第23話 試合

俺とミウはゴール裏に移動した。

中心地は席が埋まっており、少し離れた所に座った。


しばらくすると選手がアップに出てきた。

周りの人は立ち上がり、歌い始めた。

「リョウくん、凄い熱量だね。」

「うん、初めてきたけど、凄い!」

俺とミウも立ち上がり、聞き覚えで歌ったり、拍手をしたりした。


アップも終わり、試合開始。

試合は一進一退、前半は1対1で折り返した。ハーフタイム。

俺達は互いにトイレに行き、席に戻った所で、ミウの存在が気付かれた。

「ねえ、あの子ミウじゃね?」

「えっ?どこ?」

「ホントだ、ミウ様だ。」

そんな声が聞こえてきた。

「ミウ、バレたみたいだね。混乱が起きる前にVIP席に移動するか?」

「そうだね、ごめんね。私のせいでリョウくんに迷惑かけて。」

「気にするな、行くか。」

席を離れようとしたところ。

拡声器から声が聞こえる。

「てめぇら、なに他の事を気にしてる。俺達は浦和だろ!誰がいても関係ない!試合に集中しろ!」

周りで騒いでた人が黙り込む。

「ミウさんとお連れの方、ここで何かあっても行けないので中央にきてもらえますか。」

サポーターの中心グループのメンバーと思う人が俺達を案内してくれた。

移動する時は少し騒がしかったが、

「ここなら、大丈夫です、しっかり応援していってください。」

俺達の周りはサポーターの皆さんで囲まれていた。

「いいか!今日は応援に芸能人も来てくれたが、そんなの関係ない!ここで応援する者達はみんな浦和だ!共にチームを勝たせるぞ!さあ、いこうか!」

コールリーダーシップの声で歌が始まる。

先程までと違い、中心の熱量はハンパない!

俺達もつられ、歌い、手を振り全力で応援していた。

そのかいも、あってか浦和に待望の2点目が入る!

「やったー!」

周囲は歓声に包まれ、周囲の人とハイタッチを交わす。

そして、ミウと向き合いハグする

「やったねミウ!」

「う、うん」

ミウもハグ腕をまわしてハグしかえしてくる。

「さあ、次だ!気を緩めるな!」

コールリーダの声に反応し、ハグをやめ試合に集中する。

「あう~、リョウくんふいうちは反則だよ~」

顔を真っ赤に染めたミウはリョウを見つめていた

試合はそのまま2対1で浦和の勝利となった


試合後

俺達はコールリーダにミウへの配慮にお礼をのべに行った。

「リーダさん、ありがとございます。おかげさまで試合を楽しむことができました。」

「いえいえ、楽しんでいだけてよかったです。」

ミウもコールリーダにお礼をいう

「ホントにありがとうございます。凄く楽しかったです。」

「そういっていただいて、感激です。このあとなんですが、試合に勝った後、みんなで歌うのですが参加しませんか?歌詞はあそこに表示されますので。」

「参加さしてもらいます、つたない歌になりますが笑わないでくださいね。」


ミウはコールリーダから離れたあと歌が始まるまで動画で歌を確認していた。

選手の挨拶も終わり、勝利の歌が始まる。

太鼓に合わせて、みんなで歌う。全体の一体感が心地よかったが、隣で歌うミウの歌唱力の凄さを感じた。

歌も終わり、観客も撤収を始めたころ、コールリーダがきた。

「やはり、歌手はちがいますね。一際目立ってましたよ。」

「恥ずかしいです。」

ミウは照れていた。

「しかし、大丈夫ですか?男性と一緒に来てる事を知られるとスキャンダルになるのでは?」

「大丈夫です。隠してる訳じゃありませんから。でも、ちょっと拡声器借りていいですか?」

ミウはコールリーダから拡声器を借りた。


「こんにちは、私はミウと言います。知ってる人もいるかも知れませんが一応歌手をやらせていただいてます。今日は好きな人に連れられて此処に来ましたがこんな素晴らしい空間が有ることに驚きました。それも、ここにいる皆様が一丸となるから出来る素晴らしい力だと思います。今日は私も少しですが仲間に入れてもらえたのかと勝手に思ってます。また、此処に帰ってきてもいいですかー?」

「おーーー!」

「今日はあまり歌えなかったので、次までにちゃんと歌も覚えておきますねー」

ミウは拡声器を返す。

「いいか!ここにいる奴らみんな浦和なんだ!芸能人とか関係ないよな!」

「あたりまえだ!」

「ミウさまーーまた来てくださいね。」

「さあ、みんな新人サポーターに手本をみせてやろじゃないか!いくぞ、うたえ!うらわを愛するならー♪」

全員で歌が始まる。


歌い終えたあと、小さな男の子がミウに話しかけてきた。

「あ、あの握手してもらっていいですか?」

「はい、ボクも浦和サポーターかな?」

ミウは握手しながら、男の子に聞く。

「うん、お父さんと一緒に生まれた時からきてる。」

「じゃあ、先輩だね、今日から仲間になったからヨロシクね。」

「うん、わからない事があったら聞いてください。」

男の子は照れて、走り去っていった。

「すいません、俺にも握手お願いできますか?」

「はい、いいですよ。」

ミウは声をかけられた人に笑顔で対応していた。

すると周りも我先にと詰めかけてきていた。

「危ないですから、押さないでください。押す人がいたら私は帰りますよ!」

「写真とってもいいですか?」

「いいですよ。」

今日の、ミウはサービス満点だった。

あまりに握手を求める人が多く、ミウが丁寧に対応していたら、スタッフの人が来てスタジアムを追い出された。


俺は上機嫌で帰路についた。

「すごいかった、サポーターって熱いね♪」

「ふふ、いい人達だよね。また、来ようね」

「しかし、好きな人とか言ってよかったのか?」

「うん?いいよ。リョウくんの事を隠してる訳じゃないし、いっそバレたら婚約者発表しちゃうもん♪」

「ちょっとまて!さっきの発言はその伏線か!」

「SNSで盛り上がるよね、歌姫恋人発覚とか♪」

「スキャンダルになるぞ。」

「別にいいよ、好きな人がいるだけで叩いてくる人なんてファンでもないでしょ。」

「ま、まあそうだと思うけど。」

「それに引退してお嫁さんになったほうが・・・」

ミウは俺を見つめてくる。

「まだ、早い。もっと大人になってから。」

「むう、来年には結婚出来るよ。」

「しないからね。」

「いつまで、そんな事が言えるかな~♪」


段々と迫る結婚話にいつまで抗えるかがわからなくなっていた。

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