月への挑戦者

【白鯨︰白い巨鯨。あるいはハーマン・メルヴィルによる小説作品。白鯨には傷を負い白化する場合もあり、ガリアン・ノアムーンもその一種。生まれてから同種や異種族と生存闘争に明け暮れ、全身が傷で白く染まる個体が強力な力を持っているのは当然のことと言えるだろう。】


白翼を討伐した俺は、雨雲が晴れて夕陽が差している平原を進んでいた。門が見えて来ると、そこには見覚えの無い人物が立っていた。


「よう。久しぶりだな。」


俺の目の前には短い黒髪をした、黒い瞳を持つ青年と茶髪の青年が立っている。


「誰だ?」

「んぁ……これを見てくれ。」


そう言って青年は手を突き出してきた。その手は人の手では無く、黒い鱗に覆われており鉤爪のようなものがついていた。


「もしかしてリュウジか!?」

「そういうことだ。」

「マジか……」


俺は驚きのあまり、目を見開いた。


「一部分の人化を解けばこんな感じだな。」

「隣のは……まさか……リュウタか!?」


俺は隣にいる茶色の髪の青年を見た。すると、彼は嬉しそうな表情を浮かべた。


「久しぶりっすね。えっと俺達ってどんな話し方でしたっけ?」


俺達はお互いの顔を見て笑った。それから俺達は街の中に入り、酒場に入った。そこで俺は彼らにオーク騒動後の出来事から怨霊騒ぎ、アキオ達との再会などを話した。


「そうか……そんなことがあったのか。まあ、俺達が居ない間に色々あったみたいだが、とりあえず、無事なようで安心したぜ。」


リュウジは笑顔で言うと、ハウンド肉のステーキを食べ始めた。


「これ美味いっすね。」


リュウタもハウンド肉を頬張っている。


「二人はこの後どうするんだ?」


俺が質問すると、二人とも顔を合わせて考え込んだ。しばらくすると、リュウジが口を開いた。


「俺達も冒険者登録して、この大陸を探索しようと思ってる。そもそもこの大陸、何万年から何億年の歴史があるのに全貌が分かってねぇんだろ?面白そうだ。」


確かに俺達が知っているこの大陸の情報は極一部に過ぎない。それは学園の図書館で得た知識である。リュウジの言葉にリュウタもうなずいた。

そして、俺達はギルドに向かった。


「トモヤ様、白翼の討伐お疲れさまでした。」


……受付嬢の目が怖い。そもそも何故、俺が発見した二つ名持ちの魔物を討伐し始めたかと言うと、単純にギルド側からの指名依頼があったからだ。最初は断ったのだが、報酬額に加えて支援品も付くという破格な条件だったので引き受けることにしたのだ。


「……トモヤ様が発見した後から一切目撃情報が無かったのに……一体何故……」


受付嬢が呟いている。俺も正直、不思議だった。まるで引き寄せられる様に白翼の住処に辿り着いたのだから。


「……エルドシュリンプ、エルドオオウソ、エルドタイガーは天敵同士。もし脅威となり得る天敵が現れた場合、身体に変化が起こる。しかし今回は三体同時に変化が起こっている……」


今回の出来事をまとめてはみたものの、よく分からない。


「もしかして……のでは無いでしょうか?」


受付嬢は真剣な眼差しで言った。いや、いくらなんでもあり得ないだろう。でも仮にそうだとしたら……


――――――――――――――――――――――――――

雷が鳴り響き、強風が吹き荒れている。ボロボロの黒い帆船に乗った船員は必死に逃げようとしていた。そんな中、左眼が無い男が宙に浮かぶ怪物を右眼で睨んだ。


「船長無謀だ!!ガリアン・ノアムーンなんて化け物と戦って勝てるわけがない!!」


一人の船員が叫ぶと、他の船員達も同意の声を上げた。しかし、左眼の無い男は一言だけ言った。


「慌てたところであの化け物は止まらんよ。それに今はあいつ一体じゃない。」

その言葉と同時に船体が大きく揺れた。


「嘘だろ……」


船員達の目に映っていたのは、夜空に月の如く浮かぶ鯨の魔物の群れだった。


「奴等はガリアン・アトラスト程じゃないが群れで行動する習性を持っている。気張れよお前等!!」


そう言うと、左眼の無い男、船長は月に挑むのだった。

そして数分後……


「……教えてくれよ船長。何があんたをそこまでさせるんだ?」


船員が船長に問う。船長が見る先には一体のガリアン・ノアムーンの死体。つまり、先程の戦闘によって討伐されたのである。中核を失った群れは恐れをなして逃げ去ったのだ。


「……分からん。初めて奴等の群れに遭遇した時は嫁と息子を殺された。一回目の討伐隊は俺以外全滅した。二度目の討伐隊では左眼と右腕を持って行かれた。」


船長は自分の右腕を見た。そこには義手が嵌められている。


「もはや復讐心なのか、それとも奴等との殺し合いを楽しんでいるのかすら分からん……」


船長はそう言って甲板から見える海を見つめていた。嵐が少し収まり始め、一匹の海鳥系魔物が船に向かって飛んできた。魔物の鳴き声とともに、船長の視界がゆっくりと真っ黒に染まった。


「夢か。」


今までの光景は実際に起こった出来事だが、もう何年も前の話だった。船長は起き上がると船内の窓から空を見た。


「あの時と同じ海鳥系の魔物か……」


魔物はあの時の同じ鳴き声を変わらず響かせていた。船長は眼帯と義手を見ながら自嘲気味に笑うのだった。


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

人族ホモ・サピエンス︰レベル14

生命力:B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル5)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。

『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル6)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。

『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル4)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル3)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル3)』風を操る魔法。

『時魔法(レベル4)』時を操る魔法。

『結界魔法(レベル1)』障壁を作り出したり、対象を拘束する魔法。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

デモカイガの繭:デモカイガは卵から双子の幼虫が生まれ、その双子の繭は空間が捻じ曲げられたかの様に繋がっている。その性質を利用し音声を共有することが出来るが、一度しようすると繭の中から成虫が飛び出して使えなくなる。片方の繭をミズキ達が所持している。

グランベードの遺石︰グランベードが消滅時に遺した結晶。微かな意志を感じる。

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