キノコキライ・エクストリーム・インザルーム
猫とホウキ
プロローグ
香月夏奈の独り言
まず言っておこう。言うまでもないことかもしれないが、しかし言っておかないと話が始まらない。
キノコというものは何か……。
それは菌類である。個々の大きさは数センチ〜十数センチで、じめじめとしている場所を好む。木、または倒木に寄生する(つまり木がないと生きていけない)種がほとんどで、そのため見かけるのは山の中、森の中が主である。
多くの種が毒を持ち、食すれば死に至るものも少なくない。ドクツルダケの毒は、食べた者の内臓を一週間かけてスポンジ状になるまで破壊するという。もう想像するだけで背筋が凍る。
そんなキノコという危険極まりないものを、人類は食糧の一種とみなしているらしい。
まったく信じ難い。しかし私の家族友人親戚知人、皆、平然とキノコを食する。レストランなどの外食産業でも、赤や黄色の警告色を示すこともなく、パトカーのようにサイレンを鳴らすこともなく、さも当然の如くあらゆるものにキノコを混入させ、客に提供している。
私はこう思う。人類はキノコにより侵略されている。何故、人はキノコを食べるのか。それは体内に広がるキノコの菌糸が、外部からさらなる菌糸の摂取を求めるからだ。
キノコの姿を思い出して欲しい。あれが地球外生命体でなければ、何が地球外生命体なのだろうか。地球以外のどの惑星にだって、違和感なく生えていそうだ。
そして何故私がキノコが嫌いなのかといえば、キノコの侵食に対し『抗体』を持っているからだと思う。キノコの菌糸が体内に入ることを、私の体が拒んでいるのだ。つまり私がキノコ嫌いである限り、人類はまだキノコの侵略に屈していないということである。
私は最後の一兵になろうとも、キノコと戦う。
と、私はこんな話を真剣にするのだけど、家族友人親戚知人みんな笑うばかりで相手にしてくれない。私が怒るともっと笑う。
すべてキノコが悪い。キノコとは邪悪なものなのだ。
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