《聖女パーティー》エルマ視点6:もう嫌ああああああああっ!?
あたしは今嵐の中にいた。
もちろん比喩的な意味ではない。
確かに馬鹿イグザがいなくなって以降、何もかもが全然上手くいかないし、ストレスはガンガン溜まっていくしで、人生の荒波に揉まれているのも事実ではある。
が!
そんなことより今はこれよ、これ!
――ギギギギギッ。
「「「「「うわああああああああああああああああああっ!?」」」」」
なんなのよ、この大嵐!?
完全に天候見誤ってるじゃない!?
こんなことになるなんてまったく聞いてないんですけどぉ!?
ぐわんぐわんとうねる船の中で、あたしはつっかえ棒のように壁に掴まりながら、そう苛立ちを露わにしていた。
その上、さっきから絶えず別の部屋からの悲鳴が聞こえてきて、もう船内は大パニックである。
中には「助けて聖女さま~!?」とか「お慈悲を~!?」とか「今こそ聖女を海の神に捧げるのじゃ~!?」とかまあ色々とあたしに救いを求める声もあったのだけれど、聖女がなんでもかんでも出来ると思ったら大間違いだってーの!?
むしろ聖女のあたしに大事がないかを心配しなさいよね!?
大体、最後のジジイにいたってはあたしを生け贄にしようとしてるじゃない!?
むしろあんたを今すぐ海に突き落としてやろうかって感じだわ、まったく!?
てか、そもそも嵐うんぬん以前にうら若き乙女が豚みたいな男と同室にされてるのよ!?
その時点でもう何もかもがおかしいじゃない!?
何が「申し訳ございません……。本日はご乗船予定のお客さまが非常に多く……」よ!?
だったらあんたの部屋をあたしに献上しなさいよね!?
聖女舐めてんの!?
「……っ」
内心一通りの不満を吐き出したあたしは、ギッとイライラの一つにもなっている件の豚を見やる。
「はあ、はあ……うっぷ」
そこでは真っ青な顔でベッドに横たわり、今にも大惨事を引き起こしそうなポルコの姿があった。
幸い、あたしは船には強い方である。
馬鹿イグザもそうだったので、船旅で苦労した経験はない。
しかし!
今まさにあたしは窮地に追いやられていたのである。
この狭い船室でもしこの豚が全てを解き放った暁には、もう色んな意味で死ぬしかない。
ゆえに、あたしはなんとか彼の症状が治まるよう、不本意ながら出来るだけの看病をしていた。
「も、申し訳ございません、聖女さま……。お供の私があなたさまの手を煩わせることになってしまって……」
「よいのです、ポルコ。あなたは何も気にせず、ただ自分の体調がよくなるようお努めなさい」
そう微笑み、あたしは水筒の水を彼に差し出す。
「さあ、これを。そして横になっていれば、そのうち酔いも治まりましょう」
「は、はい、ありがとうございま……うっ!?」
「えっ?」
ああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!?
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