうしても納得出来なかった。


「(流石に諦めが良すぎるんじゃないのか……)」


確かに、この世界は二十一世紀の地球よりも簡単に命が失われる。かつてガリア帝国が滅んだ時もこんな感じだったのだろうか。

いや、帝国……正確には帝国の首都が滅びようとした時に、他の地域から援軍が全く来なかった事を考えると、恐らくこの世界の人間には、滅ぶ事に対しての抵抗感が薄いように思える。

平和ボケとも言えない……もっと根本的な部分が違うのだ。ような感覚である。


《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性(レベル1)』が『酸耐性(レベル2)』に上昇しました。》

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性(レベル2)』が『酸耐性(レベル3)』に上昇しました。》

《熟練度が一定に達しました。スキル『塩基耐性(レベル1)』が『塩基耐性(レベル2)』に上昇しました。》

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒耐性(レベル2)』が『毒耐性(レベル3)』に上昇しました。》


「これじゃあ本当に時間の問題だろうな……いや、もう手遅れなのか?」


俺は呟きながら、塔を見上げる。雨が作り出す雰囲気が、常に不穏さを演出している様に見えた。


「このままじゃいけない……演奏の練習でもするか。」


降り続ける雨が止まらない様に、俺自身も諦めることを許されない状況だった。


――――――――――――――――――――――――――

「へぇ……遂に気づきましたか。」


イザベルの声が劇場内に響き渡る。劇場は質素ながら上品な雰囲気を醸し出している。紺色を基調とした壁紙や絨毯が高級さを感じさせた。他にも絵画が直接壁に掛けられていたり、妖しく光る陶磁器が並べられている。


「……」


イザベルが座る椅子の反対方向にバランが座り、二人の間には机が置かれている。その上には紅茶の入ったティーカップが置かれていた。お互い紅茶を口にすることもなく、暫く無音の時間が流れる。

そして、その静寂を破ったのは以外にもバランの方だった。


「……止まれ。」


イザベルは右手を軽く上げ、何らかの合図を送ろうとしていた。バランはその行動を静止させる為、声を発したのだった。


「どういう風の吹き回しですか?」


イザベルが尋ねる。表情は笑顔に溢れているが、内心は怒りに満ちていた。仮に心情を表すとしたら、宇宙まで届く活火山の噴火といったところだろう。


「お前の行動は今のトモヤ・ハガヤにとって……そして世界にとっても毒にしかならん。そう判断しただけだ。」


イザベルは笑顔を崩さない。


「私にとって退屈とは最も屈辱的で最も不快な拷問の様なもの……バラン、貴方もそれは分かっていますよね?」


イザベルはゆっくりと口を開く。


「……【繧、繝ゥ繧ッ繝翫?繝ュ繝シ繧コ繝槭Μ繝シ繝サ繧「繧カ繝医?繧ケ繝サ繝輔か繝ウ繝サ繝溘Λ繧、繝阪?繧カ繝シ繝?ヰ繝ォ繝?#FFFF66】が目覚める。」


劇場にはイザベルとバラン以外の存在は居ない。だが、バランの発言が劇場に響いた瞬間、劇場自体が僅かに揺れた気がした。

それを聞いたイザベルは、些細な怒りなど忘れてしまったかのように、歓喜の笑みを浮かべる。


「さっさと行け。退屈とは程遠いモノが見られる。」


既にイザベルは劇場から姿を消していた。バランが言い終える前に、既に彼女は消えていたのだ。


「……我等の創造主よ。秘書官は……いや……言わないでおきます。」


バランは一際巨大な絵画に目を向けていた。その絵に描かれていたのは……


「ですが……これだけは言っておきます。本当にイザベルに全権を託して良かったのですか?」


バランの発言はイザベルにも当然聞こえているだろう。アヌンナキの一員と言えど、場合によっては消滅さえ有り得る発言だ。


「……新参者の戯言として聞き流して下さい。。」


バランも劇場から姿を消した。

誰も居なくなった劇場に、風が吹き抜ける音だけが残った。それは声にもならない雑音の筈だった。だが、それは確かに一言の言霊となって、劇場に幽かに響いた。


――あれは良いモノなのだがね。


それが何の意味を表わすのか、今はまだ誰一人として知る由もなかった。


【クレアトゥール:創造主を意味する言葉。創造主、または創造神。創造主とは、その名のとおり、宇宙や生物を明白な意思を持って創造した神。あるいは創造という言葉・行為そのものがを神格化した概念。

この世界における神々アヌンナキにとって創造・改変などの力は非常に一般的だと言える。その為、本当の意味での創造主とは、アヌンナキを生みだ創造し、成長進化させた存在の事だと言える。】


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

人族ホモ・サピエンス︰レベル15

生命力:B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル5)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。

『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル6)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル3)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『酸耐性(レベル3)』触れた酸を中和させて、活動しやすくする。またこのスキルを発動すると、触れた酸と同質量の水が生成される。←new

『塩基耐性(レベル2)』触れた塩基を中和させて、活動しやすくする。またこのスキルを発動すると、触れた酸と同質量の水が生成される。←new

『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。

『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル4)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル3)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル3)』風を操る魔法。

『時魔法(レベル4)』時を操る魔法。

『結界魔法(レベル1)』障壁を作り出したり、対象を拘束する魔法。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

デモカイガの繭:デモカイガは卵から双子の幼虫が生まれ、その双子の繭は空間が捻じ曲げられたかの様に繋がっている。その性質を利用し音声を共有することが出来るが、一度しようすると繭の中から成虫が飛び出して使えなくなる。片方の繭をミズキ達が所持している。

グランベードの遺石︰グランベードが消滅時に遺した結晶。微かな意志を感じる。

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