第45話 友達の上京

「よっ!元気か、妻帯者♪」

ダイキとカズヒコが上京してきた。

「誰が妻帯者だ!お前らいつ東京にきたんだ?」

「今朝ついたよ、カズヒコは明日夢の国に遊びに行く予定で、俺は家を探しにきた。」

「ダイキ?引っ越してくるのか?」

「おうよ、俺も本社勤務になったんだ!なんと職長に昇進付きだぞ。」

「おっ!おめでとう。」

「ありがと、今後もよろしく頼むよ!」

「おう、そうなるとカズヒコが一人だな、お前も上京してこいよ。」

「俺は友人を売れない。」

「えっ?ダイキさては上京に何か裏があるな!」

「たいした事はないよ、ただお前の情報を流せばいいだけ。」

「何その仕事!」

「俺は源グループにいるの忘れたか?」

「なるほど、上京と出世はそれか!」

「あたり♪だから、協力よろ!」

「やだよ!」

「またまた~」

「お前は友を売って恥ずかしくないのか!」

「リョウ、俺が三国志で好きな武将は?」

「呂布。」

「そういうこと。」

「この裏切り者がー!」

「ふわっはは、私は故あらば寝返るのさ。」

「リョウなんでコイツと幼馴染みなんだ?」

「家が近いから、腐れ縁だな。ダイキ~俺はいくらで売られたんだ。」

「呂布らしく赤兎馬を貰ったよ。」

「赤兎馬・・・って!赤のフェラーリか!」

「リョウ、いい勘してるね。渋るふりしてたら値が上がっていってさぁ♪」

「えげつねぇ~」

「だから、頼む!一回でいいから俺の薦めで姫とデートしてくれ!」

「はい?」

「手柄立てないと、上司が怖いんだよ。」

「知るか!」

「頼むよ~貸しがあるだろ。」

「確かにあるが・・・仕方ないな、一回だけお前の薦めでデートする。こんなのアズちゃんに失礼だからしたくないんだが。」

「いいじゃん、役得と思って楽しんでこいよ♪」


「リョウくん、浮気はダメですよ!」

ミウが病室に入ってきた。

「ミウちゃん久しぶり♪」

「ダイキさん、いえ、呂布さん久しぶりです。さあ、地元に帰ってください。」

「いやいや、帰らないから。これからもリョウとバカやる予定だからよろしく!」

「はぁ、リョウくんなんで友人やめないんですか?」

「ミウ、いいところもあるんだよ・・・少しは。」

「リョウ、もう少しフォローを頼むよ。」

「黙れ裏切り者!ちゃんと俺にも赤兎馬運転させろよ。」

「へーい。変わりに、なっ!」

「はいはい、デートだろ、わかってるって。」

「リョウくん!ダメですよ!婚約者をほったらかしてアズサさんとデートなんて許されない大罪ですよ!」

「まあまあ、ちょっと遊びに行くだけだから、前から約束してたしさ。」

「むう、約束はしてましたけど・・・」

「ミウちゃん、正妻は寛容が大事だよ。旦那の浮気ぐらい芸の肥やしと思わなきゃ。どうせすぐ他の女の子落として来るやつなんだから。」

「ダイキさん、否定は出来ないけど認めたくはないんです。」

「ミウ、否定して。女の子落としたりしないよ。」

「マイちゃん落としたじゃない!」

「あれは・・・そうあの年頃は年上に憧れるもんなんだよ、うん、すぐ他に行くって。」

「はぁ、リョウくんの場合他に行かないから困るの。」

「ミウちゃんみたいにか?」

ダイキはこの状況でも笑いながらからかってくる。


「なあ、リョウ。」

ふとカズヒコが質問してくる。

「ヒトミと連絡とってるのか?」

懐かしい名前が出てきた。

木下ヒトミ、高校時代一年ほど付き合っていた彼女だ、卒業の時フラれてそのままだったが。

「いや、とってないよ。そもそも連絡先知らないし。何やってるんだろう?」

「そうなのか?しかし、何やってるかぐらいはわかるだろ?」

「へっ?なんで?」

「お前はテレビを見ないのか?」

「おう、ほとんど見てない!」

「自慢するな!」

「あの~リョウくんのお友達ですよね?」

ミウはカズヒコの事を知らなかったみたいだ。

「あっ、そうだゴメンミウ、コイツは高校の同級生で宇多カズヒコ、地元の悪友だ、今後よろしく頼むよ。」

「そうなんですか、主人がお世話になってます。リョウくんの婚約者の西園寺ミウと言います、一応歌手をしてます。」

「・・・」

返答のないカズヒコにミウは心配そうに聞く、

「あの~どうしました?」

「おい、カズヒコ?ミウが挨拶してるんだから返事ぐらいしろよ。」

「はっ!失礼しました。ミウ様、私は会員番号83宇多カズヒコと申します。以後お見知りおきを。」

カズヒコは膝をついて返答する。

「え、えーと・・・」

ミウは混乱している。

「カズヒコ普通に頼む、ファンなのはわかったけど、ミウもどうしたらいいかわからないから。」

「親衛隊の掟に叛くが仕方ないか、よろしくお願いします。」

「はい、ところでヒトミさんってどなたですか?」

「はっ!ヒトミというのはリョウが高校の時の彼女であります。」

「リョウくん彼女いた時あるんだぁ~」

ミウの光の消えた目が俺を見つめる。

ちょっと怖い。

「一年ぐらい付き合っていたと認識しております。」

「ふーん、それでその人は今何してるのかな?」

「はっ!桐谷ヒトミの名前で女優をしております。」

俺は驚き声が出る。

「そうなの?そういえば演技の勉強するって言ってたな。」

「そんな事より、桐谷ってなに!」

「芸名じゃね?」

「そんなのわかってるの!なんで桐谷を名乗ってるかが大事なの!リョウくんホントに別れているんだよね。」

「ああ、進路の事で揉めてね、東京で進学して演技を学びたいヒトミに着いて来てとは言われたけど、俺は地元に残るつもりだったから喧嘩になって、もう知らないって言われてそのままかな、その後いろいろあって携帯を変えたら連絡先もなくなったし。まあ、別れの定番な感じだね。」

「ねえ、ダイキくんどう思う?」

「ミウちゃん絶対未練タラタラだよ、じゃないと桐谷なんて名乗らないよ。」

「そうだよね、あっ!マズイ!」

「ミウちゃん、どうしたの?」

「この前の婚約発表でリョウくん顔と名前だしちゃった!東京にいるのがバレた?」

「ミウ、何を心配してるの?今更だよ、もう八年も連絡してないんだからきっと忘れてるよ。」

「ミウさん、被告は楽観視してるようですが?」

「ダイキさん、私は危険だと考えています。普通、芸名でも別れた人の名字はつけないでしょう。きっと結婚を妄想してる痛い人だと思います。」

「お前ら一応元彼女なんだからあんまし悪く言わないでくれよ。」

「「はーい」」


「ところでカズヒコ、ヒトミは売れてるの?」

「お前ホントに知らないのか?ヒトミと言えば今やハリウッドで映画デビューも済んでる大物女優だぞ。」

「そうなの?」

「ホントに興味無いことには全く知識を持とうとしないな。」

「いや~照れるなぁ。」

「誉めてないからな!」

「でも、そんな大物なら余計に俺の事なんか忘れてるだろ。」

「まあ、覚えてたらなんかアクションあるだろ、お前も有名人入りしてるし。」

「あー、気が重い。有名になるんじゃなかったぁ~」

みんなで談笑しているところに・・・

コンコン!

病室のドアがノックされた・・・

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