104 聖女武装
どばああああああああああああああああああああああああんっ! とシャンガルラの身体を覆っていた黒いオーラが一気に弾け飛ぶ。
「ティルナ!」
「分かった!」
あとはティルナがやつの四肢に装着されている神器を弾き飛ばし、聖神器へと昇華させるだけだったのだが、
「……グ、オアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「「――なっ!?」」
ここにきてシャンガルラが最後の抵抗を見せる。
〝意地〟だとでも言うのだろうか。
確かに根性だけは人一倍ありそうなやつだったからな。
死してなおそれは変わらなかったのだろう。
「ぐうっ!?」
浄化の力を押し返すかのように黒いオーラを噴出させ、剥き出しになっていた身体が再度〝汚れ〟に覆われていく。
しかもそれは以前よりも格段に肥大化し、やつの形状そのものが別の形態へと移り変わっていった。
二足歩行から雄々しき四足歩行へ。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
その大顎はまるで天地の全てを呑み込むほどに大きく開かれ、衝撃波を放ちながら雄叫びを上げていた。
そう、漆黒の巨狼が俺たちの目の前に姿を現したのである。
「狼に変身した……」
「……さすがだよ、シャンガルラ。あんたはすげえやつだ。死んでもこれだけの意地が残ってるんだからな」
でも、と俺は全身に炎を纏う。
「これ以上あんたの好きにさせるわけにはいかない。あんたのその意地は――俺たちの〝拳〟が必ずぶち破ってみせる!」
「うん! やろう、イグザ!」
――ぱあっ!
「グガアッ!?」
その瞬間、俺たちの身体が目映い輝きに包まれる。
それは激しくも温かい輝きで――そしてとても〝力〟に満ちた輝きだった。
「――ティルナ」
「うん、今理解した。わたしたち――〝一つ〟になれる」
――ごごうっ!
ティルナのフェニックスシールから出でた炎が彼女の身体を包み、さらに俺の炎と混ざって俺自身の身体をも包んでいく。
それはやがて四肢の強靱な装甲へと変化し、スザクフォームの新しい可能性を開いたのだった。
「「聖女武装――スザクフォームスペリオルアームズ!!」」
◇
「聖女武装……スペリオルアームズ……」
どぱんっ! と震脚とともに構えを取るイグザたちの姿に、シヴァは自然と笑みがこぼれていた。
聖女との一体化による新たなる戦闘スタイル――《スペリオルアームズ》。
なるほど、全ては伏線だったというわけだ。
何故この時代に七つのレアスキルそれぞれを持つ聖女たちが現れたのか。
何故それらをまとめ率いることが出来る者――〝勇者〟たる存在が現れたのか。
そしてフェニックスシールにアマテラスオーブ。
全てはここに辿り着くための重要なファクターだったのである。
「「はあっ!」」
――ずがんっ!
「グゲアッ!?」
イグザたちの剛撃が巨狼を地面に叩きつける。
惚れ惚れするほどに圧倒的な力だ。
これが《スペリオルアームズ》の力。
――〝聖女を通して聖具を手にした勇者の力〟というわけだ。
疑似とはいえ、レアスキルを習得した時点で資格はあったのだ。
その彼が何故今まで聖具を使えなかったのか。
もちろん聖女たちが所有者だったということもあるが、この力を得るためにあえて使えないようにしていたのだろう。
そしてそこに大きく関わってくるのが、聖女と心身を繋げるフェニックスシールと、ヒヒイロカネを任意の形で顕現させることの出来るアマテラスオーブ。
これらが全て揃った時、勇者は聖女と一つになり、その真の力を発揮する。
「まあそれも坊やの〝可能性〟があってのことでしょうけど」
凄まじい力で巨狼を圧倒していくイグザたちを見据えつつ、シヴァはそう独りごちる。
恐らくはこの力が女神フィー二スに対抗出来る唯一の力。
「どうやら私は一つ勘違いをしていたみたいね」
ただ七つのレアスキルを集めるだけではダメだったのだ。
本当に必要なのは七つのレアスキルと、それを持つ聖女たち――そして聖具。
これら全てを一つに合わせることが出来た時、勇者は神すらをも屠れる者となるのだろう。
つまり最終的に彼は七人全員と――。
「ふふ、でも最後の一人はそう簡単に言うことを聞いてくれるかしらね」
そう笑いつつ、シヴァは戦いの行く末を静かに見守り続けていたのだった。
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