(二)―6

 指名手配の表向きの理由は繁華街での暴行傷害事件であった。しかし本当の理由は潜入捜査員の殺害事件であった。

 本庄組の組長が逮捕された後、組の中ではスパイの存在が疑われていた。そして近田がそのスパイを暴き出そうとしていた。

 潜入捜査員は、その際、近田の側近の高木正樹という男に疑われ、自分の身が危ういと県警に報告してきていた。それを最後にその捜査員は消息を絶ち、一週間後、コンテナ埠頭の海の中から引き上げられた車の中で死んでいるのが発見された。死因は水死ではなく胸に三発撃たれた拳銃の弾が心臓を撃ち抜いていたことだった。

 埠頭で死体が上がった事実は、マスコミにもかぎつけられたものの、県警は潜入捜査員のことは伏せ、身元不明の死体として発表し、近田を指名手配することとなった。


(続く)

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