第22話 - ドレイク
オークターヴィル魔道国家へ向けてグリフォンたちは飛び立った
5人を乗せて半日飛ぶとなるとさすがにグリフォンたちが疲れるので3匹交代で休憩しながら飛ぶそうだ
思ったより大がかりになってしまった、まぁお土産も持たせているので仕方ない
グリフォン3兄弟頑張れ
さて、仕事は山積みだ、新たな飛行魔獣の獲得と冬までは気の抜けないシルヴァン帝国へけん制を行わなければいけないな
クラピウス曰く、この大陸の魔物は人間の国の魔物に比べてかなり強いらしい
そのためかこの大陸は人がいなかったというわけだが、シルヴァン帝国が準備を整え、ついに侵攻してきてしまった
けん制を行う目的は商団が襲われないためもあるが街が発見されるのを避けたいからだ
オークの襲撃の時もそうだが、物資が山ほどある街を見つければ何かしらあるだろう
領土拡張欲が強い国だ、何が起きてもおかしくない
けん制は戦士ギルドへ依頼してシルヴァン帝国の進行ルートへ簡易拠点を築いてもらった
鬼人族を中心にダイアウルフなどの魔獣も含まれている、総勢50ほどになった
いきなり攻撃することはせず、まずは会話から始めるように指示してある
これでこの土地の亜人、魔物に対してどう対応するか観察しよう
その間に俺は飛行魔獣の獲得だ、ティルに聞いてみた
「ティル、グリフォンくらいの積載が可能な魔獣はこのあたりにいるか?」
ティルが大きくなったお腹をさすりながら答えてくれた
「それならドレイクがいいかもしれないわ」
ドレイクはワイバーンの上位種だ、体が大きく力も強い
知能もあり、会話は可能だろうだが接点が無く、交渉が難しい
どうしたものかと悩んでいるとティルから提案された
「お父様へ相談するのがいいわ、竜王からの紹介であれば無下に断られないでしょう」
なるほど確かに、最近はちょくちょくティルの様子を見にフリートが来るのでそのタイミングで相談してみることにした
…
数日経ってフリートが来た、ティルのお腹が大きくなってきてからは訪れる頻度が増えた、すっかり孫の誕生を楽しみに待つおじいちゃんだ
さっそくドレイクの事について聞いてみる
「フリート、街の新しい飛行魔獣としてドレイクを候補にしたんですが、今まで接点がなく困っております、話しをするため紹介状を用意してくださいませんか」
「わかった、明日連れてこよう」
さすが竜王、話しが早すぎる
...翌日
フリートが今日も訪れてきた、ルドルフを連れている
家に案内し、話しを聞いてみる
「玄人、ドレイクの事ならルドルフに聞いてくれ、こやつが力になる」
そういうとフリートはティルの所へスキップしながら行ってしまった
ルドルフにいきさつを説明するとルドルフが話し出した
「わかりました、若いドレイクであれば連れてこれます、何匹ほど必要でしょうか」
ルドルフ有能!さすが竜王の執事
だがあまりにも話しが簡単すぎて不思議だ、理由を聞いてみる
「とりあえず10匹もいればいいと思うけど、竜王の住処にドレイクが住んでいるのか?」
ルドルフが返答した
「間違ってはおりませんな、竜王さまの住処に住んでいるドレイクは私のみですが」
「実は私がドレイクの長でございます、遠い昔竜王さまと主従の証を立てた我が一族が代々竜王さまの執事として長が使える事になっております」
聞けば北の山脈、竜王の住処を中心に山脈にはドレイク、ワイバーンの巣がたくさんあるそうだ
全て竜王と主従の証を立てており、竜王に敵対する存在を退ける役割を担っているらしい
そんな話しを聞くと貴重なドレイクたちを街の輸送に利用するのは気が引ける
「そんなに大事な仕事を任されているドレイクに輸送なんかさせて大丈夫だろうか?」
「若いドレイクであればまだ戦力として未熟であるため大丈夫でしょう
むしろ街で役に立つことで竜王へ貢献ができる体裁にすれば喜んでやってくれます」
それなら遠慮なく手伝ってもらえそうだ、ひとまず空港はなんとかなる
後日、若いドレイクたちを選出して寄こしてくれる事になり、いくつかお土産をもたせてルドルフとフリートを見送った
…
それから数日経ってシルヴァン帝国へのけん制として設置した戦士ギルドの野営地が襲撃されたという報告があった、幸い死人は出ていないそうだ
シデンが野営地から帰還したのでいきさつを聞いてみよう
俺はシデンを家に呼び、話しをした
「シルヴァン帝国とは会話できたか?」
シデンは首を横に振った
「無理だね、今朝我々の野営地の前に到着、お互い出方を伺っていたが昼が来る頃、襲撃された」
「開戦はどんな感じだ?使者的なものは来なかったのか?」
「弓による遠隔攻撃だ、完全に制圧するつもりで攻撃してきている」
俺はがっくりと肩を落とし、ため息をついた
これは面倒だ、話し合う気がない
今はおそらく人間側は鬼人族の集落があった、ように見えているはず
そういう風にみせかけて配置したからだ
このまま続ければ、しばらくは大きな戦闘には発展しないだろうが、いずれ死人が出るのは明白だろう、冬も近い、おそらく攻略の準備をして、春が本番になるだろうな
「わかった、報告ありがとう、あと数日ほどけん制を頼む、冬が来る前に撤収してくれ」
「承知しました!」
そういうとシデンは前線へ戻っていった
シルヴァン帝国とは本格的に戦争に発展しそうだ
オークターヴィル魔導国家への接触がうまくいけば、シルヴァン帝国の情勢など手に入るかもしれない、そうすれば交渉する隙くらいはあるはずだ
目論見が失敗した時に備えて、戦力も増強しなければ
まずは国ごとの戦力の把握が必要だろう、戦争を望む国と交渉のテーブルにつくためには戦力が拮抗、または周辺国と協力し、戦争をすれば損をするという形に持っていかなければならない
よりによって最も近い人間の国が好戦的だったのは運が悪い
おそらく、交渉による和平を行ったとして今後お互いの領地を決める必要がある
次は国にしなければならないとは...
