151 マグメルは変態さん?


 一通りの報告を終えた俺たちは、アイリスたちを救出するため、その居場所をシヴァさんに〝視て〟もらうことにした。


 だがやはりフィーニスさまの力が邪魔しているらしく、彼女の〝眼〟を以てしてもその動向は追えないという。


 ならば一体どうすればよいのか。


 一様に険しい顔を見せる俺たちだったが、ふいにシヴァさんがこう言い出したことで事態が動く。



「確証はないのだけれど、女神フィーニスの居場所に関して一つだけ心当たりがあるわ」



「「「「「「「!」」」」」」」



 シヴァさんの言葉に俺たちが揃って目を丸くする中、俺は彼女に問う。



「え、それは一体どこなんですか?」



「どこ、と言われると正確な場所までは分からないのだけれど、以前聖者たちの会合に使われていたとある広間があるの。専用の空間移動術でしか行けない特別な場所だから、それゆえに訪れる者も皆無と言っていいわ」



「なるほど。人知れず大がかりな儀式をやるには持ってこいの場所というわけね?」



 ザナの問いに、シヴァさんは大きく頷いて言った。



「ええ、そうよ。一応封印中の女神フィーニスともそこでコンタクトをとっていたみたいだし、彼女にとっても馴染みの場所である以上、潜伏している可能性は決して低くはないんじゃないかしら?」



「そうですね。確かに調べてみる価値は十分にあると思います。その場所にはすぐに行けたりしますか?」



「ええ、もちろん。あなたが望むのならいつだってゲートを開けてあげるわ」



「ありがとうございます」



 そう微笑みながらお礼を言った後、俺は皆を見渡して言う。


 どうやら外に出ていたエルマたちも戻ってきたようだ。



「というわけで、さすがにアイリスたちのことが心配だし、これからその広間へと乗り込もうと思う。とくに遠征組は疲れてると思うけど、もし身体がキツければ遠慮せず言ってくれ。無理強いはしないからさ」



 俺がそう笑いかけると、女子たちもまた笑みを浮かべて言った。



「はっ、この状況で休むやつなんざいるわきゃねえだろ?」



「ふ、同感だ。あの娘たちには色々と世話にもなったからな」



「ええ、お二方の仰るとおりです。それに私たちは皆イグザさまのおかげで体力の回復速度も飛躍的に向上しています。なのでどうぞお気遣いなくお使いくださいませ」



「出来れば少々乱暴に、じゃろ?」



 にやにやといやらしそうな笑みのナザリィさんに、「……はい」とマグメルが頬を朱に染めて言う。



「個人的に好きなのはお尻を強めに叩かれることで……って、何を言わせるんですかー!?」



 当然、真っ赤な顔で声を荒らげるマグメルに、ナザリィさんも苦笑いを浮かべる。



「いや、すまんすまん。まさかこんな馬鹿正直に乗ってくれるとは思わなんでな?」



「だ、だからってやっていいことと悪いことがあります!? あ、あれじゃまるで私が痴女みたいじゃないですか!?」



 と。



「――いや、お前は最初からドMの痴女だっただろ?」



「……えっ?」



 アルカの突っ込みに、マグメルが呆然と目をぱちくりさせる。


 うんうん、とほかの女子たちが揃って頷いているのを見る限り、〝マグメル=痴女〟の認識は普通に広がっているっぽかった。


 そういえばはじめて会った時、アルカが彼女のスカートを捲り上げたことがあったけど、貞淑なロングスカートの下にガーターベルト付きの透け透けTバックを穿いてたのは普通にびっくりだったなぁ……。


 まあ下着は上も透け透けだったんだけど……。



「大丈夫。わたしはマグメルが変態さんでも嫌いになったりはしないから」



「あ、ありがとうございます……って、誰が〝変態さん〟ですか!? 私は痴女でもなければ変態でもありません!? というか、私のことはいいんです!? それより今はアイリスさんたちを助けに行くのが先決でしょう!?」



 真っ赤な顔で強引に話を戻そうとするマグメルに、俺も「そ、そうだな」と辿々しく頷く。


 そして一つ咳払いをし、改めて女子たち全員に向けてこう告げたのだった。



「よし、じゃあとりあえず皆で聖者たちが会合をしていたという場所に行ってみよう!」



 ところで、マグメルがお尻の話をした際、ポルコさんが血の涙を流しながらエルマに尻を叩かせてくれと頼んでビンタを食らっていたのは一体なんだったんだろうな……。

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