第16話 - 竜族の仲間入り
ドラグとルドルフが帰ってからしばらく経った頃、竜の家族が到着した
竜族は人の姿と竜の姿を自由に変えられるらしく、竜が4匹も街に近づいてきたときは街の人たちが大混乱に陥った
街の入り口で人間の姿になり、俺が出迎えたので事なきを得たがこれからは行き来を工夫しなければ..
俺は竜の家族を家に招き、歓迎した
竜の家族はそれぞれ
フリート 王
テオ 妃
ドラグ 息子
ティル 娘
と、名乗った
一通り料理と酒をふるまい、要件を聞いた
フリートが興味深そうに話しを始める
「ここの料理はうまいな、酒も強くとてもよい街だ」
「お褒めにあずかり光栄です、よければいくつか帰りにおもちください」
フリートはとてもうれしそうだ、気に入ってくれて何より
フリートは続けて話始める
「玄人よ、そなた人間であろう?」
「そうです」
「なぜそれほどの魔力を?人間の域を超えておる」
俺はこの世界にきたいきさつを話した
生贄だったことから、魔物と会話できること、継承の悲しい能力の事
あまり大きな勢力に目を付けられたくないが、嫌でも目立つ力を身に着けてしまった
それに、街も大きくなり噂も広まっている、もう隠し事はできないだろう
話しを聞いたテオが話し始めた
「それは苦労なされたでしょう、私たち竜に手伝えることがあれば遠慮なく言ってね」
「お気遣いありがとうございます、今後ぜひ、頼りにさせて頂きます」
ドラグが口を開く
「なるほど、ではこの街が続く限り玄人は強くなり続けるのか」
「そうなるね、自発的に強くなることができないのは残念だけど」
フリートが話し始める
「玄人よ」
「なんでしょう」
「我らはもう友人だ、これからそなたらが窮地に陥るとき、我らを頼ってくれ」
「それはありがたいお言葉です、ですが一方的に守っていただくのも心苦しい
竜族がお困りの際もぜひお手伝いさせてください」
フリートは小さくうなずいた
「ありがとう、そなたほどの者であれば我らも安心だ
して、ひとつ頼みがある」
俺は何のことだろうと緊張しながら聞き返した
「はい、なんでしょう」
フリートは娘のティルへ顔を向け、話し始めた
「ティルをここで預かってくれないか」
ティルは恥ずかしそうにうつむいた
俺は急な事で少し混乱する
フリートが質問してくる
「ダメ、だろうか」
俺は慌てて返答した
「いえ、構わないのですが...一体なぜでしょう」
「友好の証でもあるが、娘がそなたに大変興味を示しておってな」
ティルが慌ててフリートに話しかけた
「お父様!」
「いやしかし...お前...」
竜王も娘の前ではタジタジである、意外な一面だ、だがそれはそれ
俺もフリートへ話しかける
「お嬢様の関心を頂けるとは恐れ入ります、ですが大切なお嬢様を人間ごときが...」
フリートは話しはじめた
「そなたはもうこの大陸では我らに並ぶほどの実力者だ、人間と同じとは思わんよ」
「それにな、我ら竜は寿命が長い事もあり、血統やしがらみなどは気にならん
生き方、在り方の方が重要なのだ、どのように生き、死ぬのか、そちらの方が重要だ」
ティルが話始める
「私は、玄人さまのなさることに興味を抱きました、人間の身でありながらその枠を超える強大な魔力を身に着け、これまでどの種族も考えもしない魔物の街を作られました」
「さらに、魔物たちをまとめあげ、社会を築き、祭事を催し、我々にとってまったく新しい文化に気づかせてくださいました、私はぜひ、玄人さまのおつくりになる未来を側で支えて行きたいと思ったのです」
ティルは顔を赤らめながら続ける
「もし、玄人さまがお邪魔でなければ、お手伝いさせていただけないでしょうか」
俺は返答に困ったが、無下に断るのもよくないと思い、承諾した
「わかりました、そこまで仰るのでしたら家にティルさまの部屋をご用意します」
フリートとテオは顔を見合わせ、喜んだ
ドラグはティルを見てうんうんとうなずいている
ティルは涙目で俺を見つめている
俺は勉強しにきたティルを置く部屋を用意するつもりだったんだが
流れが怪しい
今更この流れの中、勘違いでしたとも言えない
宴会は翌日まで続いた
昼が過ぎる頃、竜の家族は帰っていった
ティルが荷物をまとめてまた来るそうだ
事の流れをまめいとミミに話した
まめいが話し出す
「やったなぁ、オイ、玄人はこれから竜の王族だぞ」
ミミが話し出す
「すごい事ですね!人間のまま竜の王族になるなんて!」
やはり勘違いではなさそうだ
「そんなつもりじゃなかったんだが、どうしたらいいかな」
まめいが口を開いた
「男なら腹くくれよ」
俺は相談したんだ、トドメ刺すな
ミミが口を開く
「現実問題、玄人さまにも竜族にも太刀打ちできるものはこの街にはおりませんし
何より承諾されたのは玄人さまですし、引き返すことは難しいでしょう」
やらかした、仕方ない、もうこの際やるしかないんだろう
…
後日、ティルとフリートがやってきた
俺は二人を家に案内し、歓迎した
フリートが口を開く
「玄人、これからは我々に様をつけるでないぞ、もう家族なのだ」