…
雪が降り始め、冬の訪れが告げられた
あれからシデン達は戦闘に発展することもなく、人間達も来なかった
ここまでは予想通り、春が来る前に対策をしなければ
それからルドルフに連れられ、若いドレイクたちが街に来た
とりあえず6匹、変身魔術が不完全ながらも使用できる者たちだそうだ
残りは変身魔術がある程度使えるようになってから来てくれるらしい
厩舎のようなところに押し込めるには少々身分が高い気がするので変身魔術は助かる
ドレイクたちは
雄3人 グルハー ルクハネス ヨルン
雌3人 ユーリーゼ アウレーネ プリエンテ
と、それぞれ名乗った
さらに、人が騎乗するだけならワイバーンも機動力に優れているという事でワイバーンも5匹ほど連れてきてくれた
ドレイクより小型で、魔獣レベルの知能なので厩舎で管理することを勧められ
5匹分、ワイバーン用の厩舎を建設
ドレイクたちは輸送時以外は人型で生活できるので住居を用意
そこに住んでもらうことにした
6人を歓迎し、家で簡単な夕食を済ませたあと、街を案内した
人間で言うと20歳になるかならないかくらいの反応で、街の様子に目をキラキラさせながら買い物を楽しんでいる、料理に特に感動し、女の子たちは水着などの衣類に夢中だった
…
ドレイクたちは変身魔術が使えるだけあって、いくつか魔術の心得があった
体はグリフォンより大きく、戦闘能力も高いため空の護衛としても役にたちそうだ
風や火の魔術が得意で自身の身体強化も行える
なるほど竜王の住処を守る親衛隊というだけある
積載量もグリフォンよりずっと上だった
また、風の魔術で飛行を手伝えるためスピードも出るそうだ
グリフォンの職危うし
輸送料に差をつけてグリフォンたちの仕事も減らさないようにしないとな
…
冬が本格的に始まる頃、オークターヴィル魔道都市から使者たちが帰ってきた
人数が増えている、オークターヴィルからの使者が一人ついてきたらしい
とりあえず家へ案内し、話しを聞くことにした
「初めまして、ダイバーツリー代表の玄人です」
「オークターヴィルから使者として参りました、リリアナと申します」
見た目は若く20代だろうか
魅力的な雰囲気をもつ女性で眼鏡がよく似合い、非常に知的な印象だった
ダイバーツリーの魔術、魔道具に強い関心をもっていて交易は二つ返事で了承してくれた
交易の手段が問題になっており、飛行魔術は非常に高度で使えるものがかなり限られるらしい
それについてはちょうどドレイクで解決したので定期的にドレイクを飛ばし
お互いの国で10日ほど休みながら往復するような方法を取ることになった
交易用の定期便というわけだ
俺はリリアナに他の要件がないか聞いてみた
「交易の方法と間隔についてはこちらでいいかな?」
「ええ、もちろん、それと、これは私たちの希望なのですが...」
俺は不思議そうな顔をして尋ねた
「なんだ?手伝えることがあるなら言ってみてくれ」
「ありがとうございます、その、厚かましいお願いですが、私含め今後何人かこちらで魔術修練をする機会を頂きたいのです」
なるほど、こちらの魔術自体が珍しいからか
「なるほど、ちなみに我々にも利点はあるかな?」
「はい、術式魔術であれば我々からも技術提供が可能です、その他駐在している魔導士たちは兵隊として利用していただいて結構です」
なるほど、人間の魔導士たちが兵隊として利用できるのはありがたい
おそらく修めた知識を実験する意図も含まれるのだろう
「ふむ、駐在する魔導士たちはみんな兵士なのか?」
「いえ、生活に特化した魔導士も参加するため全て、というわけではありませんが
およそ7割は兵士として参加することができるでしょう」
ふむふむ、あとは反乱を起こされた場合の対処としての保険がいるな
ぶっちゃけ魔物だらけだから小さな衝突なんかは日常茶飯事なんだが
まとまった人間達が街の人たちを攻撃するのは避けたい
「わかった、100人くらいは面倒見よう」
「ありがとうございます!」
「ただし、条件がある」
「はい、条件を仰ってください」
リリアナは平静を装っているがちょっと緊張した面持ちで耳を傾けている
「ここは魔物の街だ、小さな衝突くらいは茶飯事なんだが君たちは人間であり客人という立場もある」
「はい」
「それで、100人住める塔を用意するのでそこで生活してほしい
それと、反乱が起きた場合の措置を保険として求める」
リリアナは少し考えてから返答した
「住居については用意していただいたもので大丈夫です、反乱が起きた場合については、術式魔術の中に契約内容を定め起動すると効果を強制する類の魔術があります、それを利用しましょう」
「なるほど、では契約の内容を詰めていこう」
契約の内容は俺が起動すると対象者全員が街の外へ強制でワープするものとなった
これであればいざという時に街の外へ魔導士全員を追い出せる
そしてダイバーツリーに住む魔導士たちは全員がこの契約を行う事で話しがついた
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