やはり勘違いではなかった、俺は婚姻を承諾してしまっていた
俺はフリートに頭を下げた
「わかりました、お父さん」
「いや、名前でよい、人間の習慣で言えば私はそう呼ばれるのだろうが
お主は人間であり、他人だ、家族になったとは言え我々とは対等な立場であってほしい」
「わ、わかりました、フリート」
「それでよい、娘ともどもよろしく頼む、玄人」
ティルが口を開く
「玄人、これからよろしくお願いしますね」
「ありがとうティル、よろしく、部屋はもう用意してある、荷物を置いてくるといい」
「はい!ありがとうございます!」
そういうと、ミミに案内され、ティルは席を立った
フリートが神妙な面持ちで話始める
「玄人よ」
「なんでしょう?」
「此度は助かった、竜の数が減り、貰い手がないままになるのかと不安もあったのだ」
「そんなことが...」
「それでな、竜とはいえ生物であり、その生態は他の生物とそう変わらん
飯も食うし排泄もするし子も成せる」
「はい、フリートも家族をもっていますね」
「左様、うーむ、そうだな、娘が帰ってくる前に率直に言おう」
「はい」
「簡単に言うと竜は一夫多妻を認めておる、強いオスの遺伝子を残す事は種の繁栄に繋がるからだ」
「な、なるほど...」
「おそらくお主ほどの者であれば他のメスも寄ってくるであろう、ティルがいるからとて気に病むことはないぞ、ほどほどに相手をしてやらねばへそを曲げるかもしれんが」
「は、はい、予想外の話しでなんと言えばいいやら」
フリートはニコニコしながらつづけた
「ハッハッハ、お主がこれからやらねばならん事だ、精を出すといい」
「私の元の世界ではそういった価値観ではなかったため戸惑いますね」
そういうとフリートは満足げに酒を飲み始めた
ティルが戻り、酒が進む、みんな酔いが回る頃、俺はふとした興味でこれほどまでに早い結婚や竜の価値観について聞いてみた
魔闘祭でドラグと手合わせしたとはいえ、俺が大悪党だったらどうするつもりだったのか
フリートが答える
「ティルが興味を示したことが一番じゃな、それにドラグから聞いた話しでは窮地に陥っても死なぬよう、仕掛けや手心を加える余裕があったとか、そのような事は魔物はせん」
「なるほど、確かに魔物とはいえ街の住民には死んで欲しくありません、そういった仕掛けは用意しておりました」
「それにな、腐っても竜じゃ、己の身くらいどうとでもなるわい」
なるほど、竜族の自信もあったのか、何かあっても娘の力で切り抜けられると
それ以外にも何か秘術があるのかもしれない、とはいえ、少なからず期待されているようだ
俺は納得し、ティルを大事にしていこうと思った
夜になり、フリートが帰る、帰り際にガンバレよと言い残した
...
夜はティルが寝室に来た
顔を赤らめ、かわいらしい姿だ
俺は初仕事を終え、その夜は二人でぐっすりと眠った
翌日、起きるとティルが厨房でミミやまめいと料理について勉強していた
既にまめいやミミとは打ち解け、仲良くなっている
お嬢様だと思っていたが意外と生活力がある
率先して手を動かすのでみんなからも評判がいい
もっとお姫様気質かと思っていたが、この調子であれば特に大きな問題にはならないだろう
朝食を済ませ、街の中心人物たちに挨拶をして回ったあとそれぞれの仕事に戻る
…
そういえば、街に新しい魔獣の家族が仲間入りした
魔闘祭に出場したグリフォンとそのの家族だ
7頭の大家族で成体の兄弟と1対の夫婦、その子供たちが定住することになる
グリフォンは体が非常に大きく、街の中に巣を作るのが難しかったため
城壁の外の森を開拓し、大きな建物を用意した
念のため街の壁と同じ素材の壁を周囲に建設する予定だがグリフォンは元々非常に強力な魔物であるため、その周辺から小さい魔物、魔獣たちは退散してしまった
街の中に巣を作ってしまうともしかするとダイアウルフや役畜魔獣たちが萎縮してしまっていたかもしれない、これはこれでよかったな
巣を囲む壁の建設には時間がかかってしまうが、これなら完成するまで大丈夫だろう
彼らにはどんな仕事が合うだろうか
グリフォンに尋ねると、そこそこの荷物を運べるらしい
馬車一台くらいなら掴んで飛べるとのこと
まさかの空輸が可能になる
これには俺も心躍った、俺は早速空港の設計を始めた
空港と言っても滑走路などは必要なく、ヘリのように着陸する場所と荷物を運びやすい場所を用意するのだ
グリフォンの個体数が今のところそう多くないので値は張るが
歩くより素早く目的地にたどり着けるため食料等の輸送には大いに役に立つ
さらに、空では敵が少ないため、戦士ギルドで護衛を大人数雇うよりも安全なのだ
数が増えれば遠隔地への移動も複数人で一度に移動できるかもしれない
それはそれで商売になる
空港による輸送産業は交易品を大量に扱う商豪たちにとても気に入られ、大いに活用された
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